日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■麦秋至る 2011
もうすぐ七十二候の一つ「麦秋(ばくしゅう)至る」の時候となります。
麦秋の頃とは陰暦の 4月頃、現在の 5月〜 6月。
今年の日付では 6/1がこの時候のはじめとなります。
麦秋至るという言葉は「礼記」の「月令」に既に見えている言葉ですから、
二千年以上も昔から、使われてきた言葉です。
季語としては「夏」に分類される語です。
日本でも立春から数えて 120日目辺り( 6/4頃)が麦刈りの目安だそうです
から、麦秋至るは二千数百年の時を超えて、また中国と日本という地域の違
いも超えて生き続ける息の長い言葉です。
「秋」という言葉が入っていますが、秋は百穀物・百果実の実る季節です。
麦秋の「秋」はこの「収穫の時」を意味する言葉として使われています。
四季で言うところの季節では初夏ですが、この時期は麦の実る時期ですから
収穫の時を表す秋という言葉と麦を組み合わせて「麦秋」と言い表したわけ
です。
麦秋はまた「麦の秋(むぎのあき)」とも読みます。
意味としては同じですが、「ばくしゅう」と読むと麦を収穫するのどかな風
景を想像するのに対して、「むぎのあき」と読むと、なんだか物淋しい感じ
がします(私だけ?)。木々の葉が落ち冬に向かう季節という意味を「秋」
に感じるためでしょうか。
◇麦の秋さびしき貌の狂女かな
蕪村に
麦の秋さびしき貌(かお)の狂女かな
という句があります。
麦秋至るの頃は普通の年であれば梅雨入りの少し前。
麦を育てる農家にとっては梅雨に入る前に麦の刈り入れを済ませてしまいた
いところでしょうから、この頃は大忙し。
猫の手も借りたいくらい忙しく、からかう者もなくなく、誰からも相手にさ
れない狂女の様子を詠んだものなのでしょうか。
初夏の陽射しの下の一面の麦の実りの風景の中に立つ、寂しげな狂女の姿が
浮かんできます。
◇今年は?
今年は梅雨入りが早く、もう既に関東あたりまで梅雨入りした模様とのこと。
早すぎる梅雨入りで、梅雨入り前の麦刈りの予定が狂ってしまったかも知れ
ませんね。
今は一面の麦畑という光景を目にすることは希になりましたから「麦秋至る」
という言葉には「のどかさ」も「物淋しさ」も感じることが無くなってしま
ったかもしれません。いつか
なぜこの時期に、「秋」なんだ?
という不思議な思いだけが残る言葉になってしまうかも知れません。
そうなってしまったら、それもなんだか淋しい話ですね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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