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■空穂年(うつぼどし)
 「旧暦の一年は立春から」といった誤解があることは、日刊☆こよみのペー
 ジで既に何度か採り上げてきました。

 旧暦の年が変わる前、十二月の間に立春を迎えてしまうという年内立春(ね
 んないりっしゅん)と呼ばれる年があること、そしてそれが珍しいことでは
 無かったことも書いてきました。

 ※詳しくは、Web こよみのページ「暦と天文の雑学」の解説記事、
  『年内立春と新年立春』( http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0170.htm )
  をお読み下さい。

◇年内立春と新年立春の狭間
 年明け前、年の瀬に立春の日を迎えてしまう年を年内立春と呼ぶのに対して
 年明け後に立春を迎える年を新年立春と呼びます。

 今日2010/3/6は旧暦では正月の21日。
 まだ旧暦の正月なのに新暦では 3月を迎えてしまっていますから、旧暦の今
 年(ややこしいな)は、遅めの年明けだったといえます。

 どのくらい遅かったかというと旧暦の元日の日付は新暦の2/14でした。
 立春はというと 2/4でしたから立春は旧正月が来る前に過ぎてしまっていま
 した。つまり昨年(旧暦の)は年末に早々と立春を迎えてしまう年内立春の
 年だったのでした。

 では旧暦の来年(ああ、ややこしい)の状況はと見ると、旧暦元日の新暦の
 日付は 2/3。立春は 2/4ですので来年は年明け後に立春を迎える新年立春の
 年となります。
 去年は年内立春で年の瀬に立春を迎え、来年は新年立春で年明け後に立春を
 迎える。では今年は?
 旧暦年の期間と立春の日付を並べて眺めてみましょう。

  旧暦2009年(2009/01/26〜2010/02/13) 立春 2009/02/04 , 2010/02/04
   〃2010年(2010/02/14〜2011/02/02) 立春 ?
   〃2011年(2011/02/03〜2012/01/23) 立春 2011/02/04

 立春はいつも新暦の 2/4頃にあるのですが、旧暦の 1年の期間は新暦の日付
 に対して結構大きく変化します。このため新年立春の年があるかと思えば年
 内立春の年もあるということ、それどころか旧暦2009年は一年に立春が 2度
 あり、新年立春の年であるとともに年内立春の年でもあります。

 旧暦2009年のように、一年の間に立春が 2度ある年があればこの割を食った
 かのように、立春が一度も無い年も出来てしまいます。
 旧暦の今年は、年内立春の年と新年立春の年の狭間に生まれた、立春の無い
 年で、こうした年のことを「空穂年(うつぼどし)」と呼ぶのだそうです。

◇空穂
 「空穂」とは、

 【空穂】
  空穂または、「靫」。
   矢を盛って腰に背負う用具。中空の籠かごで、時に毛皮をつけて(後世
  は張子で漆塗のものもある)矢が雨に濡れるのを防ぐ。うつお。羽壺。
   《広辞苑・第五版より》

 だそうです。「だそうです」といわれても、まず目にすることのないものな
 のでイメージが分かりませんね。インターネットで探したところ次の記事に
 実際の空穂の写真がありました。

  KenさんのBLOGS (2008/10/09)
  ⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/kuroken3147/archive/2008/10/09
 (Ken さん、分かりやすい写真の掲載、有り難うございました。)

 なるほど。上下どちらも中空となった容器、つまり間に「節」(立春は正月
 節で、一年の節目とも考えられます)が無い年なのでこの容器になぞらえた
 呼び名のようです。
 旧暦の2010年は、立春という節目のない空穂の年なのでした。

◇最後に
 旧暦2010年のように一度も立春のない年があるかと思えば、2009年のように
 年に二度もある年もあります。
 立春が一度もない年は「空穂年」と呼ばれますが、では二度ある年は何とい
 うのかなと以前から疑問に思っています。

 どなたか、そうした年の呼び名をご存知でしたら教えて下さい。
 (分かったら、いつかこのコーナーの題材にさせてもらおうっと)

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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