日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■納めの縁日と年の市
師走も半ばを過ぎ、今年も残り日数がわずかになってきました。
神社仏閣の縁日もこの頃になると一年最後の縁日、「納めの縁日」となりま
す。
◇縁日(えんにち)とは
縁日とは、神社仏閣に祀られる神仏が降誕した日とか、示現した日といった
その寺社にとって特別な意味のある日、「有縁日(うえんにち)」のことで
す。よく知られた縁日としては、 5日の水天宮の縁日、8日,18日の観音様の
縁日、21日の大師様の縁日、25日の天神様の縁日、28日の不動様の縁日など
があります。
この縁日には、それぞれの寺社で祭典や供養が行われることが多く、この日
に寺社に参詣すると特別大きな功徳があるとされました。そのため毎月この
日になると多くの参詣人がそれぞれの神社仏閣に集まりました。
さて、人が集まれば当然その人出を目当てにした商売が始まるわけです。こ
うして縁日に集まる人に物を売るために始まったのが縁日市です。
今では「縁日」というと、もともとの意味ではなくて、この縁日市を指すの
だと考えてしまう方が多いようです。
◇納めの縁日と年の市
一年最後の縁日のことを納めの縁日と云います。
例えば今日は今年最後の18日。
18日は、観音様の縁日ですから、12月18日は今年最後の観音様の縁日、「納
めの観音」ということになります。
有名な寺社の縁日には縁日市が立ちますが、一年最後の縁日となる納めの縁
日の縁日市は普段の縁日市以上に賑わいます。また、年越しを控えた最後の
縁日市ということもあって、年越しに必要な品々や縁起物が売られるように
なり、いつしか「年の市」などと呼ばれるようになりました。
年の市の中でも特に有名な浅草、浅草寺の羽子板市(12/17〜19) も、もと
もとは「納めの観音」の縁日市が始まり。その始まりは近郷近在の人たちが
集まって年越し用品を売ったり買ったりした素朴な市だったようです。
そんな素朴な地元の縁日市だったものから、次第に有名になって、元になっ
た寺社の「縁日」の枠に収まりきらなくなった年の市も多いようで、年の市
がなぜ、神社仏閣の門前で行われるのだろう・・・と、ある意味、本末転倒
した疑問を持つ方も多いようです。
◇年の市がいっぱい?
縁日と縁日市、そして年の市の関係を説明してきましたが、それにしても、
縁日の多いこと。最初に挙げた縁日だけでも一月に 6日分あります。
縁日はこれだけではありません。全国区では無いが、地方ではよく知られた
縁日なんて云うのもきっとあるでしょうから、そう考えると、縁日の数はか
なりのもの。
ふつうの月であれば、全部の縁日が賑わうわけでは無いでしょうけれど、流
石に納めの縁日である年の市はどこも賑わいを見せます。
でも、年越し用の雑貨や縁起物を買うにしては、数が多すぎるような?
このあたりの謎は、縁日市といえば沢山並ぶ楽しげな露店や見せ物小屋(今
はほとんど無くなってしまいましたが)などの類の存在を考えれば解ります。
つまり縁日市は、人々の娯楽の場、行楽の場所だったのです。
現在なら、一年中営業しているディズニーランドやUSJなんていう楽しい
場所がありますが、そんなものが無かった時代には、こうした縁日市に出か
けて、露店をのぞき、面白そうな見せ物小屋に入ってみることが手軽な娯楽
だったのです。それも、ただ遊びに行く訳じゃなくて、
神仏に参詣する
なんて、真っ当(に見えそう)な言い訳までありますから有り難い。
そうした縁日市の中でも、特に賑やかな年の市なら、
今週は観音様、来週は御大師様に
なんて感じで、いくつも巡り歩くのも楽しいことだったのでしょう。
神社仏閣にしても、こうして人々が集まってくれるのは有り難いことです。
となると、異なる寺社に立つ年の市が同じ日になってしまっては「客の奪い
合い」となってよろしくない。
そこで、隣接する寺社では年の市の日が他と競合しないように、日取りを組
み直して調整するようなことも行われました。こうしてもともと多かった年
の市の立つ日は、さらに増えてしまったのです。
神仏の功徳より、まずは現実の利益が大切。いえ、神仏に参詣しやすいよう
にして善男善女を集めるための、これも方便の一つですかね?
今は昔ほど多くの縁日市はありませんが、年の市だけは、まだまだ結構な数
があります。
そんな年の市の喧噪の中に身を置くと、何となくウキウキしてしまうのは、
こうした市が娯楽であった頃の名残が、市のどこかに残っているためでしょ
うか。
これから十日と少々。まだいくつも年の市が立ちます。
そんな年の市に出かけるという方も多いと思います。
そのときに「そうか、もともとは縁日市が始まりか」なんて、今日の暦のこ
ぼれ話を思い出して頂けると嬉しいです。
あ、年の市にお出かけの際には、是非、その様子をメールで、写真で、この
日刊☆こよみのページに送って下さいね!
(送り先は magazine.std@koyomi.vis.ne.jp )
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
日刊☆こよみのページ スクラップブック