日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■干支は「えと」、十二支も「えと」?
【干支】(えと)
(「兄え弟と」の意)
1.十干十二支。十干を五行(木・火・土・金・水)に配当し、陽をあらわす
兄(え)、陰をあらわす弟(と)をつけて名とした、甲(きのえ)・
乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つち
のと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)
に、十二支を組み合わせたもの。
甲子(きのえね)・乙丑(きのとうし)など60種の組合せを年・月・日に
当てて用いる。
2.十二支。年、特に生年や方位・時刻に当てる。
「今年の干支は丑(うし)だ」
《広辞苑・第六版》
いきなりコトノハ風に始まりましたが、ここは暦のこぼれ話です。
干支と書いて「えと」と読む、あるいは十二支を「えと」というのはなぜだ
ろう、そんな疑問を持ったことはありませんか?
無いと言われてしまうと話が続かないので、ひとまず皆さんそうした疑問を
持ったことがあるとして、本日は話を続けます。
◇干支・十二支で「えと」と読む謎
「ことしの干支(えと)は、うさぎです」(← 2011年の例)
現在の干支の使い方としては、こんな例が一番多いのでは無いでしょうか。
辞書の説明では 2の十二支(じゅうにし)に当たる使い方です。
えと = 十二支
だと思っている方も多いのでは?
ですが、普通に考えて「十二支」を「えと」と読むことは難しい。
もっとも「干支」と書いて「えと」と読むのも難しいですけど。
辞書の説明の最初にもあるようにこの「えと」という読み方は「兄弟」から
来ているわけです。
◇十干と兄(え)弟(と)
辞書の説明 1のとおり、干支とは十干十二支の略。そのうちの十干を陰陽五
行説に当てはめて説明すると
甲(木の兄)・・・癸(水の弟)
のようになります。この「兄」と「弟」が陰陽説でいう陽と陰を表した言葉。
十干はちょうど五行(木・火・土・金・水)の種類の倍の数ですから、五行
をさらに陰陽の二種に分割して説明するとちょうど具合がよいので、本来は、
十干の「甲」とか「乙」の性質を陰陽五行説で表した「木の兄」「木の弟」
の読みそのもので元々の十干の読みまで表すようになってしまいました。
「甲」の一文字で「きのえ」と読む不思議な読み方はこうして生まれました。
ちなみに、十干の陰陽と五行を見てみると
陰陽・・・陽:甲丙戊庚壬 陰:乙丁己辛癸
五行・・・木:甲乙 火:丙丁 土:戊己 金:庚辛 水:壬癸
となります。兄弟と関わりのある陰陽に着目すると甲乙丙丁戊己庚辛壬癸は
陽陰陽陰・・・、つまり兄弟兄弟・・・と並ぶことからいつしか十干は兄弟
(えと)と呼ばれるようになりました。
◇十二支と兄(え)弟(と)
十二支は元々は暦月の順番を表す一種の数詞です。
陰陽五行説は陰陽と五行によって森羅万象全てを説明しようとした説ですの
で、十二支もその例に漏れず陰陽五行説で次のように分類されます。
陰陽・・・陽:子寅辰午申戌 陰:丑卯巳未酉亥
五行・・・木:寅卯 火:巳午 土:丑辰未戌 金:申酉 水:子亥
さて、ここでひとまず五行の方は置くとして、陰陽の方だけに着目してみて
下さい。
「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」の陰陽を見てゆくと、陽陰陽陰・・・と交互
に陰陽が割り振られているのがわかります。つまり兄弟兄弟・・・と繰り返
されることから十二支もいつしか、「えと」と呼ばれるようになりました。
◇干支は「えと」と「えと」の組合せ。
干支の構成要素である十干も十二支も「えと」ならば、両方合わせた干支も
いつしか「えと」と呼ばれるようになり、普通では考えられない
干支 = えと
という読みが定着してしまったというわけでした。
干支も十二支も(影が薄いですが十干も)いずれも別名は「えと(兄弟)」
になってしまったという話でした。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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