日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■暦注の話・・・神吉日(かみよしにち)
本日は久々の暦注の話です。
今回採り上げた暦注は「神吉日」。
◇神吉日
神吉日は「かみよしにち」あるいは「かみよしび」と読み、暦の下段に書か
れるときには「神よし」などと省略されることが多い日本独自の暦注です。
この日がどんな日かというと、
「神事、祭礼、遷宮、祈願など神事に関して万事において吉」
とされています。神事の吉日で「神吉日」、なるほど読んで字のごとし。
暦注というととかく「この日は××に凶。行えば禍を招く」のような凶日を
示すものが目立つのですが、神吉日は珍しく吉日の暦注。
これは目出度い。いい日なら沢山あったほうが嬉しいな・・・。
◇神吉日の撰日法
昔々は、神吉日は「神上吉日」「神中吉日」「神下吉日」の三種類があって
それぞれに異なる撰日法があったそうですが、貞享暦(ベストセラーになっ
た「天地明察」で脚光を浴びた渋川晴海の作った大和暦のことです)以降は
ひとまとめになって日の六十干支によって割り振られるようなっています。
日の六十干支のどの日が神吉日になるかというと、次のとおり。
乙丑,丁卯,己巳,庚午,壬申,癸酉,丁丑,己卯,壬午,甲申,乙酉,戊子,辛卯,
甲午,丙申,丁酉,己亥,庚子,辛丑,癸卯,乙巳,丙午,丁未,戊申,己酉,辛亥,
壬子,乙卯,戊午,己未,庚申,辛酉,癸亥
一気に書くには骨の折れる量です。
書くのも大変ですし、読む方も大変。いくつあるかというと、なんと33もあ
ります。
六十干支というくらいで、干支の組み合わせは全部で60とおり。そのうち33
が神吉日。
33/60 = 55%
全日数の 55%。つまり 2日に 1度以上の割合で「神吉日」がやってきます。
「いい日なら沢山あったほうが嬉しいな」と書きましたが、ここまでくると
ちょっと多すぎる気もしてきます。
試験前に教科書にどんどんアンダーラインを入れていったら、いつの間にか
半分以上にアンダーラインが入っていて
これなら、アンダーラインが無いのと同じじゃないか?
と思えてくる状態に似ている。
ここまでするなら、「毎日が神吉日」としちゃえばいいのに。まあ、そうな
ったらありがたみはゼロかもしれませんが(現在の撰日法でも十分ゼロに近
い?)。
◇その割には少ない暦の上の神吉日
こんなに多い神吉日ですが、その割には暦の下段という場所に書き込まれる
ことが少ない暦注です。
その理由は「神吉日が特に悪い日と重なる場合は書き入れないことがある」
としているかららしい。
ところが、凶日と重なったら全て書かないというわけでもないようです。暦
注の凶日は種類も多くて沢山ありますから凶日と重なったら書かないと決め
てしまったら、神吉日の出番がなくなっちゃうかもしれません。それだから
「書き入れないことがある」なんでしょうか。
この辺の理由は理解できるとしても、理解できないのが
どの凶日と重なった時には書かず、どの凶日だったら書くのか
という規則が無いことです。
暦注の規則を調べていくと、度々こうした不明確な事柄に行き当たります。
これ以上は「占術家毎の秘伝」ということになるのでしょうか・・・。
この逃げ口上を、どうもいい加減だななんて云わず
「ああ、暦とは何て奥が深いのだ!」
と(心にも無い)感嘆の言葉に替えて、今日の暦のこぼれ話は締めくくるこ
とにいたします。
本日は神吉日、さあ神様に何か祈願することはなかったかな?
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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