こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■望遠鏡の日
 望遠鏡を最初に作ったのは誰か?
 実はよくわかりません。なぜか?

 それは、構造が単純なのでいろんなところでいろんな人が「偶然に発見」し
 てしまったようだからです。だれが最初かといっても、みんなが記録を残し
 てくれているわけではないのでAさんよりBさんの方が先に発見していたと
 いうような証明は困難なのです。

 望遠鏡の発明者は誰といったばあい、必ず名前が挙がるのはオランダの眼鏡
 技師リッペルスハイ。なぜ彼の名前が挙がるのかというと、彼が1608/10/02
 には望遠鏡を作っていたことが記録として残っているからです。

◇リッペルスハイ、望遠鏡を作る
 リッペルスハイは眼鏡技師。
 ある日のこと、彼は磨いたレンズに傷や曇りが無いかを点検していました。
 その点検作業の中、偶然に二枚のレンズを並べて同時にこれをのぞきました。
 そしてビックリ。偶然のぞいたレンズには、遠くの教会の屋根が大写しにな
 って見えていたのでした。

 偶然の発見に驚きつつもリッペルスハイは、様々なレンズの組合せを試し、
 上手くいったレンズを中空の筒の両端に取り付けて、遠くのものが大きく拡
 大される様を楽しみました。リッペルスハイの望遠鏡誕生です。

 リッペルスハイはこの望遠鏡を店に訪れる人達にものぞかせたところ、評判
 となり、リッペルスハイの店は町一番の人気の眼鏡屋になりました(当時、
 どれくらいの眼鏡屋が有ったか・・・なんて聞かないでくださいね)。

◇リッペルスハイ、望遠鏡独占製造権を申請す
 1608/10/02、リッペルスハイはオランダの皇太子に彼の作った望遠鏡を献上
 し、同日、政府に30年間の望遠鏡独占製造権を申請したのでした。
 この申請によって、少なくともリッペルスハイはこの日までには望遠鏡を作
 っていたことがはっきりしたわけです。

 ほんのタッチの差ですが、同じオランダのメチウスというレンズ研磨工も同
 じような望遠鏡の特許申請をしています(1608/10/17)。

◇本当は・・・
 リッペルスハイやメチウスは独占製造権や特許権を申請したことで、その日
 付がはっきりしますが、多分そうした申請をしなかった人もいたでしょう。
 例えば、リッペルスハイと同じ町で眼鏡屋を開いていたヤンセンは、じつは
 1604年頃には望遠鏡らしきものを作っていたとも云われており、リッペルス
 ハイはヤンセンのアイデアを盗んだのだなどともいわれています。

 また、これより早い時期にイタリアには既に望遠鏡が有ったという噂もあり、
 さらにはこの時代より 300年も前に、イギリスのロジャー・ベーコンが望遠
 鏡を作ったという説もあります。彼の著作物に二つのレンズを適当に組み合
 わせると、遠くのものが近くに見えると書かれていることが根拠だそうです。

 今となっては、最初に作った人が誰かということは、はっきりしないという
 のが本当のところなのです。
 望遠鏡を誰が最初に発明したのかはっきりしないのは記録に残されていない
 ということが問題では有るのですが、実は

  望遠鏡の構造が単純すぎて、偶然に生まれてしまう可能性が高い

 という問題もあるのです。

◇リッペルスハイの望遠鏡独占製造権、却下される
 リッペルスハイが自信をもって申請した望遠鏡独占製造権ですが、結果は残
 念ながらあっさりと却下されてしまいます。その理由は、

  あまりにも多くの人がこの発明のことを知っている

 ということでした。構造が単純なだけに、適当なレンズを 2枚組み合わせる
 と出来てしまう望遠鏡に独占製造権なんて認められないというわけです。
 リッペルスハイからわずかに遅れて特許申請をしたメチウスの申請もまた同
 じく却下。残念でした。

◇望遠鏡の噂を聞いて、自分でも作ってみた有名人
 この、誰でも作れる「望遠鏡」の噂を聞きつけた科学史上の有名人がイタリ
 アにおりました。その人の名はガリレオ・ガリレイ。

 「噂で聞いた」というのは実は嘘で、フランスに住んでいた昔の弟子が、ガ
 リレオ先生に望遠鏡のことを書いた手紙を送ったというのが本当の話です。

 手紙で望遠鏡の構造を知ったガリレオ先生は、早速自分でも望遠鏡を作って
 みました。こんな風にして望遠鏡を作ったひとはガリレオ以外にもきっと沢
 山いたのでしょうね。ただそうした多くの人とガリレオ先生はちょっと違っ
 ていました。その違いとは、ガリレオはただ遠くの塔や風景を見て喜ぶだけ
 でなく、この望遠鏡を空の天体に向けたということでした。

 ガリレオが望遠鏡を天体に向けた瞬間に、近代天文学は幕を開けたといって
 も過言では有りません。
 そして、近代天文学の歴史とともに望遠鏡の歴史もつづいてゆくわけですが、
 続きの話はまた何れかの日のためにとっておくことにして、望遠鏡の日であ
 る10/2のこぼれ話はここまでといたしましょう。


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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