日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■一月は将来も冬なのか? 歳差と季節の話(2)
間が二日空いてしまった、歳差と季節の話、ようやく(2)です。
前回の話で、地球の公転面である黄道面と自転軸に直交する面である赤道面
が23.4°傾いていることによって地球上には季節の変化が生まれたことと、
巨大な独楽(こま)のように自転する地球は、独楽の回転軸(地球の例で云
えば自転軸)に外から力を加えるとゆっくりと独楽の回転軸はスリコギの棒
のような回転運動を始めるように、地球の自転軸も約 26000年でゆっくりと
スリコギ運動をしているのだという話をしました。
この地球の自転軸のスリコギ運動(歳差運動)のために今から 12000年先に
は、七夕の織り姫星として知られること座のベガが北極星と呼ばれることに
なっているかもという話しもしてきました。
この話の切っ掛けは、この歳差運動のために自転軸の向きが変わっていって
しまったら、現在は冬至付近にあって冬である一月が、例えば 26000年の半
分、 13000年後には、夏至が一月付近に移ってしまって「一月は夏」という
時代が来るのかというokushin2さんの御質問でした。
さてどうなるのでしょうか。
地球の季節は黄道面と赤道面が23.4°傾いた状態で太陽の周りを公転してい
るために生まれています。このため季節の変化の周期の一年は、地球が太陽
の周りを公転する周期と一致することになります。
◇一年の長さ
地球が太陽の周りを一周する周期が一年だと云うことは皆さんご存じの通り
ですが、この「一周する」ってどういうことでしょうか?
「スタート地点に再び戻ることさ」
「太陽の周りを 360°回転することだよ」
当たり前のことですけれど、 360°回転したことを測ったり、スタート地点
に戻るったことを知るためには、どこがスタートなのかを知るための印が必
要です。何らかの方法でスタート地点を決めないと一年の長さも測れません。
「地球は太陽の周りを公転している惑星である」なんて云うことは夢にも知
らなかった大昔のご先祖様たちですが、それでもこの公転運動のために生ま
れる、ある周期的な変化に気がついていました。それは、太陽の南中(真南
に見える瞬間。南半球にお住まいの場合は北中と読み替えてください)時の
太陽の地平線からの高度角の変化です。
冬のある日、太陽の南中高度は、もうこれ以上下がりませんというところま
で低くなり、それから日を追うごとに南中高度を上げていって、夏のある日
に、もうこれ以上上がりませんという高さに達して、以降はまた下がり始め
ます。
私たちはこの説明に登場した冬のある日を「冬至」、夏のある日を「夏至」
と呼んでいます。こうした太陽の南中高度の変化は、地球が黄道面と赤道面
の23.4°の傾きを保ったまま太陽の周囲を一周するために起こる現象です。
この現象に気がついたご先祖様たちは、一年の長さを測る起点としてこの冬
至や夏至の日を使うことを思いつきます。
冬至から次の冬至までの長さが、一年の長さだ
という具合です。こうして測られてきた一年が、私たちが使っている一年の
長さです。現在はこの一年を太陽年とか、回帰年とか呼んでおり、
1年(太陽年) ≒ 365.2422日
という長さを得ています。
ところが、天文学が発達し、観測データも蓄積されてくると、冒頭で説明し
たスリコギ運動、歳差の存在に気がつきました。黄道面と赤道面の傾斜角は
23.4°のままなのですが、この傾斜を保ったまま赤道面は黄道面に対して
26000年かけてゆっくりと回転していたのです。
◇一年の別の基準
一年で周期的に変わるものを使って一年の長さを測ると云うことで、太陽の
南中高度以外に何かいいものは無いか?
思い出してみて下さい、
オリオン座は冬の星座で、さそり座は夏の星座
なんて云いませんでしたか?
そうです、同じ時刻に星空を見続けると、星座の星々も一年で天球を一周し
ているように見えるのです。この星座の星々を目印にして一年を測ることが
出来そうです。この星(恒星)が同じ時刻に同じ位置に見える瞬間を測るこ
とによって得られた一年は恒星年と呼ばれ
1恒星年 ≒ 365.2564日
という長さが得られています。
◇二つの一年の長さが違う?
ここで二つの一年、太陽年と恒星年の長さに違いが有ることに気付きません
か(気付いて下さい)?。
ほんの少し(0.0142日)ですが、太陽年の方が恒星年より短いのです。
このほんの少しの差の数字で一年の日数を割ると・・・その答えは歳差運動
の周期の年数、 26000という数字になります。そう、この一年の長さの違い
は歳差が私たちの「一年」の長さに及ぼした影響なのです。
okushin2さんの御質問の答えを解く鍵は、この一年の長さの差にあるのです
が、本日も予定外に説明がながくなってしまったので
「謎解きは明日の朝食の後で」 ← 何かをパクっているような?
と致しましょう。
皆さんも、それぞれにこのヒントを元にokushin2さんの疑問の答えを考えて
みて下さい。
ではこの続きは、今度こそ明日のこぼれ話で。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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