日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■龍の頭に囓られる夕日、日没帯日食
今年は、元日早々月食がありました。
食分はわずかで、あまり話題になりませんでしたが。
そしてその元日から半月経った1/15、小正月の日には今度は日食が起こりま
す。日食といえば昨年は天文現象と云うより「社会現象?」と思えるほど日
本中大騒ぎしたことがまだ記憶に新しいのですが、同じ日食なのに今回は至
って静か。この落差は何でしょうね。
◇今回の日食は、龍の頭
西洋占星術のホロスコープには太陽や月、惑星などが登場しますが、こうし
た現実の星以外にも、架空の星のようなものも登場します。そうした架空の
星に、龍の頭と尻尾があります。
ドラゴンヘッド(龍頭、Dragon Head または北節、North Node)
ドラゴンテール(龍尾、Dragon Tail または南節、South Node)
これが龍の頭と尻尾です。
この頭と尻尾は何者かというと、
黄道と白道の交点
のことです。天文学的に言えば、太陽の通り道である黄道に対する月の通り
道である白道の交点、つまり月軌道の昇降点と云うことになります。
頭が「昇交点」、尻尾が「降交点」。二つ合わせて「昇降点」と呼びます。
なぜこれが他の「惑星」並に天体の位置として計算されるかと言えば、この
頭と尻尾の位置に太陽と月がある時に、日食・月食が起こることから、この
位置には太陽や月を蝕む(食)何かがあると考えたのです。
太陽と月が同じ頭、あるいは尻尾の側にあるときには日食が、頭と尻尾とに
分かれてあるときには月食が起こります。
元旦の月食と明日、1/15の日食は
2010年元旦の月食 太陽は龍の頭 、 月は龍の尻尾
2010年1/15の日食 太陽・月とも龍の頭
付近にあります。
明日は、龍の頭付近に太陽と月が両方並びますので、地球から見て手前にあ
る月によって太陽が隠される日食が起こります。
◇龍頭・龍尾は星?
占星術が生まれた頃は龍頭・龍尾で日食・月食が起こることは判っても、月
と太陽の距離の違いや、月が太陽の光を反射して光る天体だとかは判らなか
ったわけですから、日食・月食が起こる原理ははっきり判りませんでした。
そこで当時としては理解しやすい理由を考えた結果、そこには龍頭と龍尾と
いう二つの見えない天体があって、その天体に太陽が隠されるとき日食が、
月が隠されるときに月食が起こると考えたのです。つまり龍頭と龍尻尾は普
段は目に見えない天体と考えたのです(古代の人々の空想はさらに拡がり、
それが龍の頭と尾となってしまったわけですね)。
◇2010/01/15の日食
この日食は地球全体で見れば、金環食と呼ばれる日食です。月が地球から遠
い距離にある時に日食が起こる場合、月は遠くにあるので月の見かけの大き
さが小さくなりますから、月が太陽を完全に隠しきれず、月の周りから太陽
が少々はみ出して見えるのが、この金環食です。完全に隠す場合が皆既日食
になります。
1/15の月と地球の距離は約405400km。月までの平均距離384400kmに比べて、
5.5%程遠くにあるので、月が太陽を隠しきれないのでした(今回の日食が金
環食として見える場所は、インド辺りです)。
残念ながら日本では金環食にはならず、部分日食となります。
その部分日食も、見える場所は関東より西の地域だけ。
関東より東の地域では、日食が始まる前に太陽が西の地平線に沈んでしまう
のでした。残念ですね。
関東より西の地域では、16時45分頃から太陽が欠け始め、欠けたままで日没
を迎えることになります(こういう日食を「日没帯日食」といいます)。
日本では西に行けば行くほど、日食が始まってから日没までの時間が長いの
でそれだけ、日食が進む様子がよく見えることになります。
沖縄くらいまで行けば、太陽の直径の60%程まで欠けた状態が見えます。
本州、四国、九州ではそこまで欠けた状態に進む前に日没を迎えますが、太
陽一部が「龍の頭」に囓られて欠けたままで沈んでいく、ちょっと面白い光
景が見られるはずです。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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