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■旧暦の月の大小の並び・・・その2
前回、謎を残したまま終わった「旧暦の月の大小の並び」、本日はその続き
をお届けします。
◇前回のおさらい
忘れられているかもしれませんから、まずはおさらいです。
もし旧暦の暦月の一日(朔日)を決める朔(新月)の瞬間を月の満ち欠けの
周期の平均の長さ、平均朔望周期で求めるのなら、旧暦の暦月の大小は
小・大・小・大・小・・・(たまに)大・大・・・(再び)小・大・・・
と「(たまに)」の部分を覗けば規則的に小の月と大の月が交互に並ぶはず
です。「(たまに)」の部分も32〜33ヶ月に 1度程度ですので、案外規則的
でわかりやすいことになります。しかし現実の旧暦の暦月の大小は
旧暦2012年の例 大・小・大・大・大・小・大・小・小・大・小・大・小
のように、規則的とは云えない並びになっています。
さてこうなる理由は?
前回のおさらいはここまで。これから先が本日の話です。
◇旧暦の朔は平均の周期の朔か、実際の朔か?
前段で説明した平均の月の朔望周期で朔(新月の瞬間)を決める暦を平朔の
暦と呼びます(平朔=平均の朔望周期の朔)。正確な観測を行う技術が不十
分であった時代の太陰暦はこの平朔の暦でした。
天体観測の技術が向上してくると、月の朔望周期がこの平均より短かったり
長かったりすることがわかってきました。実際の月の朔望周期を個別に見て
行くとその長さは約29.27〜29.83日で変化するのです。
この程度の差は、実際の生活にはさして実害は無いのですが、空を見上げる
と、ちょっとした問題が発生することがあります。それは、日食です。
ご存じのとおり日食は朔(新月)の時にしか起こらない天文現象です。その
上、日食はとっても目立つ天文現象でもあります。
太陰暦は暦月の始め、朔日はその名の通り朔の日のはずなのに、朔にしか起
こらない日食がその朔日でない日、前日の晦日や翌日の二日に見られること
があると
この暦って、間違ってんじゃないの?
ということになります。
この暦月の朔日以外に日食が起こらないようにするためには、平均の周期で
朔を求める平朔の暦ではなくて、実際の朔の瞬間を暦の朔日にするという暦
が必要となります。この実際の朔の瞬間(とは云っても計算で求めるのです
が)を使って作られた暦を定朔の暦と云います。
現在、旧暦と呼ばれる暦は定朔の暦ですので、暦月の長さを決める朔と朔の
間隔は、その時々で異なっており、その影響で大の月が連続したり、逆に小
の月が連続したりと云ったことが起こってしまうのです。
◇なぜ「実際の朔」にこだわるのか?
中国やその影響を受けた日本では日食の日はお役所は物忌みの日として、執
務を取りやめる風習がありました(もちろん昔の話で、現在はそんなことは
ありません。ちょっと残念?)から、日食が暦の朔日以外に起こることは、
日食なんかに興味の無い人にとってもその社会生活において困った問題を引
き起こします。
庶民の迷惑だけならまだしもですが、暦月の朔日以外に日食が起こるなんて
云うことは、支配者にとっては更に大きな問題をはらんでいます。
中国や日本では国の君主を「天子」と呼びました。この天子ですが
【天子】(てんし)
1.(天帝の子の意)天命を受けて人民を治める者。国の君主。
2.天皇。
《広辞苑・第六版》
という意味があります。1 の意味を見ると「天帝の子」と有ります。つまり
天子は地上の支配者であるばかりでなくて、天の支配者でも有るのです。
天の支配者が作る暦が天で起こる現象(この場合は日食)をはずすなんて云
うことが、有ってはならない。となると実際の朔、定朔の暦にこだわらざる
を得ないことになります。
◇定朔の暦の弊害、「四大三小」
定朔の暦が正式な暦として採用されたのは、中国では唐の時代。西暦 619年
のことでした。
これによって、日食が晦日や二日の日に起こることは無くなりましたが、そ
の影響としてそれまでは比較的単純だった大小の月の並びが狂ってしまうよ
うになり、大の月が 4回連続する「四大」や小の月が 3回連続する「三小」
なんて云うことが有るようになってしまったのでした。
ただし、四大や三小ほど極端な例は少なく、最後の四大は1831年に、三小
は1885年に現れて以後は、暦にこんな極端な連続の例が現れたことはありま
せんでした。
これほど極端でない三大などの例なら数年に一度は発生します。本日の説明
の冒頭で月の大小の並びの例として登場した2012年も「三大」の年でした。
こうしたやや異常と思える大小の月の連続の登場には、一定の法則といえる
ような規則性がなくて、それこそ「暦を作ってみるまでわからない」といっ
た具合になっています。
「日食は朔日に起こるもの」
このこだわりが、旧暦から分かりやすさ、規則性といった利便性を奪ってし
まったようです。
ああ、めんどくさいこと・・・。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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