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■西暦(せいれき)
本日は、西暦2016年 3月26日、土曜日です。
といった具合に、当たり前に使われている「西暦」について、本日は採り上
げて見みます。
あんまり、当たり前に使うものですから、当たり前すぎて今まで採り上げる
ことを忘れていました。
◇辞書による説明
【西暦】(せいれき)
西洋の暦。イエス=キリストが誕生したとされる年を紀元元年とする。
西紀。→紀元
《広辞苑・第六版》
コトノハでいつもお世話になっている広辞苑に、本日は「暦のこぼれ話」に
もご登場願いました。
しかし、残念。説明はあっさりしていて二行しかない。
広辞苑の説明が、もし20行もあってくれれば、
以上、説明終わり
と最後に書き加えれば、本日の私の仕事は終わったはずなのに。
仕方がない、続きを書くか。
◇もちっと詳しく「西暦」の話
さて、広辞苑の説明のとおりだとすると、イエスが生まれた年が紀元元年。
紀元1年ということになります。
イエスが生まれたのがクリスマス、12/25 ですから、イエスは
西暦 1年12月25日生まれ
ということになるのか・・・。イエスの生まれた年を西暦の始めとするとい
うのであれば、ついでに 12/25を 1/1として年首も移動してくれたら解りや
すくてよかったのに、なんてぼやきたいところですが、イエスの生まれた日
付が 12/25というのは冬至の儀式の日付を後から「イエスの誕生日だ」とし
てしまったもので、実際のイエスの誕生日とは無関係ですから、文句を云っ
ても仕方ない。
閑話休題
イエスの誕生年が西暦の元年となったというのは、もちろん後世に決められ
たものです。何と云っても、イエスが生まれた年に将来その子が、世の救い
主と呼ばれる存在になるなんて、誰も知らなかったはずですから(東方の三
博士なんて本当にいたとは思えませんものね)、後付けにならざるを得ない
のですが。
この後付けをしたのは誰かというと、六世紀に生きたローマの大修道院長デ
ィオニシウス・エクシグヌスだと云われています。この人物は、神学者であ
り、また年代学者でも有りました。当時、ディオニシウスが取り組んでいた
のが、復活祭の日付の計算方法を作ることでした。
自分たちの信じる神の復活の日を祝うという、キリスト教の祝日の中でもっ
とも重要な祝日である復活祭の日付の計算というのは、キリスト教教会では
大変重要なことなのですが、復活祭は「○月△日は復活祭」と、日付が固定
されているものではなくて
春分の日以降の満月の次の日曜日を復活祭とする
なんていう、面倒くさい(失礼?)決まりになっているため、計算が大変な
のです。
ちなみに、ここ最近の復活祭の日付を計算して見ると
2014/04/20 , 2015/04/05 , 2016/03/27 , 2017/04/16 , 2018/04/01
※この例はカソリックの計算方式によるものです
となります。まるで無秩序のようにも見えます。今なら、計算機を用いれば
複雑な計算も一瞬で終わってしまいますが、そうした便利なものが無い時代
には、この計算は大変でした。ディオニシウスはこの大変な問題に取り組ん
でいたのでした。
ディオニシウスは計算方法を研究する中で、計算するために用いる年数を数
えるための起点(紀元)として、このイエスの生まれた年を紀元として用い
ました。
「用いました」と書きましたが、実はディオニシウスが計算方法を考えてい
る頃に、当時のローマでよく用いられていた紀元は別のもので、ディオクレ
ティアヌス紀元と呼ばれるものでした。
このディオクレティアヌス紀元とは、三世紀から四世紀にかけて生きたロー
マ皇帝の一人、ディオクレティアヌスの即位年を紀元とするもので、別名を
「殉教者の紀元」と呼ばれました。その理由は、ディオクレティアヌス帝が
キリスト教徒を残酷に迫害した皇帝であったためでした。
ディオニシウスが復活祭の日付の計算方法の研究に取り組んでいた六世紀に
は、既にキリスト教はローマ帝国の国教ともなって久しく、キリスト教徒の
迫害は遠い過去のことになっていました。とはいえ、キリスト教における最
重要の祝日である復活祭の日付を、キリスト教徒の迫害者として知られた皇
帝の即位を紀元とする年数で計算するのは具合が悪い。
そこでディオニシウスが考えたのが、イエスの生誕年を紀元とする暦、現在
の西暦、キリスト紀元の暦です。ディオニシウスは、
ディオクレティアヌス紀元 247年 = キリスト紀元 531年
とするキリスト紀元の西暦を考え出しました。
ディオニシウスがどのようにしてイエスの生誕年を推定したのかは伝わって
いないので、検証のしようもないのですが、現在はイエスの生誕はこの西暦
で云えば紀元前 4年頃と考えられているようですので・・・間違っていたの
かな?
キリスト紀元の元年が本当にイエスの生誕した年であったか否かは、そうし
た研究をする人達にとっては大問題かもしれませんが、そうしたことに興味
のない私達にとっては、大した問題ではありません。
それよりは、
今年は西暦2016年です
ということが、正しく伝わりさえすればそれでよいのです。
ディオニシウスの考えたキリスト紀元での年数の表記は、次第に支持を得る
ようになり、十世紀頃からはこの紀元を正式に採用する国が徐々に増えて、
現在は世界で最も広く使われる公用紀元となりました。
日本ではこのキリスト紀元の記念法を「西洋で使われている暦」という意味
で「西暦」と呼ぶようになり、現在に至っています。
ちなみに、日本にキリスト教が伝わった頃の日本のキリシタンが用いていた
暦には西暦の年数が「御出生依頼○○年」と書かれていたそうです。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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