こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■成人の日・雑記
 明日は一月の第二日曜日、祝日です。
 最近は祝日法の改悪によって、祝日がただの休日となってしまう傾向があり、
 
  「今日は祝日ですが、何の日でしょうか?」

 と尋ねても休みだとは知っていても、何の祝日か知らないという人もいます。
 祝日の名前を知っている人でも、ではその意味はと更に尋ねるとなかなか明
 快に答えることは出来ないようです。
 明日の成人の日はどんな日かと言えば、祝日法の祝日の内容欄には

 『成人の日 一月の第二月曜日
  おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いは
  げます。』

 とあります。
 「おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年」を祝う日
 だと言うことですから、「二十歳になったから大っぴらに酒が飲める」とい
 うだけの人を祝う必要はないのですね。よかった。

◇元服と着裳
 成人の日と同様に、大人の仲間入りと認められる成人儀礼に元服(げんぷく)
 と着裳(ちゃくも)があります。
 元服の「元」は始めの意味で「服」は衣服。つまり始めて大人の衣服を身に
 つける儀式です。女性の場合同様の儀式を着裳と言いました。

 衣服を替えることによって、一見して成人か否かが判断出来ることになりま
 す。現在のように二十歳になったら成人というように一律にこうした儀式が
 あったわけではなくて、大体十代の半ばの適当な年齢で行われていました。
 例えば、天皇の場合は11〜15歳ほどの年齢で元服したとされます。
 変えるのは服装だけでなく髪型なども変えました。

 成人式に羽織袴で出掛ける若者が結構いるようですが、これなどは元服の儀
 式の名残でしょうか。その外見だけ見れば成人か否かが判るというのは、便
 利ですから、このまま羽織袴で暮らしてくれるなら、お酒や煙草を販売する
 店の方は助かるでしょうね・・・。

◇成人の日の日付
 成人の日の日付は1948年の祝日法成立から1999年までは1/15に固定されてい
 ました。
 この日付にいったいどういう意味があるのかと言われるとあまり明確なもの
 はありませんでした。

 古来からのしきたりという点で見ると、公卿の元服は 1/5まで、武士は1/11
 までに行っていたとされますから、1/15はこれより少し遅い。
 やや遅い1/15を成人の日とした理由としては公卿や武士のこの元服の日の伝
 統を尊重しつつ、正月行事に埋もれてしまうことを避けるために、時期をず
 らせたのではないかと推測しています。

◇成人とは?
 成人とは大人の仲間入りした人という意味です。
 大人になれば、飲酒や喫煙、結婚などに加えられた制限がはずれますが、そ
 の一方で、少年法等で保護されることもなくなります。
 何かあれば、一人前の大人として、大人の責任を問われる存在となります。

 昔の農村では、一人前の男とは、「米四斗の俵が担げ、一日に一反の田起こ
 し、田植え等が行えること」と極めて判りやすい定義があったそうです。
 (※四斗・・・約60kg、一反・・・約1000平方メートル)
 ちなみに、女性の場合は男性の基準の 70%を基準としたとか。
 また、村や町の行事に対しても、それぞれの役割を担う存在となりました。

◇啓発録から
 安政の大獄で獄死した越前藩士橋本左内が、大人としての要件を 5ヶ条にま
 とめた啓発録を著しています。この 5つの要件とは

  1.稚心を去る (子供っぽい心を捨て去る)
  2.気を振ふ (負けん気を奮い起こす)
  3.志を立つ (目標・信念を実現しようと決意する)
  4.学に勉む
  5.交友を択ぶ (交際する友をえらぶ)

 とし、それぞれに説明を加えています。その一つ志についての説明は

  およそ志と申すは・・・(略)・・・平生安楽無事に致し居り、心のたる
  み居り候時に立つ事はなし。志なき者は、魂なき虫に同じ。いつまでたち
  候ても、丈ののぶることなし。
   (略)
  今日、聖賢豪傑にならんものをと志し候はば、明日明後日と、段々にその
  聖賢豪傑に似合わざるところを取去り候へば、いかほど短才劣識にても、
  遂には聖賢豪傑に至らぬと申す理はこれなし。
   《講談社学術文庫 「啓発録」より》

 橋本左内は27歳の若さで獄死してしまいましたので歴史に大きな名を残すこ
 とはありませんでしたが、西郷隆盛が同輩として尊敬出来る人物の第一にあ
 げたほどの人物です。この一文も読むうちに、思わず居住まいを正してしま
 うような内容です。

 啓発録は橋本が自分自身を励ますために書いたものだと言われます。橋本が
 啓発録を書いたのは15歳。15歳といえば当時の元服の年ですから、大人とな
 るにあたって、その決意を記録した物でしょう。

 啓発録は薄い本ですから、新成人に贈る贈り物の中にこの本を一冊をそっと
 しのばせてみるなんてどうでしょうか。
 中には、きちんと読んでくれる新成人もいるかもしれませんからね。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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