こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■石榴の花の咲く頃
 万緑叢中紅一点(ばんりょく そうちゅう こういってん)

 王安石(おうあんせき)の石榴詩の中にある有名な言葉です。
 一面の緑の中にただ一点の紅花が異彩を放つ様を表した言葉です。
 現在、「紅一点」といえば、大勢の男性の中にただ一人女性が混じることを
 表す言葉となっています。王安石のこの詩の情景から生まれた言葉ですね。

 今日は 6/3、旧暦では5/11になります。
 旧暦時代、五月と言えば夏。
 春を花の季節とすれば、夏は葉の季節。まさに万緑の頃です。
 その緑の葉の季節に、紅の花をつけるのが石榴です。

 日一日と茂り、それとともにその緑の色を濃くして行く草や木の葉。
 石榴はそうした草木の葉の中にあってさえも、一際濃い緑色の葉をつける木
 ですから、その濃い緑の葉の間から見せる紅の色の花は自然に人の視線を引
 き寄せます。

 多くの花が木々の枝を飾る春であれば、石榴の花もそうした花の一つと数え
 られるだけだったかも知れませんが、花の季節ではなく、葉の季節に咲くこ
 とによって、強い印象を与える花となりました。

 旧暦五月の異称に「榴月」というものがあります。この「榴」はその一文字
 でも石榴(ざくろ)を表す文字ですから、「ざくろの月」という意味です。
 旧暦の五月はあの鮮やかな石榴の紅い花の咲く、「ざくろの月」でした。

 私の家のお隣さんの庭には石榴の木が一本植えられています。
 その石榴の木は暦が「ざくろの月」に入る頃、紅い花をつけ始め、早いうち
 に咲いた花は付け根が丸みを帯び始めています。
 ざくろの月が終わる頃には「紅一点」のあの花が、酸っぱい石榴の実へと姿
 を変えて行くはずです。


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