こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■赤鼻のトナカイ、ルドルフ
 本日はクリスマスイブ。

 クリスマスについてのありがたい話は、きっといろんなところに書いてある
 でしょうし、解説を耳にすることも多いと思いますので、そうした高尚な話
 は「高尚」が似合う方々にお任せすることにして、地べたを走り回るかわう
 そとしては、クリスマスの高尚な話の下に落ちているどうでもよさそうな話
 を拾ってみることにしました。拾ってきた話は、赤鼻のトナカイの話です。

◇赤鼻のトナカイとサンタクロースの関係
 クリスマスイブに世界中の子供たちにプレゼントを配るサンタクロースの橇
 を牽くものといえば、赤鼻のトナカイ。その名はルドルフ。
 この赤鼻のルドルフがサンタクロースの橇を牽くようになった切っ掛けとな
 った話は以下のようなものです。ご存じとは思いますが、一応確認のため。

 トナカイのルドルフは、真っ赤に輝く鼻を持ったトナカイ。
 他のトナカイと違うこの真っ赤な鼻のため、ルドルフはずっと仲間たちにか
 らかわれ、笑いものにされていました。ルドルフは仲間と違う自分の赤い鼻
 がはずかしくてなりませんでした。

 そんなルドルフのもとへ、ある年のクリスマスイブにサンタクロースが訪れ
 たところから、赤鼻のルドルフは、一躍世界一のトナカイとなりました。

 世界中にプレゼントを配らなければならないサンタクロースですが、その年
 のクリスマスイブは霧が深く、サンタクロースがプレゼントを配るべき家々
 を探すことが出来なくなっていたのです。
 その困っていたサンタクロースの目にとまったのが、ルドルフの家から漏れ
 てくる赤い光。ルドルフの赤鼻の発した光でした。

 サンタクロースは寝ていたルドルフを起こし、自分の橇を牽いてくれるよう
 に頼みました。その輝く鼻の光で行く手を照らし、通りの名前や番地を読み
 取れるようにして、サンタクロースを待つ子供たちのもとへ確実にプレゼン
 トを届けようと云うわけです。ルドルフはサンタクロースの橇を牽くことを
 快諾し、おかげでサンタクロースは無事にプレゼントを届けることが出来ま
 した。

 サンタクロースはこの危機を救った赤鼻のトナカイのルドルフを世界一のト
 ナカイと褒め、以後は毎年ルドルフがサンタクロースの橇を牽くことになり
 ました。ルドルフがはずかしいと思っていた生まれつきの赤鼻は、この日か
 らルドルフの誇りとなったのでした。
 目出度し目出度し。

◇ルドルフは通信販売会社の配達担当?
 深い霧のよるでも赤い光だとよく見えるとは、なんと科学的なことか。
 赤い光は可視光線の中では最も波長の長い光ですから、霧の影響を受けにく
 いわけですね(物語の作者がそんなことを考えて「赤鼻」にしたとは思えな
 いですけど)。

 なぜトナカイのルドルフの鼻が赤い光を発していたのか?
 気になるところですが、そうした疑問は追求しないのが「大人の対応」とい
 うものでしょうか。
 さて、この心温まる物語が生み出されたのは1939年のことでした。この物語
 を書いたのはかの有名なロバート・L・メイです。

  ? 誰、その人? 聞いたこと無いけど?

 そんな声が聞こえてきた気がします。あんまり有名じゃ無いかな?
 実はこの童話を書いたメイさんは、童話作家ではありません。どんな仕事を
 していたかというと、アメリカの通信販売会社モンゴメリーウォード社の宣
 伝広報部員だったのです。

 モンゴメリーウォード社では1939年のクリスマスキャンペーンの目玉となる
 動物物語を作ろうと、メイにこの物語作成を命じたのでした。そして生まれ
 たのが赤鼻のトナカイ、ルドルフの物語。
 モンゴメリーウォード社はこの年の秋にこの物語を 250万部印刷し配布して
 広めました。

 コンプレックスを抱いていたものが、一転してヒーローに。なんだかアメリ
 カの人たちが大好きなストーリーって感じですね。それに賢い(ルドルフが
 そうかどうかはちょっとわかりませんけど)動物が危機に陥った人を助ける
 なんていうところも、一般受けしそうです。

 こんな経緯を考えると、ルドルフの牽く橇にはきっとモンゴメリーウォード
 社の通販商品が満載されているのでしょうね。ついでに、次回のために通販
 カタログも入っていたりして・・・。

 もし同じ事を現代日本で行ったとしたら、主人公は赤鼻のトナカイではなく
 て、黒い猫だったり、荷物を担いで走るちょんまげ姿の飛脚だったりするん
 でしょうね。
 まあ、猫や飛脚が橇を牽くっていうのはちょっと想像できない光景なので、
 物語自体は大分工夫が必要でしょうけれど。

 心温まる赤鼻のトナカイの物語ですが、実はアメリカの商業主義が生み出し
 た物語だったという、微笑ましい(?)今日のこぼれ話でした。


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