日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■「ユドゥン」と昴(すばる)
6月が近づくと、そろそろ「梅雨」という言葉が気になってきます。
雨が降らないのも困りますが、梅雨の時期のように毎日降られるのはやはり
やっかいですからね。
本州ではまだ先の梅雨ですが、沖縄地方では一足(二足くらいかな?)早く
梅雨の最中です。そんな沖縄地方の梅雨にまつわる話として本日は「ユドゥ
ン」という言葉を採り上げてみました。
「ユドゥン」とは石垣島で梅雨を表す言葉として使われたものだそうです。
「ユドゥン」という言葉の意味は、渋滞するとか、よどむという意味がある
そうです。
よどむ → ユドゥン
でしょうか。発音は近いですから、言葉が変化したもののように思えます。
さて、このユドゥンには他にも「休む」という意味が有るそうです。
よどむとか、停滞する状態を「休んでいる」と見る考えは理解出来ますね。
石垣島での梅雨はこの「休む」と関係有るそうです。
では、梅雨の時期は石垣島では何が「休む」のかというと、それは
昴(すばる)
です。枕草子に「星はすばる」と読まれたあの昴です。
◇「昴」の紹介
昴は、おうし座の M45。プレアデス星団と呼ばれる散開星団です。
地球からの距離は 410光年。およそ 100程の星から成る星団で、秋から早春
にかけてよく見える星です。
肉眼でも5〜7個くらいの星が、小さな北斗七星のようにまとまって見えます。
天体としては大変年齢の若い星々の集団です。
◇昴のお休みとは?
さて、ではなぜ梅雨の時期、昴はお休みなのでしょうか?
答えA:雨が多くて見えないから ・・・ ×(不正解)
答えB:夜の時間帯に見えないから・・・ ○(正解)
昴は、五月の半ば頃になると太陽に近い場所に見えるので、太陽が沈む頃に
同時に沈み、太陽が昇る頃太陽と一緒に昇ってきます。
つまり、5〜6月頃は昼間にしか空に昇らないのです。昼間では空には太陽が
があって明るく、星の姿は見えませんから、昔の人は昴が見えないこの間を
「昴」が休んでいる
と考えたのでしょう。
では、いつ頃からいつ頃までが「お休み」かと思って石垣島(石垣市)での
見かけの位置を計算してみました。
昴が肉眼で見えない条件として、
日出没時に地平線からの高度角が10°以下であること
とすると、この期間は 5/10〜6/1頃ということになります。
これからすると現在、昴はお休み中。人より大分早い夏休み(梅雨休み?)
中です。
◇昴の「ユドゥン」を知っていたころ
我々はなかなか夕方の星の位置など判りません。
ましてや明け方の星となると、この時刻に起きて星を眺めるという人はごく
少数でしょう。
でも農耕や漁労が主な仕事であった時代は、それこそ、
日の出と共に仕事が始まり、
日暮れと共に仕事を終わる
という生活を送ったでしょうから、夕暮れの星や明け方の星を眺めて季節を
感じると言うことが有ったのでしょう。
辺りが暗くなって、畑仕事を終えて家路に向かう頃、西の空には間もなく沈
もうとする昴を見て、ああもうすぐ梅雨の時期だなと思い、一日の仕事を始
めるためにまだ薄暗い早朝に外へ出ると、しばらく目にしなかった昴の姿を
東の空に見つけると間もなく梅雨明けかと感じる。
昴が夜空に「出勤」しない休みの時期を知って、それを「ユドゥン」と呼ん
だ時代。そんな時代があったことをこの言葉が記憶しているんですね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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