こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■珍しい閏九月
 朝の気温が、10℃を割り込み一桁となるようになり、そろそろ冬かなと思う
 程になりましたが、そんな寒い朝を迎えた本日は、旧暦では九月の一日。
 旧暦では、九月は晩秋の月。この通りであれば、あと一月は「秋」がつづく
 ことになります。大分寒いですけれど。

◇二度目の九月
 今日は旧暦では九月一日と書きましたが、この九月一日は今年二度目の九月
 一日です。今年は旧暦の九月が二度あります。

  1.新暦  9/24〜10/23 の間(大の月)
  2.新暦 10/24〜11/21 の間(小の月)

 1が普通の旧暦の九月、そして2が二度目の九月で「閏九月」です。
 今年は九月が二度あるため、一年は十二ヶ月ではなく十三ヶ月。一年の日数
 も 384日と長い一年となっています。

◇旧暦の「閏月」
 新暦の場合、閏年というと二月が29日まであるほぼ 4年に一度巡ってくる年
 のことです。新暦の閏年の日数は 366日。閏年以外の平年の日数は 365日で
 すからその差は1日です。この1日のことを「閏日」といいます。

 旧暦の年にも閏年と平年との違いがありますが、旧暦の場合閏年と平年との
 日数の差は1日ではなく1ヶ月。この1ヶ月を「閏月」といいます。

 平年の日数は353〜355日、閏年の日数は383〜385日となります。
 1ヶ月も1年の長さが違うと大変でしょうけれど、旧暦の閏年は、ほぼ3年
 に一度、つまり平年2年につき閏年1年が巡ってくるわけですから、これく
 らい頻繁なら、人間はなれちゃうのかも知れませんね。

 現在「旧暦」と呼ばれる暦は、明治5年まで使われた天保暦がその基本とな
 っています。旧暦の暦月の名前はその暦月に含まれる二十四節気の中気によ
 って定められます。

 二十四節気の中気の間隔は平均すると 30.44日です。これに対して暦月を区
 切る朔(新月)と朔の間隔の平均は 29.53日。これを見ると分かるとおり、
 中気と中気の間隔は、暦月の長さより少しばかり長い。このため、時々(3
 年に1度くらい)、中気と中気の間にはまり込むような形の暦月が生まれま
 す。

 こうした暦月には、暦月の名前をつけるもとになる二十四節気の中気が含ま
 れませんから、この暦月は「名無しの月」ということになってしまいます。
 こうした場合は、その直前の月の名前を踏襲します。

 今回の場合は、直前の月が九月でしたから、今日からは二度目の九月となる
 わけです。ただ、それでは紛らわしくて叶わないので、二度目の月にはその
 頭に「閏」をつけて、

  閏九月

 と呼ぶことになります。
 今回は、九月中気である霜降(10/23)と十月中気の小雪(11/22)の間には
 まり込んだ10/24〜11/21の間の閏月でした。

◇閏月は夏場が多い?
 旧暦のもととなった天保暦は、二十四節気の日付を太陽の黄道上の位置(角
 度)によって定める「定期法」という計算方式をとっています。この方式を
 用いると、一つ困ったことがおきます。それは、二十四節気の長さが季節に
 よって変化してしまうのです。

 閏月と関係する中気と中気の間隔でいうと、冬の時期の冬至〜大寒と夏の時
 期の夏至〜大暑の間を比較すると

  冬至〜大寒 : 約 29.5日
  夏至〜大暑 : 約 31.5日

 のようになっており、夏の方が中気と中気の間隔が広くなります。
 このため、二十四節気の計算に定期が用いられるようになった天保暦からは
 「閏月が夏場に偏る」という問題が生まれてしまいました。
 (この閏月の季節による偏りは天保暦の大きな欠点です)

◇珍しい閏九月?
 さて、今回の閏月はというと、時期的にはほぼ冬の入り口付近。閏月が生ま
 れる時期としては、あまり条件がよくありません。
 珍しいかも知れないなと確認してみたところ、天保暦が使われるようになっ
 た1844年から今までには一度も現れたことのない閏九月でした。

 今日からは、このとっても珍しい旧暦閏九月の始まりの日。
 何かいいことがありますかね(あるわけないか?)。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック