日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■海といえば山。海の日に「山の日・川の日」の話
今日は 7月の第 3月曜日。
祝日の「海の日」です。海の日とは、
「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」
という、海洋国日本らしい祝日です。
さあ、今日は海の日。海の恩恵に感謝しつつ、海に親しむ日としようじゃあ
りませんか。
◇海の無い県
しかし、海洋国といわれる日本ですが、どこもかしこも「海」があるわけじ
ゃありません。日本には海岸線を持たない、つまり海と面していない県も有
ります。こうした、海岸線を持たない県を内陸県と呼ぶそうです( 1都1道2
府はみんな海岸線をもっているので、海岸線を持たないのは「県」のみ)。
内陸県は、どことどこ?
さて、地図帳を開いて探してみましょう。
探してみた結果見つかった県は 8つ。
栃木県、群馬県、埼玉県、山梨県、長野県、岐阜県、滋賀県
そして 奈良県
奈良県だけ 2行目に分けて書いたのには理由が有ります。
それは、奈良県だけ孤立した県だからです。
8 つの内陸県のうち 1行目に書いた 7県はそれぞれが他の 6県のどれかと県
境を接していて一続きになっているのですが、奈良県だけは、他の内陸県と
は県境を接しておりません。
さすが、「国のまほろば」と称えられた奈良。
一人、孤高を保っている感じですね。
◇それはさておき、「山の日・川の日」
海洋国日本には数少ない内陸県の中でも、孤高を保つ奈良県。
その奈良県が、内陸県の誇りを賭け(←この部分は、かわうその勝手な思い
込み)作ったのが
山の日・川の日
今日「海の日」は奈良県にあっては、「山の日・川の日」でも有るのです。
◇奈良県山の日・川の日条例
この条例の制定は平成20年 7月11日。
内容を知るために、その条例の一部を抜粋してみましょう。
--------------------------------------
奈良県山の日・川の日条例
(目的)
第一条
この条例は、奈良の山と川が県民をはじめ奈良を訪れる人々にとって共
通の貴重な財産であることにかんがみ・・・中略・・・奈良県山の日・川
の日を設け、もって県民が誇りと愛着を持つことのできる奈良の美しい山
と川をはぐくみ、次世代に引き継ぐことを目的とする。
(奈良県山の日・川の日)
第二条 奈良県山の日・川の日は、七月の第三月曜日とする。
《奈良県条例第九号より抜粋》
--------------------------------------
日付を決めた第二条に、「七月の第三月曜日」とあることから、この山の日
・川の日は毎年、祝日の「海の日」と被ることになります(というか、被せ
たわけですね)。毎年、海の日がやってきたら、
ああ、今日は「奈良県山の日・川の日」だったな
と思い出して下さい。
もちろん「海の日」もたいせつですから、海も山も川も分け隔てすることな
く大切にして、この美しい国を守って行きましょう。
ああ、目出度し目出度し。
◇しかし・・・
さて目出度し目出度しと大団円を迎えた、日本全国の「海の日」と奈良県限
定の「山の日・川の日」の話でしたが、今年はこの話を複雑化させそうな問
題が生まれました。
日本全国の「海の日」と孤高の奈良県の「山の日・川の日」との関係を複雑
化させそうな原因とは、何処かが「湖の日」や「島の日」を作ったと云った
第三の勢力の出現ではありません。なんと新たな「山の日」の出現です。
折角、海のない奈良県が海の日に対して「山の日・川の日」という記念日を
条例まで制定して作ったというのに、その努力を無駄にするような無粋なま
ねを何処かの国(おっと、日本だった)の国会議員さん達がしてしまったの
です。
そう、再来年の2016年からは「山の日」という祝日が出来ることになってし
まいました。
奈良県の作った「山の日・川の日」は祝日の「海の日」と同じく7月の第3
月曜日ですから、新しい祝日「山の日」は奈良県の「山の日・川の日」と同
じ日付となるわけはありません(その日はすでに祝日ですから)。となると
新しく生まれた「山の日」は奈良県の「山の日」の発展形というわけではな
い、別系統の「山の日」。
こうして別系統の「山の日」が登場して、しかもこちらは歴とした祝日とな
ると、奈良県独自の「山の日・川の日」の存在意義は?
海といえば山、「海の日」があれば「山の日」があってもよいかなと作られ
たという気のする、意義のよくわからない後発の「山の日」に名前を奪われ
てしまう(半分だけど)、「山の日・川の日」が可哀想。まったく無粋なま
ねをしたものです(「山の日」制定に批判的なかわうその偏見かな?)。
来年まではまだ良いですけれど再来年の2016年のカレンダーに「山の日」と
いう祝日が書き込まれたとき、奈良県限定の「山の日・川の日」という記念
日は、どうなっちゃうんでしょうね?
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
日刊☆こよみのページ スクラップブック