日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■乞巧奠(きこう でん)
今日は七夕の日。
乞巧奠とは、この七夕の日に行われる七夕行事の一つです。
◇乞巧奠とは
乞巧奠は「きこうでん」あるいは「きっこうでん」と読みます。
奠は「てん」と読む文字で、神仏に物を供えて祭るという意味を持ちます。
私たちに比較的なじみのある言葉としては「香奠(こうでん)」などがあり
ます。ただし、現在はこの「奠」に替えて「香典」と書かれることが多いの
で、結局はほとんど目にすることのない文字ですね。
この「奠」がついた乞巧奠はどんな行事かというと、文字通り意味を考えれ
ば、
巧を乞うて神仏を祭る行事
ということになります。
巧を乞うとは?
◇七夕の夜には月明かりの下で針に糸を通す
乞巧奠行事は中国から伝わった行事で、女性が手芸の上達を願うものでした。
古い時代の中国では七夕の夜には女性たちが外へ出て、月の光の下で針に糸
を通したそうです。
月の光は明るく思えますが、実際に試してみると案外月明かりは頼りない明
かりですから、きっとなかなか針に糸は通らなかったと思います。
何度も何度も挑戦することになると思いますが、その挑戦の結果見事に針に
糸が通ると
巧みを得た
といって喜んだといいます。
これは七夕の主役、織女と牽牛の織女が手芸の神と考えられていたからです。
織女は牽牛と逢える七夕の日以外は、せっせと機織りしているわけですから、
手芸の神と考えられるのは当然といえば当然でしょう。
七夕はその手芸の神様、織女が牽牛と逢えるめでたい日ですから、この日に
祈ればきっと願いを叶えてくれると考えられたのでしょう。
この「手芸」はやがて機織りや裁縫といったものだけでなく、文字や和歌と
いった手習い全般の意味に拡大されて、乞巧奠はそうした手習事全般の上達
を願う行事となりました。
あの笹に飾る短冊も、文字や和歌の上達を願って自ら書いたものを供えたも
のであったわけです。
◇七夕は月夜?
乞巧奠行事として、古くは七夕の夜には月明かりの下で針に糸を通すという
行為がなされたと書きました。
ここで一つ問題。
七夕の夜はいつも月が出てくれていたのか?
答えは、「いつも月夜でした」ですね(もちろん晴れていればですけど)。
これはなぜかといえば、それは皆さんも既にお気付きの通り、暦の仕組みか
ら自明のことなのです。
七夕の行事が生まれ、広がった時代の暦といえば月の満ち欠けに基礎をおい
た太陰太陽暦でしたから、七月七日の七夕の夜は、新月から数えて 7日目の
日。新月から数えて 7日目というと、上弦の半月の日かその前日となります。
ですから七夕の行事が行われるこの日には、日暮れの時間には上弦の月が南
の空の高いところに輝いていたことになります。
現在の七夕の行事は現在使われている暦(いわゆる新暦、太陽暦)の 7/7に
行われることが一般的になりつつありますから、残念ながら七夕の夜には常
に月があるという関係は崩れてしまっています。
今年(2011年)に限れば、偶然ですが 7/1が新月でしたから 7/7は新月から
数えて七日目。古式ゆかしい七夕の夜と条件は同じになり、空には上弦の月
がかかっていることになります(天文学的な意味の上弦の半月は翌日の 7/8
です)。
さあ今夜、七夕。そして昔のように上弦の月が空にかかる夜。
ものは試しです。今夜見事に晴れたなら、月の光の下での針への糸通しに挑
戦して見るというのはいかがでしょうか? そして見事に
巧みを得ました
という方がいらっしゃいましたら、是非その旨をお知らせください。
何はともあれ、今夜は晴れるといいですね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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