日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■今日(3/21)も春分の日?
「今日、3/21は春分の日です。」
何て書くと、「おいおい昨日(3/20)も春分の日と書いたじゃないか」とお叱
りを受けそうです。
これを書いているのは2009/03/21。今年の日本の「春分の日」は3/20ですか
ら昨日は昨日で春分の日と書きました。
ところが、世界的(?)にみると、今日3/21を春分の日と決めている国が沢
山あります。それで、「今日も春分の日」と書いてみました。
◇日本の「春分の日」
現在、日本が祝日として採用する春分の日は、基本的には太陽が春分点と呼
ばれる天球上の点を通過する日、二十四節気の「春分」の日です(法律的に
は他の日になる可能性も残りますが、変更された例は今のところ皆無)。
このため、春分の日は3/20になったり、3/21になったりします。
近年の太陽の春分点通過日(以後、「春分日」)を並べてみると、
3/20 2004,2005,2008,2009,2012,2013,2016,2017,2020
3/21 2006,2007,2010,2011,2014,2015,2018,2019
となります。
既に書いたとおり、現在のところこの春分日が祝日としての春分の日となる
と予想されますので、春分の日が3/20になるか21になるか、その確率は大体
半々というところです。
◇キリスト教教会にとっての「春分の日」
さて、「今日も春分の日」の種明かしは、キリスト教の教会にとっての春分
の日が3/21だと言うことです。
キリスト教教会にとって春分の日は復活祭(イースター)の日取りを決める
ための計算の起点となるという意味で大変重要な日です。
復活祭の日取りをどのように決めるかと言うことは、キリスト教教会にとっ
ては大変重要な問題です。復活祭は毎年固定された日付ではなく
春分の日以後の最初の満月の次の日曜日
という基本ルールから計算された日です。
簡単に書いてしまえばこれだけのことですが、このルールに従って実際にど
のように計算するかを決めるまでには侃々諤々の議論がなされたのです(こ
の侃々諤々の議論は長い話なので今回は省略)。
ご覧の通り、復活祭はまず春分の日から計算を開始します。この春分の日を
日本が現在行っているように天文学的な春分日とすると、世界宗教となった
キリスト教にとっては頭の痛い問題が発生してしまいます。
それは、「時差」の問題です。
例えば2010年の太陽の春分点通過の瞬間をイギリスと日本の時刻で表すと
イギリス 2010/03/20 18時
日本 2010/03/21 3時
となります。つまり2010年の天文学的な春分日は、イギリスでは3/20、日本
では3/21なってしまいます。
もしこの時教会暦での満月が3/20だとすると、イギリスでは3/20の翌日以降
最初の日曜日が復活祭となります。たまたま2010は3/21が日曜日ですから、
この例のような状況だとイギリスでは3/21が復活祭となります。
(2010/03/20は本当は教会暦での満月ではありません。説明の都合で、仮定
したものです。誤解の無いように)
一方、日本では3/21が春分の日だったとして、教会暦の満月が3/20なら、こ
の復活祭の計算に使われる満月はこの満月ではなくて、その次の満月となり
ます。つまりおよそ一ヶ月先の満月となるわけですから、復活祭もおよそ一
ヶ月先の日付となります。
このように春分の日が時差によって 1日違っただけ、復活祭の日取りが 1ヶ
月も違うことが起こってしまうのです。
「今年の復活祭は、○○の国では3/21で、△△の国では4/25だ」
と言う具合です。同じキリスト教教会でありながら復活祭の日取りが違うと
いうのはおかしなことです(それも1日や2日ではありません)。教会暦とし
ては天文学的な正確さより、同じ教会内では同じ日に復活祭を行うことの方
がずっと重要です。
では、どうやってそれを実現するかとして考えられた答えが
春分の日は3/21に固定する
というものです。その国において天文学的な春分日が3/20だろうと3/21だろ
うと、教会暦においては春分の日は3/21なのです。
一般にキリスト教の影響を強く受ける国々の多くでは、春分の日はこの復活
祭の日取りを決めるためのものなので、天文学的な春分日とは切り離して、
常に3/21としています。
もし、「今年の春分の日は何日?」ということを国際的な多数決で決めるよ
うなことをしたら、きっと軍配は3/21に上がるでしょうね。もちろんそんな
多数決をとるようなことはないでしょうけれど。
※注意
キリスト教教会暦での「満月」もまた現在の天文学的な満月では無く、暦の
日付だけから決められる教会暦上の満月です。
※注意2
復活祭の日付を同じに・・・と言いながら、教会の系統によって計算に使う
日付をグレゴリオ暦のものにするかユリウス暦のものにするかといった違い
があるので、「キリスト教では」と一括りにするのは乱暴なのですが、説明
の都合上、この乱暴なことをしております。悪しからず。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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