日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■初日の出狂騒曲
みんな、本当に気にしているのだろうか?
新年が近づいてくると、毎年そんなことを思いながら資料作りやら、点検や
らをする仕事が舞い込みます(「こよみのページ」関係でなくて、こちらは
かわうその本業の方に)。
何を作ったり点検しているのかというと、それは
初日の出の時刻
です。
日本各地、観光名所(?)や、岬や山の上での初日の出の時刻を計算する、
あるいは計算結果を点検するという仕事がやって来るのです。
普段は、日の出の時刻など、さほど気にしていないでしょうに「初日の出」
だけは、気になる様子。
いえ、正しくは「みんなが気にしている」と思っているだけなのかもしれま
せんが、気にしているに違いないと思い込んでいる方々が結構いらっしゃる
ので、こうなるのでしょうね。
元旦が近づくと、結構いろいろな地方の新聞などに地元の名所・景勝地など
の初日の出時刻が載っていたりします。ま、これがために私の所にも、仕事
がやって来てしまうのですが(面倒くさいといっちゃいけませんね!)。
◇なにはともあれ、2016年の初日の出時刻
いろいろ文句を言いながらも、日刊☆こよみのページに毎日掲載している日
本の7都市についての、初日の出の時刻を一応、書いておきましょう。
札幌 7時 6分 (121度)
仙台 6時52分 (119度)
東京 6時50分 (118度)
大阪 7時 4分 (117度)
岡山 7時11分 (117度)
福岡 7時22分 (117度)
那覇 7時16分 (115度)
日付の後にある角度は、太陽の昇る方位(真北を 0°として東回りに測った
角度です)。この7都市だけで見ても一番早い東京と、一番遅い福岡では30
分以上も異なります。案外差が大きい(高々半時間ともいえますが)。
まあ、初日の出を拝みに行ったのに、着いてみたら既に日が昇っていたでは
シャレにもなりませんので、出かける際にチェックするのは必要ですね。
7都市の例を見ても単純に東にある地方ほど早いということでも無いので、
そうしたことも考えれば、「初日の出の時刻情報」はやはり、必要とされる
情報なのかな。
◇初日の出の時刻は、位置の違いでどれくらい変わるのか
では位置が変化するとどれくらい初日の出の時刻が変わるのかを調べてみま
しょう。Web こよみのページの日出没計算で経緯度を変えて試してみると、
A地点 (北緯35°,東経135°)・・・7時 7分(基 準)
B地点 (北緯35°,東経140°)・・・6時47分( -20分)
C地点 (北緯30°,東経135°)・・・6時55分( -12分)
※日出没計算 http://koyomi8.com/sub/sunrise.htm
もったいつけずに結論から云えば、日本では「東に行くほど」&「南に行く
ほど」初日の出の瞬間は早まります。東と南へ向かうほどと云うことですか
ら、もっとも効率よくと云うのなら、
方位 118°(だいたい東南東)を目指せ!
と云うことになります。この 118°とは何かというと、初日の出の昇る方向。
初日の出の方角は、本当は場所によって少々変化するのですが、北海道の納
沙布岬でも与那国島でもその方向でもその変化は122°〜115°の間ですから、
およそと言うことで言えば日本中、 118°と考えて問題ないでしょう。ちな
みに、この方角へ向かうとどれくらい初日の出の時刻が早まるのかというと、
20km進む毎に約 1分早まる
のでした。「え、20kmでたったの 1分?」なんて、落胆しないで頑張って。
ちなみにこの結果、離島等を除いた日本国内で一番早く初日の出が見える場
所は千葉県の犬吠埼と云うことになります。その時刻は 6時46分です。
◇高いところだと初日の出は早く見える
高いところに昇ると、遠くまで見通せるという理由で同じ場所なら高いとこ
ろの方が初日の出は早く見えます。背の高い人はちょっと有利。
どれくらいは早く見えるようになるのかというと、これは高さの平方根に比
例します。目安としては、
100mで 2分 , 500mで 4分 , 1000mで 6分 , 3000mで11分
と云ったところ。
先程離島を除けば「犬吠埼が日本で一番早い」と書きましたが、この高さを
考慮すると犬吠埼より富士山頂の方が早く初日が昇ります。その時刻は 6時
42分です。
なお、前述したこよみのページの日出没計算はこの高さを考慮した計算も出
来るので、興味のある方は「眼高」という欄に計算したい場所の高さを入れ
て試してみてください。
◇来年の初日の出時刻?
「来年の初日の出時刻を教えて下さい」と云われれば、
「こよみのページの日出没計算で確かめられますよ」と答えれば済むのです
が、そんな答えをした後で、心の中では
去年と変わりませんけどね
とつぶやいてしまいます。
正確に計算すればもちろん毎年違います。が、「初日の出を見に行こう」と
いうレベルの話に「秒単位」までを問題にはしないとすれば、初日の出の時
刻は毎年同じと云えるからです。
試しに、2013〜2017の 5年間の札幌、東京、那覇の初日の出の時刻を並べて
みると
札幌 7時 6分 , 7時 6分 , 7時 6分 , 7時 6分 , 7時 6分
東京 6時50分 , 6時50分 , 6時50分 , 6時50分 , 6時50分
那覇 7時17分 , 7時16分 , 7時16分 , 7時16分 , 7時17分
おおー、見事に。あ、那覇だけ、最小桁(分)の四捨五入の関係で、違って
見えていますが、その差は 1分未満。
ということで、「去年と変わりませんよ」と心の中でつぶやくことになるの
です。
それなのに、今年も「来年の初日の出時刻」の計算、点検を何百点か、させ
ていただきました。文句も云わず・・・あ、「計算地点の経緯度と眼高を教
えてくれないと計算できません」とは云ったことがありますが、これは文句
じゃないですよね??
とりあえず、年明けまで1週間を切った今の時期は、大口の計算依頼などは
さすがになくなりましたので、今年の初日の出狂騒曲も終了です。
よかったよかった。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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