日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■乃東枯る
一年で昼が一番長い、今日は夏至の日。二十四節気の一つです。
夏至といえば冬至と二つ合わせて二至(にし)と呼ばれ、暦を組み立てる上
で最も重要なもの。
ペアの片割れである冬至は、旧暦の計算起点ですし、日本では冬至南瓜を食
べたり、外国では冬至祭りがあったり(クリスマスも元は、そうした冬至祭
りの一つだった)といろいろな行事が思い浮かぶのですが、もう一方の夏至
はといえば、話の種になってくれるようなものがあまりありません。
「夏至は一年で一番昼の長い日。日永(ひなが)とも呼ばれます」
なんて当たり前すぎることを今更言っても話が広がりません
困ったなと頭を悩めた結果、二十四節気の夏至そのものではなくて、これに
寄り添って並んだ七十二候の「乃東枯る」の方を取り上げることにしました。
◇乃東枯る(だいとう かるる)
七十二候には、読んでもパッと意味がわからないものがあります。多分この
「乃東枯る」もそんなパッと意味がわからないものの一つでしょう。
同じように、これはなんぞやと思われた方がいらしたらしく、以前に
> 一寸前になりますが、七十二候の中で、二十八候「乃東枯る」の意味を
> めぐって諸説紛々です。意味を教えてください。
という質問をいただきました。
乃東とは枯るということから、どうやら植物らしいことは見当がつきますが
さてどんな植物?
◇乃東 = ウツボグサ(靫草)
さて、この謎の乃東ですが、その正体はウツボグサ(靫草)です。
ウツボグサは別名「夏枯草(カコソウ)」といいます。この別名をみれば、
なるほど夏には枯れる草です。
そう言われても名前だけではピンと来ない方は、写真を掲載して下さってい
るサイトが沢山ありますのでご覧下さい。紫色のきれいな花です。
→http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/utubogusa.html
みればなるほど。田舎の日当たりのいい田んぼの畦や草地でこの花を見かけ
たことがあるのでは?
この花の花期は6-8月頃。それを過ぎると花は枯れ、黒色化しした花穂は夏枯
草(かこそう)と呼ばれるようになります。
こんな風に夏の盛りで周囲の植物が青々と茂る中に花を終えて枯れてしまう
ように見えるためにこの植物は夏枯草と呼ばれるようになったのでしょう。
また、こんな風に他の植物とは違った季節変化をすることから物珍しく、七
十二候に取り入れられたものと考えます。
私の住んでいるあたりでも、或いは生まれ故郷でもこの花は見かけました。
今だとまだ「枯る」にはちょっと早い気がしますので、田んぼの間の散歩の
際に、注意してこの花を探してみたいと思っています。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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