日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■品川の海岸は夏野菜の産地?
初夏の頃、近くのホームセンターで安売りされていたナスの苗を6本買って
きて植えました。
そのナスが、現在次々に実を実らせていて我が家の食卓に並んでいます(一
昨日の晩は麻婆茄子として登場)。
今日は我が家のナスとお盆から連想した、品川産(?)の夏野菜から身を起
こし江戸時代の豪商、河村瑞賢の話です。
◇お盆の「ナス」といえば
さて、お盆の時期にナスといえば、思い出すのはナスの牛。
キュウリの馬と共にご先祖様の送迎に活躍するあのナスの牛です。
ご先祖様を載せるキュウリの馬とナスの牛ですが、それぞれにその特徴に応
じた役割分担があります。
キュウリの馬は迎え係
ナスの牛は送り係
この役割の違いはその歩みの速度の違いによります。
盆に帰ってくるご先祖様を一刻も早くお迎えしたいので迎えには足の速いキ
ュウリの馬。お帰りの際は名残惜しいのでゆるゆるとした歩みで遠ざかるナ
スの牛というのがこの役割分担です。
もうお迎え係のキュウリはそのつとめを果たしたことと思いますので、あと
はナスの牛。たっぷりと道草を食いながらゆっくりとご先祖様の霊をあの世
へ送りとどけてくださいね。
◇品川の海岸産のナス・キュウリ?
お盆の明けた頃、キュウリ、ナスといった夏野菜を元手に一財産作った人物
が江戸時代の初期にいらっしゃいました。その名前は河村瑞賢。
伊勢の国(三重県)の貧農の家に生まれ、一旗揚げようと江戸に上ってきて
いた人物です。
この後の豪商河村瑞賢がその巨万の富を築くきっかけになったのがナスやキ
ュウリの漬け物の売り歩きでした。この時若き日の瑞賢が売り歩いたナスや
キュウリの産地は何と、品川の海岸。何とも不思議なナスやキュウリです。
◇モッタイナイ精神の権化
盆明けのある日、品川の海岸を歩いていると、海岸には盆の精霊流しで流さ
れてきた沢山のキュウリやナスが流れ着いていました。キュウリの馬やナス
の牛のなれの果てです。
これを目にした瑞賢はひらめきました。
この品川の海岸産のキュウリやナスは売り物になると。
そのままではただのゴミですし売り物になるわけもありませんが、漬け物に
してしまえば十分に商品価値がある(拾いもので作ったとはまさか誰も思わ
ない?)。瑞賢はその辺にいた乞食達にいくらかの金を与えて、早速これを
拾い集めさせて塩漬けにし、普請場を回りこれを普請場の人夫に安く売りさ
ばきました。
「安く売った」もなにも、なんといっても原材料費はただみたいなものです
からね。瑞賢はこれで得た儲けを元手にしてやがて巨万の富を築き、さらに
は淀川河口の治水工事や、その他様々な開拓開墾にその手腕を発揮して成功
させていきます。やがては幕府からもその功を認められて旗本に列せられる
までになった、まさに立志伝中の人物です。
さすが、こんな人物は物を無駄にはしない。目の付け所が違う。
このナスやキュウリの漬け物の話などもまるでもったいない精神の権化のよ
うではないですか・・・。
でも漬け物を買った人たちはその原料が、品川の海岸産だとその素性を知っ
ていて買ったとは思えませんがね。
お盆の時期に思い出した、品川産(?)夏野菜の漬け物の話でした。
さて、我が家でも我が家の畑原産のナスで、ご先祖様のためのナスの牛をそ
ろそろ作らねば。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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