こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■月見月
 月月に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月
 (詠み人知らず)

 「月」という言葉が続く面白い歌で詠われる「月見の月」は旧暦の八月を指
 します。
 この月の十五夜の月は中秋の名月。
 この中秋の名月が見られる八月(旧暦)は月見る月、月見月(つきみづき)
 と呼ばれます。

◇月見月は収穫の月
 中秋の名月に供える団子は、その年の収穫物を月に供える行事です。
 これからもわかるとおり中秋の名月は、収穫に感謝する行事の側面がありま
 す。団子は、稲作以前に栽培されていたと考えられるイモ(サトイモ)の形
 を模したお供えだと考えられます。だとすればこの収穫祭としての月見は稲
 作が広がる以前から行われていた大変古い行事だと言えます。

 中秋の名月の月見が収穫への感謝の行事だとすればこの月見の月である旧暦
 の八月、月見月はまた収穫の月。この頃が収穫の時期に当たるのは何も日本
 だけではありません。北半球の多くの国々にとってもまた、この時期は収穫
 の季節。
 そのためでしょう、秋分の頃の満月を英語で

  Harvestmoon

 と呼びます。Harvest(収穫)moon(月)とは「収穫月」そのものですね。
 ちなみに、この月には穀物を豊かに実らせる力があると月だと考えられてい
 るそうです。
 洋の東西の違いを超えて、この月見の月は共通に、収穫の月であるようです。

◇月の見える位置
 一年を通して、何時の季節も満月を見ることが出来ますが、この時期の月見
 がことに愛される理由には月の見える位置も関係しているようです。

 満月の見える位置は季節によって変化します。月の様子を注意して見ている
 方はとっくにご存じだと思いますが、みんながみんな月の様子などに注意を
 払っているわけではないので、月の見える位置が変化しているというと驚か
 れる方もいらっしゃいます。

 どのように位置が変わっているかというと、一番目立つ変化は月の見える高
 さです。

  「月の高さって、38万4400kmとかいうあれ?」

 ではありません。地平線(水平)を 0°、真上を90°として測る角度、つま
 り「高度角」のことです。
 一日のうちでこの高度角が一番高くなるのは北半球ではその天体が真南に来
 た時です。この真南に来た瞬間を天体の「南中(なんちゅう)」と言います。
 ではこの南中時の月の高度が季節によってどのように変わるかというと

  夏(夏至の頃)・・・南中高度が「低い」
  冬(冬至の頃)・・・南中高度が「高い」
  春・秋(春分・秋分の頃・・・夏と冬の中間。丁度よい高さ?

 現実にどうなるか計算してみると、次のようになります。

  夏至の頃・・・ 26° (2008/06/18)
  冬至の頃・・・ 81° (2008/12/12)
  春分の頃・・・ 51° (2008/03/21)
  秋分の頃・・・ 55° (2008/09/15)

 と言う具合になります(計算値は「東京」でのもの)。
 月は、空の高いところにある方が空が澄んでよく見えるのですが、冬の頃の
 81°という高度ですと見上げる方が大変。また家の窓から月を眺める何てこ
 とも難しそうです。そうした点から考えると南中高度もほどほど、空の具合
 もほどほどで、なおかつ夜の気温は快適という秋の月が、月見には最適な月
 のようですね。

 今年の中秋の名月は9/14。後一週間ほど。
 当日になって慌てないように、今から団子や薄の準備を始めましょうか?

◇おまけ?
 冒頭の和歌、「月月に月見る・・・」には「月」という言葉が八回登場しま
 す。八つの月で「八月」を表すという心憎い作りになっていますね。

 さてではこの八つの「月」という言葉ですが、これには天体の月を表すもの
 と暦の月(暦月)を表すものが混じっています。さて、どの月がどっちの月
 を表しているのでしょうか?
 謎々のつもりで考えてみて下さい。
 (皆さんからの回答を楽しみにお待ちします)


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