日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■1/17、それぞれの月
今日、1/17の今日の記念日を眺めると、
A.今月今夜の月の日 ・・・ 尾崎紅葉 「金色夜叉」より
B.湾岸戦争開戦記念日
C.阪神淡路大震災記念日(防災とボランティアの日)
と目立つ記念日が並びます。
この1/17が何年のことかというと
A.1897年 (明治30年)
B.1991年 (平成 3年)
C.1995年 (平成 7年)
です。金色夜叉は流石に昔のことと思えるのですが、湾岸戦争や阪神大震災
などはつい最近のことと言う気がします。でももう18年、14年前のこと。月
日がたつのは本当にはやいものです。
今日はそれぞれの事柄が起こった日を「お月様」をとおして眺めてみようと
思います。
※「金色夜叉」は1897/1/1〜1902/5/11 連載された。Aの歳としては、この
連載開始年を採用しました。
◇今月今夜の月の日
「宮さん、こうして二人が一処に居るのも今宵限りだ。・・・
一月の十七日、宮さん善く覚えてお置き、
来年の今月今夜は貫一は何処で此月を見るのだか。
再来年の今月今夜・・・十年後の今月今夜・・・
いいか、宮さん、一月の十七日だ。
来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は曇らしてみせるから」
(尾崎紅葉作「金色夜叉」から抜粋。適宜省略しています)
金色夜叉の有名な貫一、お宮の別れの場面です。
ではこのとき熱海の海岸で貫一とお宮が眺めた月はどんな月か。この日を旧
暦に直すと、 12/15となります。つまり貫一達が眺めた月は「十五夜の月」
ということになります(現代風の天文学的満月はこの 2日後の 1/19でした)。
つまり、貫一は来年も、再来年も、十年後もこの満月(十五夜)の月をその
涙で曇らせてみせると言っているのです。1/17の夜が曇ることをこのエピソ
ードから「貫一雲り」と言うことがありますが、なるほど十五夜の月の夜が
曇るから印象に残るわけで、これが新月の日だったら話にもなにもなりませ
ん。
ちなみに、「来年の今月今夜、再来年の・・・」と続くこの言葉ですが、こ
の言葉が意味を持つのはお月様の形という観点から考えると太陽暦である新
暦の日付ではまずいですね。ここは廃止されたはずの太陰太陽暦の旧暦でな
いと。だって、新暦の日付で考えたら、来年の今月今夜は絶対に満月じゃあ
りませんからね。
ちなみに、この熱海の夜の来年そして十年後の同じ日の夜の月を考えると、
来年は明け方に細い月が、十年後には日没後すぐに三日月型のこれまた細い
月が見えるだけ。深刻な思いを抱いて夜の海を散歩するには時間が合わない
ことになってしまいます。
この小説が書かれたのは明治30年ですから、改暦があってからすでに24年が
経過していましたが、尾崎紅葉の頭の中ではまだ太陰太陽暦である旧暦の感
覚が残っていたのでしょうか。
◇湾岸戦争開戦記念日
アメリカを中心とした多国籍軍によるイラクへの爆撃(「砂漠の嵐」作戦)
が始まったのは1991/01/17のことでした。
爆撃が始まって間もなくその様子が世界中のテレビに映像として流れたこと
を覚えていらっしゃる方は多いと思います。
さて、この日のお月様の具合はどんなものだったかというと新月の翌日。
よく晴れた夕暮れに注意深く探せば細い細い月が見つかるかなというような
お月様でした。
もちろん、夜陰に紛れて攻撃したいという作戦立案側としては、この「新月
の期間」というのは重要な要素であり、お月様の形を考えながらこのタイミ
ングを図ったと言えるでしょう。
またイラクをはじめ、多くのイスラムの国が採用しているヒジュラ遷都暦は
太陰暦ですから、新月のこの時とは月の変わり目でもあります。攻撃のあっ
た1/17はその直前の日暮れから始まったヒジュラ暦のラジャブの月、訳せば
「神聖な月」となる月で、イスラム社会ではこの月は戦争をしてはならない
月とされていると言うことも、攻撃を始めた側は考慮していたのでしょう。
◇阪神淡路大震災記念日(防災とボランティアの日)
この地震があったときには私は和歌山(那智勝浦町)に住んでいましたから、
この日の早朝に家が大きく揺れたことで目が覚めました。
私が目を覚ましたこの揺れが、震源地に近い神戸では壊滅的な大被害を生み
出していました。
この日の月は午前 5時に満月をむかえていました。
そして地震が起こったのはこのわずか後、 5時46分。
神戸地方でのこの日の月の入りは 6時52分頃でしたから、地震が起こったと
きには、真ん丸の満月が西の空低くから神戸の街を照らしていたのでは無い
でしょうか。
揺れが修まった後、果たして神戸の人たちはこの西の空の月を見上げたので
しょうか。月を見上げる余裕など無かったのでしょうか。
今日は、1/17にまつわる 3つの出来事について、その日の月の姿から考えて
みました。ちなみに今夜は夜半を過ぎる頃に下弦の半月よりわずかに膨らん
だ姿で東の空に昇ります。下弦の月となるのは明日の夜です。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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