日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■地球は一日に何回自転するか
「地球はその自転運動によって一日に一回転します」
小学校か、中学校かは忘れましたが、理科の時間にこんな話を習ったことは
有りませんか。
何時習ったかも憶えていない程なので、正確にはどんな表現だったかを思い
出すことは出来ませんが、大体こんな感じだったのではないでしょうか。
(今はどんな風に教えているのでしょうか? 現役の理科の先生がこのメー
ルマガジンをお読みでしたら、ご教授をお願いします。)
さて、正確な言葉の表現は忘れてしまった大人の私たちも、冒頭の説明を聞
けば、大概はうなづいて下さることと思います。さすがに、
「いやいや、太陽が地球の周りを一日に一回巡っているのだ」
という説を信奉してる方は今の時代には珍しい存在でしょう。
さて、では大部分が納得してしまいそうなこの話は、本当?
◇地球の自転速度
理科年表の数値を引くと地球の自転速度は
7292115e-11 rad/s
と書かれています。要するに一秒間にどれだけの角度回転するかを表してい
るのですが、日常では見慣れない数値表現や角度の単位なので、もう少しな
じみのある表現に改めてみます。
7292115e-11 = 0.00007292115
rad/s = 57.29577951°/s
→→ 7292115e-11 rad/s = 0.004178074°/s
つまり、地球は一秒間に 0.004178074°回転するということです。
判りやすいですね・・・そうでもないか。
ではもう一声判りやすく考えましょう。
1 日は 60×60×24 = 86400秒ですから、これを 0.00417・・・かけると
= 360.985605 °
という数字が出てきます。この数字は地球が一日に何度回転するかを表した
数字です。一回転は 360°ですから、地球は一日に一回転とちょっとだけ回
転すると判りますね。めでたしめでたし。
? まてよ???
◇一日に一回転ちょっと?
めでたしめでたしと思ったのに、目出度くないことが一つ。
大人の常識である「地球は自転運動によって一日に一回転する」と違うとこ
ろがありますね。そう、
地球は一日に一回転と「ちょっと」回転する
なんだよ、この「ちょっと」って。
何かおかしい。何がおかしいかというと、それは地球が一日に一回転すると
考えたときの基準がおかしいのです。
◇「一日」ってどんな長さ
一日の長さというのは何かというと、基本的には或る場所で太陽が真南に来
た(南中した)瞬間から次に南中するまでの長さです。この南中と南中の間
隔は実際には季節により若干異なるので、現在はそれを平均したものを一日
と考えていますが、基本的な考え方としては間違ってはいません。
こうして決められた一日は「太陽日」と呼ばれます。この太陽日が普通に私
たちが使う「一日」の長さです。
これとよく似ているのですが、太陽の代わりに星座の星々を使って同じよう
にある星が南中してから次に南中するまでの間隔を測って一日を決めること
が出来ます。太陽を基準とした一日を太陽日と呼ぶように、星座の星々(恒
星)を使って決めた一日は「恒星日」と呼ばれます。
さて、太陽か恒星かの違いはあってもどちらも地球が一回自転する時間によ
って決められた太陽日と恒星日ですので、同じもののように思えるのですが
一太陽日と一恒星日はその長さが異なります。一太陽日を24時間とすると、
一恒星日の長さは
23時間56分 4.0905秒 (理科年表 2000)
大体 4分ほど短いことになります。
なぜ太陽日と恒星日の長さの違いは、基準とした天体の違いによります。恒
星は、遙か遠くにあって事実上見かけの位置が動かない星ですが、太陽は違
うのです。だって、地球は太陽の周りを「一年で一周」しているのですから。
一年で一周するということは、一日でもわずかですが地球と太陽の位置関係
は変化することになります。一年は何日(太陽日)かというと、365.2422日。
360°をこの日数で割ると、一日の平均の変化量が求まります。
360 / 365.2422 ≒ 0.986(°)
一日経つと太陽はこの角度の分だけ移動してしまうため、地球は 360°では
なくて 360° + 0.986°だけ回転します。ちょっとだけ余分に廻っています。
ちなみに、遙か遠くにあって地球の公転によっても見える位置のほとんど変
化しない恒星に対してはこのちょっと余分な回転は必要ないので、恒星を基
準にして測った一日(恒星日)は、太陽日より少しだけ短い(約 4分)短く
なるのでした。
さあ、これからは「地球はその自転運動によって一日に一回転します」なん
て言わずに、
「地球はその自転運動によって一日に一回転とちょっとだけ回転します」
と言うことにしましょう。
周囲の人々の冷たい視線を送って来たって気にしない気にしない。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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