こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■姥月に女名月
 明日は旧暦の九月十三日、後の月見の日です。
 ちょうど、日曜日でもありますし、気の合う仲間でお月見というのはいかが
 でしょう。

◇「後の月見」について復習
 毎年、この日が近づけば採り上げている十三夜の月の話ですが、一年前のこ
 となので、忘れたところもあると言う方のために、まずは後の月見の話の基
 本を復習しておきましょう。
 (一年経ったら、また適度に忘れてくれると、来年もこの話題が書けるので
 皆さん、適度に忘れて下さると有り難い・・・)

・なぜ「後の月見」なのか?
 九月十三夜の月は、またの名を「後の月」。そしてこの後の月を眺めて楽し
 む月見を「後の月見」といいます。
 「後」とあれば、当然その前があることになります。何かと云えばこれは一月
 ほど前の旧暦八月十五日の夜の月、中秋の名月とそのお月見のことです。

・いつから始まった?
 中秋の名月の月見行事は、中国の「中秋節」の行事が日本に伝わったものと
 云われます。このため、中秋の名月を祝う行事は、中国の文化の影響を受け
 たアジアの各地に残っているようですが、後の月の方はと云うと、こちらは
 日本独特の風習とか。

 なぜこの日に月見をするようになったのかというと、宇多法皇が九月十三夜
 の月を愛で「無双」と賞したことが始まりとも、醍醐天皇の時代(延喜十九
 年:西暦 919年)に開かれた観月の宴が風習化したものと云われています。

 もっとも、いくら法皇様が「無双の月」と誉めたからと云って、それだけで
 年中行事化するとはちょっと考えにくいので、本当はそういった土着の風習
 がすでに存在して、それが追認される形で宮廷行事に取り入れられたと云う
 のが本当ではないかと、私は思っています。
 そうした風習があったから、宇多法皇もこの夜にお月見したのじゃないのか
 な・・・と。

 それはさておき、通説としてはこの宇多法皇の延喜十九年の月見の宴が、後
 の月見の嚆矢とされています。

・片月見(かたつきみ) 
 東京近辺では、十五夜の月と十三夜の月は同じ庭で見るものとされ、別の所
 で見ることを「片月見」あるいは「片見月」といって嫌ったそうです。私の
 生まれたところでは聞かない風習です。

 一説には、この慣習は江戸の遊里、吉原の客寄せの一環として生まれたと云
 うものがあります。中秋の名月の日を吉原で遊べば、片月見を避けるために
 は必然的に後の月の日も登楼しなければならないというわけです。

 これだけが本当に片月見の禁忌の原因かは疑わしいところもありますが、そ
 の影響もきっとあったろうとは考えられます。吉原ではどちらの月見の日も
 「紋日」という特別な日とされ、客達はいつも以上に気前のよいところを見
 せるために散財したとか。

  月宮殿へ二度のぼるいたい事 

 といういう川柳も残っています。ちなみに「月宮殿」は吉原の別名。
 見栄を張る客達の懐は大分「いたい事」がわかります。

◇九月十三夜の月の名前
 さてさて、長い長い復習が終わったところで、ちょっとだけ新しい話。
 今回は、九月十三夜の月について書いてみます。

・後の月、十三夜の月
 これは既に書いたとおり。中秋の名月の後にあるから「後の月」。
 九月十三日の夜の月だから「十三夜の月」。
 毎月「十三夜の月」はあるわけですが、毎月十五夜の月があっても「十五夜
 の月」は狭義では「中秋の名月」を指す言葉となるように、「十三夜の月」
 も狭義では旧暦九月十三夜の月を指す言葉となるでしょう。

・豆名月、栗名月
 お月見と云えば、お月様にお供えをするわけですが、そのお供えの基本はそ
 の年の収穫物。中秋の名月には、芋(里芋)が供えられることが多いことか
 ら、芋名月と呼ばれるようになったごとく、後の月が豆名月、栗名月と呼ば
 れるのは、このお供え物として、この時期であれば豆や栗が主であったこと
 によると考えられます。

 地方によっては、同じ時期でも収穫物の種類は異なるでしょうから、そうし
 た収穫物と結びついた、独特の呼び名もあるかもしれません。
 ちなみに、山形県米沢市周辺では

  芋名月 ←→ 栗名月

 が一般的な呼び方と反対になっているそうです。

・小麦の名月
 こっちはちょっと違いますが、新潟県の佐渡や長野県の北安曇郡などでは小
 麦の名月の名があるそうです。これは、秋まきの小麦の豊作を願っての呼び
 名ではないかと考えます。この晩の月がよく見えれば、小麦が豊作になると
 いう言い伝えもあるそうですから。

・姥月、女名月
 さてようやく本日のこぼれ話の題名とした「姥月(うばづき)」と「女名月
 (おんなめいげつ)」の登場です。

 女名月の方は、中秋の名月との待避で、それぞれを男名月、女名月と呼び分
 けたものです。大正月を男正月、小正月を女正月と呼ぶのと同じですね。
 「姥月」の方はというと・・・中秋の名月の後の月ですから、年経た名月と
 のいいでしょうか。

 姥というと、老女とか老婆という意味がありますので、そのまま受け取ると
 ちょっと、その、なんですな〜となりますが、そこまで深い意味は無いと、
 思います。多分・・・。

◇さて明日は?
 今朝の天気から考えると、明日もそんなに天気が崩れるとは思えません(と
 いうのは、私の住んでいるところだけの話ですが)ので、綺麗な姥月、女名
 月がみられると思います。

 そうだとすると、翌年の小麦も豊作?
 そんなことを考えながら、栗でも買って、明日は栗御飯にしようかな?
 そんなことを考える、今朝のかわうそでした。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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