日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■日本の移動祝日について
明日は、10月の 2番目の月曜日ということで、体育の日となります。
通称ハッピーマンデー法と呼ばれる祝日法改正によって、祝日の日付が
○月第×月曜日
となったもののひとつです。
週休二日の普及によって土日が連続した休みとなるという人が増えてきまし
たが、さらにこのハッピーマンデー法でいくつかの祝日を月曜に移動するこ
とで、三連休という長めの休みを作ろうというしたわけで、こうした祝日に
したものです。
私などは、体育の日といえばやはり 10/10という固定した日付が頭に浮かぶ
のですが、現在のように移動するようになったのが2000年からですから、今
年でもう16年目。 10/10が体育の日・・・と頭に浮かぶ人間も大分数を減ら
せてきているでしょうね。
それはさておき、三連休を増やすということであれば、祝日みんな移動祝日
にしてしまえばいいはずですが、そうした動きはありません。
どうやら、祝日には移動させてもよい祝日と、そうで無い祝日があるようで
す。ではその線引きはどの辺にあるのでしょう?
◇ハッピーマンデーで移動する祝日は?
まず始めに、ハッピーマンデーで移動するようになった祝日にはどんなもの
があるかを見てみましょう(2015年現在)。
・成人の日 ・・・ 1月第2月曜日 (1999年までは 1/15)
・海の日 ・・・ 7月第3月曜日 (2002年までは 7/20)
・敬老の日 ・・・ 9月第3月曜日 (2002年までは 9/15)
・体育の日 ・・・ 10月第2月曜日 (1999年までは10/10)
ちなみに、日付の移動する祝日としては、他に「春分の日」「秋分の日」の
二つがありますが、こちらは連休を増やすといった意味はなく、ずっと前か
ら天文学的な春分日、秋分日をこの祝日とすることになっていましたから、
ここでは、考えないことにします。
ハッピーマンデー法の対象となった祝日とそうでない祝日の選別は何処にあ
るのか? 残念ながら祝日法(正しくは「国民の祝日に関する法律」)には
選別の線引きは書かれていませんので、後は推測しかないですね。
◇祝日の日付の意味
ハッピーマンデー法の対象となった 4祝日をみてまず思うことは元々の祝日
の日付の意味です。それぞれの祝日にはそれなりの意味があることにはなっ
てはいますが、ではその意味はと云われてきちんと思い浮かぶものは体育の
日の 10/10(東京オリンピック開会式の行われた日)くらいではないでしょ
うか。体育の日の日付の理由だって、祝日としての意味と考えればまあそん
なに東京オリンピックに義理立てしなくてもよさそうです。
なるほど、その日付にたいした意味が無いのなら動かしてもいいかと、動か
されてしまったのでしょうか。
確かに、元日を 1/1以外にするわけにはいかないでしょうし、古くからある
端午の節供と結びついていると考えられるこどもの日を 5/5から移動させる
のも、難しいようには思いますが、では勤労感謝の日は 11/23から遷しちゃ
いけない理由は?
やはり、新嘗祭と切り離せないのかな?
◇明治憲法下の「休日ニ関スル件」との関係
新嘗祭とは、現在の勤労感謝の日に行われる宮中祭祀ですが、そういえば現
在の「国民の祝日に関する法律」に相当する明治憲法下の「休日ニ関スル件」
という法律では「新嘗祭」自体が祭日となっていました。こう考えたときふ
と、もしやこの古い「休日ニ関スル件」にあった祝祭日の日付はハッピーマ
ンデー法の対象から外されているのではと思い浮かびました。
そこで、試しに現在の祝日のリストに、「休日ニ関スル件」に有るものには
「古」をそうでないものには「新」をつけ、さらにハッピーマンデー法の対
象となっている 4祝日には「△」をつけてみました。
その結果は以下のとおり。
古 1/ 1 元日 (四方拝)
△新 1/12 成人の日
古 2/11 建国記念の日 (紀元節)
古 3/21 春分の日 (春季皇霊祭)
古 4/29 昭和の日 (天長節(昭和))
新 5/ 3 憲法記念日
新 5/ 4 みどりの日
新 5/ 5 こどもの日
△新 7/20 海の日
△新 9/21 敬老の日
古 9/23 秋分の日 (秋季皇霊祭)
△新 10/12 体育の日
古 11/ 3 文化の日 (明治節)
古 11/23 勤労感謝の日 (新嘗祭)
古 12/23 天皇誕生日 (天長節(平成) ※注意)
(日付は2015年の祝日の日付とした)
祝日の末尾に「(四方拝)」のように()書きされたものは、「休日ニ関ス
ル件」でその日付に該当した祝祭日の名称です。
12/23の今上天皇の天皇誕生日は当然明治憲法下の「休日ニ関スル件」には
登場しないものですが、天皇誕生日は「休日ニ関スル件」の下では「天長節」
とされたものですから、もしこれが続いていれば間違いなく天長節となった
はずなので、「古」としました。
こうしてみると「古」のついたものは一つもハッピーマンデー法の対象とは
なっていません。対象となっているのは全部「新」の祝日です。
◇ハッピーマンデー法の対象にならない「新」の祝日
「古」の祝日がハッピーマンデー法の対象となっていないという法則(?)
は有るようですが、では「新」の中でハッピーマンデー法の対象となるかな
らないか、その明暗を分けるものは何でしょうか。
「新」なのに現段階でハッピーマンデー法の対象となっていないものを見て
みると、
憲法記念日(5/3), みどりの日(5/4),こどもの日(5/5)
の 3つの祝日ということが分かります。
これを見て思うことは、全部ゴールデンウィークを形成する祝日だというこ
とです。なるほど。
ハッピーマンデー法の元々のねらいは「連休を作る」ことだったわけですか
ら毎年、祝日がらみの長い連休となるゴールデンウィークを既に形成してい
る祝日をわざわざ移動させる意味が無いことになります。
◇ハッピーマンデー法の対象となる祝日の条件
ここまで考えると、ハッピーマンデー法の対象となる祝日の条件は
1.戦後の「国民の祝日に関する法律」ではじめて祝日となった祝日。
2.本来の日付のままでは大型の連休を形成しない単発の祝日。
の 2つを満たすものではないでしょうか。
ハッピーマンデー法の何処にもそんな条件は見いだせませんが、現段階で対
象となった祝日、ならなかった祝日を見て行くとこんな「条件」が見えてく
る気がします。
◇これから生まれる祝日は?
今年はまだ登場しませんでしたが、法律が通っておりますので、来年の8月
には、また一つ祝日が加わることになっています。
「山の日」 ・・・ 8/11
がそれです。
この山の日、明治時代に作られた「休日ニ関スル件」にはもちろんありませ
ん。日付についても固定しておく必要がありそうに見えませんので、いずれ
は移動祝日に? それなら最初から移動祝日にしてしまえばいいのに。
ここで、なぜ最初から移動祝日になっていないのかを考えて見ると、どうや
ら、移動祝日になる祝日の条件「2」に抵触すると考えられ、移動祝日には
ならないのかも。
8月には、カレンダーの上には「大型の連休を構成する祝日」はありません
が、ここには法律の定めとは関係なく、多くの国民が自主的に大型連休をと
るものがあります。月遅れの「お盆」です。
お盆の日取りは8/13〜15(あるいは16)とされるのが一般的です。
ということで、この月遅れのお盆の直前に祝日があれば、より大型の連休に
なるということです。なるほど。
であれば、8/12にすればもっといいのにと思います(原案ではどうも8/12だ
ったようです)が、この日は御巣鷹山に日航機123便が墜落した日である
ため、この日に「山の日」を持ってきて祝うのはまずいだろうと、一日前に
移動させたものと思われます。
「山の日」の祝日の意味を見ても「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝
する」とあるだけで、なぜ8/11という日でなければならないのか意味が解ら
ない祝日ですから、将来はどうなりますか。このままだと、移動祝日にされ
ちゃった「海の日」が怒りそうですけど・・・。
そういえば、「体育の日」が元々は前の東京オリンピックの開会式の日を記
念したものでしたが、2020年の東京オリンピックで、また一つ祝日が増えた
りするのかな。
◇最後にぼやき
どうでもいいのですが、連休を作るなんて云うことのために祝日をいじり回
すのはやめて欲しいなと思うかわうそです。祝日法の第一条にある「意義」
には、
『自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、より
よき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝
い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。』
とあります。
祝日は単に「休日を増やすため」にあるわけじゃないのですよね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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