日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■三つの明星
昨日(2010/09/11)の夕方、西の空に細い月と宵の明星が並んでいる姿を見
ました。あいにくカメラが手元に無くて写真を写せなかったのが残念な、い
い構図だったのですが・・・。
さてこの写せなかった宵の明星は言わずと知れた金星のことです。
写真に写せなかった腹いせ(?)で本日は明星の話です。
◇辞書に見る「明星」
みょうじょう【明星】ミヤウジヤウ
1.金星の異称。「宵の明星」「明けの明星」
2.(比喩的に) その分野で、光彩を放っている人。スター。「劇壇の明星」
《広辞苑・第六版》
とあります。
昨日見たのはこの 1にあった「宵の明星」ですのでその正体は金星です。
金星は地球よりも太陽に近い軌道を巡る、内惑星の一つ(もう一つは水星)
です。
いつも太陽の近くにあるので、それが見える時間帯は昼間かあるいは夕方、
あるいは明け方のひとときだけということになります。
望遠鏡が無いと昼間は流石に見えません(よく晴れたとき、金星は希に肉眼
でも見えることがあるそうですが、これは例外でしょう)から、見ることの
出来る時間帯は、夕方か明け方だけと言うことになり、夕方に見える場合を
宵の明星、明け方に見える場合を明けの明星と呼んだわけです。
◇内惑星の特徴
内惑星の特徴には、「太陽の近傍から離れない」というものがあります。
なぜこうなるかは、試しに同じ中心を持った半径の異なる円を描いて頂けれ
ばすぐにわかって頂けることと思います。外側の円の一点から内側の円の接
線と、円の中心を通るを線を引けば、この二本の線のなす角が90°より常に
小さな角度となって、90°を越えることは決してありません。
この外側の円は地球の軌道、内側の円が内惑星の軌道です。
ちなみにこの時の二つの線のなす角の最大の状態を最大離角と呼びます。金
星では最大離角は約47°、水星なら約28°です(軌道が円では無いので最大
離角は、若干変化します)。
このように太陽からあまり離れないため、「金星を真夜中に見る」と言うよ
うなことは出来ません。
◇明けの明星と宵の明星は別の星
今はもちろん明けの明星も宵の明星も金星だと誰もが知っていることですが、
大昔はこの二つの星は別々の星と考えられていたようです。
見える時間帯が大きく変化するわけですから、単純に考えると確かに別々の
二つの星があったと思ったとしても無理からぬことだと思われます。
昔の人から見れば、明けの明星と宵の明星という二つの星があったわけです。
◇第三の明星
さて明星の辞書的な意味の 2には、「光彩を放つ人」とあります。人ではあ
りませんが光彩を放つということで言えば、星の中には金星以外にも光彩を
放つ星があります。
金星に次いで明るい星と言えば木星。木星は明るさ的には金星には敵いませ
んが、金星には不可能な芸当が出来ます。それは
真夜中に見ることが出来る
ことです。金星に比べるとやや暗いとは言えそれ以外の星から比べれば圧倒
的に明るく、自分より明るい金星が輝くことの出来ない真夜中の空にも輝け
ますので、その時間帯では確かに明るい星、「明星」と言うことが出来ます。
明けの明星、宵の明星が見えない時間帯、真夜中に見える明星と言うことで
希にではありますが木星を「真夜中の明星」と呼ぶこともあります。
この真夜中の明星も明星の仲間に数えると、明星には明けの明星、宵の明星、
真夜中の明星の三つの明星があることになりますね。
現在は、夕方に宵の明星、金星が見え、これが西の地平線に沈む頃に交替す
るように東の空に真夜中の明星、木星が昇ってきます。
この状況は、今年の10月の半ば頃まで続きます。
11月に入ると宵の明星は見えなくなり、真夜中の明星が夜の空を飾り、これ
が西の空に姿を隠す夜明けの頃になると、日の出前の東の空には、名前を明
けの明星に変えた金星が昇るようになります。
三つの明星はその名の通り、とても明るい星。
空を見上げて一際明るい星を見つけたら、さてあれは「どの明星?」かなと
と考えてみてください。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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