日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■厄年(やくどし)
「今年は厄年だから、お祓いしなくちゃ」
といった話を耳にすることがあります。
厄年とは陰陽道から唱えられたものだそうで、人の一生のうちで身に災難が
降りかかる要注意の年齢だとされています。
厄年は元々数え年で数えたものでしたが、年齢一般の数え方が満年齢による
ものに移行してしまった現代では、満年齢で数える例も増えているように思
います。
◇厄年の年齢
厄年の年齢は、時代や地域により差異があるようですが、概ね次のとおり。
男性: 25,42,61 歳
女性: 19,33,37 歳
このうち男性の42歳、女性の33歳は大厄(たいやく)といわれ、特に注意し
なければいけない厄年とされています。(42歳は「死に」、33歳は「散々」
に通じるという語呂合わせ)。
厄年とされる年齢は上記のものが一般的なようですが、他にも 3,5,7,13,77
,88 歳も厄年に加えるところ、男性は 2と5のつく年齢が、女性は3,7,9の
つく年齢が厄年だと考える地域もあるとのこと。
更に、厄年の前年、後年を前厄、後厄(厄年そのものは「本厄」)として 3
年の間身を慎む必要があるなどとも云われます。
こうなると、年がら年中身を慎まねばならなくなりそうです。
◇厄年の始まりは
厄年も中国から伝来したものだと云われています。
広がったのは室町時代以降だと云われますが、既に源氏物語にも紫の上が37
歳になるため、祈祷をするなどした方がよいと光源氏が忠告する場面がある
とのこと(私は覚えていません・・・)なので、平安時代にもすでに厄年と
云うものが意識されていたことが分かります。
◇厄年神役説と厄年俗信説
厄年がどうして生まれたかについては民俗学では厄年神役説と厄年俗信説が
あります。
厄年神役説とは、厄年には地域社会(村や町)において祭りの役員など司祭
者の役割を担うことになるのだと云うものです。地域社会で一定の役割分担
を受け持たなければならない立場に立ったということで、厄年は「役年」な
のだと考えるものです。
節分に神社で豆を撒いたり、沢山の人を呼んで宴を開くなどは、こうした役
割の一つなのだというのがその説です。
提唱者はかの柳田國男大先生。
一方厄年俗信説は、厄年の基本は災厄を落とすために形代(かたしろ)を棄
てる行為だとする説で、井之口章次氏などが提唱したもの。
厄払いとして身につける髪飾りや着物、銭などを棄てたり、道に落としたり
するというのが、この形代を棄てることなのだと考えるわけです。
前述の豆撒きや宴を張ることは、豆を撒くことで、あるいは宴を張って多数
の人と共同で飲食することによって、自分に降りかかる災厄を多くの人に広
く、薄く分かち合ってもらおうとする呪術行為だという説です。
◇厄払い・厄落とし
厄年には、その厄を払うための行事を行います。
既に書いた大勢の人に食事を振る舞うことや、身につけるものを棄てたりわ
ざと道に落としたりするもの以外に、寺社に参拝したり、特定の日に終日無
言で過ごす等々。
中には、正月の他にもう一度仮の正月を祝うことで、「もう厄年は終わった」
ことにしてしまうなんて云うこともあるようで、その行事は多種多様。
私の知り合いのある女性は、ご主人の実家(秋田)の習俗で着物を着て日本
髪の鬘をかぶってお祓いするとかで、当日の着物+日本髪姿の写メールを送
ってきてくれました(その写真を見て大笑いしてしまったことは、ご本人に
は内緒です)。
厄落としの行事を行う日としては、正月、初午の日、節分など、何らかの形
で節目となる日が選ばれることが多いようです。
◇厄年の習俗
厄年には何か重大な変化(大病だとか、不運だとかもっぱらよくないことが
おおいようです)があると考えられるようで、厄年には健康に注意してくだ
さいといった話をよく聞きます。
また、厄年には結婚や出産などを避ける習俗もまだ残っており、親の厄年に
生まれた子供は厄に負けて育たないなどと云われることもあるそうで、それ
を避けるために一度儀礼的に捨てられて、これを親戚や知人に拾ってもらう
という習俗もあったと聞きます(今もあるのかな?)。
既に書いたとおり、前厄・後厄まで考えると、結構な割合で「厄年」に巡り
会うことになります。
「来年は厄年だ」なんて云う方が読者の皆さんの中にも一らっしゃるのでは。
ちなみに、私自身について云うと、数年前に大厄の年を通過しましたが本人
は厄年など信じていないので、何にも厄落としなどせずに過ごしましたが、
これといった問題は発生しておりません。
まあ、「健康に気をつけましょう」くらいはしましたが、これは厄年以外で
も気をつけて悪いことではないですからね・・・。気の持ちよう次第ですね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
日刊☆こよみのページ スクラップブック