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■お彼岸の日付
 本日は秋分の日(2009/09/23)。秋の彼岸の中日です。
 毎年彼岸の時期になると「お彼岸はいつからいつまでですか」という質問が
 寄せられます。今年も直接の質問が何件かありましたし、Web こよみのペー
 ジの雑節のページ(http://koyomi8.com/zassetsu.php) で解決しましたと
 いううれしいお便りも幾つか・・・とさりげなく宣伝・・・ありました。

 その彼岸の期間ですが現在は、春分の日・秋分の日を中日としてその前後三
 日、計 7日とされています。今年の秋彼岸の例で言えば

  入り 9/20
  中日 9/23
  明け 9/26

 の期間となります。

◇彼岸が暦に書かれた理由
 彼岸は仏教行事で、暦に記載されるものではありませんでしたが、必要性が
 高かったからでしょう、現在はこれが雑節の扱いで書き込まれることが普通
 になっています。
 彼岸の日付が暦に記載されるようになった理由は「国史大事典」によれば

 『昔(彼岸会の)談義説法は比叡山の坂本に限って行われていた。
  都鄙の人々はこの説法を聞きたいがために群れ集うのだが、その年の彼岸
  の日付がよくわからないので難儀するからと、比叡山からの要請があって、
  これを暦に載せるようになった。』

 とあります(「国史大事典」のこの部分を引用した「江戸の歳事風俗史」か
 らの孫引きです)。何とお坊さんの説法を聞きたいがために群れ集う善男善
 女への便から暦に載るようになったとは。
 今のお坊さん方も、善男善女がカレンダーにこの日をマークして楽しみに群
 れ集うような説法をして頂きたいものですね(「カレンダーのマーク」はカ
 レンダー屋さんが既に赤く塗ってくれていますので安心?)。

◇お彼岸の日付の変遷
 この彼岸の日付ですが、前段で書いた「善男善女の時代」には春分、秋分の
 日から数えて三日目が彼岸の入りの日でした(なお、この時代の春分・秋分
 は恒気法という計算方式でしたので、現在の春分・秋分と1〜3日異なります。
 ここでは、恒気法で求めた春分・秋分をきじゅんとしています)。
 日本で使われていた暦で言えば、宣明暦と貞享暦という暦に書き込まれてい
 たのがこの日付です。これを現在の暦(新暦)の日付に当てはめて考えると

  彼岸  3/25〜3/31 (中日は2009/03/28)
  秋彼岸 9/23〜9/29 (中日は2009/09/26)

 となります。今よりちょっと後の日付だったことになります。これは貞享暦
 まで使われた彼岸の期間ですので、1754年まで使われた日付です。

 次に、江戸時代の中期の暦(宝暦暦・寛政暦 1755〜1843年)のお彼岸の期間
 はというと、
 
  彼岸  3/15〜3/21 (中日は2009/03/18)
  秋彼岸 9/22〜9/28 (中日は2009/09/25)

 となります。この宝暦暦・寛政暦の彼岸の考え方はちょっとイレギュラーな
 もので、「彼岸の中日は昼夜等分の日」と昔から考えられていたことを暦の
 上で実現したものです。彼岸の中日が昼の長さと夜の長さが同じになる日と
 言う観点で決定したのです。このため春分・秋分と彼岸の中日が異なります。
 (彼岸の中日としては、現在の日出・日入の基準での昼夜等分の日を基準に
 しました。ちょっと手抜きです。)

 Web こよみのページの日出没計算の説明などでも書いておりますが、日の出
 や日の入りが太陽の中心ではなくてその上辺が地平線に接した瞬間ですから
 昼夜等分という観点から見れば確かに春分・秋分の日は彼岸の中日にはなり
 ません。そのため、宝暦暦等の彼岸の中日は春は早い時期に、秋は遅い時期
 に若干ずれています。

 この宝暦暦・寛政暦の次にやって来るのが日本最後の太陰太陽暦である天保
 暦ですが、この暦の彼岸の考え方が現在の私たちが考える彼岸の期間となっ
 ています。つまり、春分・秋分の日を中日としてその前後三日の期間という
 ものです。

 もし、貞享暦から宝暦暦への改暦、寛政暦から天保暦への改暦の期間に生き
 ていたら、

  おや、今年の彼岸は去年までと違うな?

 と感じられたでしょうかね。まあ、暦にそう書いてあるからその日だとしか
 思わなかったかな、たぶん気付かなかったでしょうね。
 幸い、私は生まれてこの方ずっと、彼岸の中日は春分・秋分の日と言う時代
 に生きておりますので、本日もカレンダーどおり、墓参りに出かけ、お萩を
 食べようと思っています。
 今日が、佳い彼岸の一日になりますように。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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