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■葭始めて生ず(七十二候 十六候)
 本日は、七十二候の「葭(あし)始めて生ず」の候の始まりの日です。
 葭はまた、葦、蘆とも書きます。
 「あし」は「悪し」を連想させるということから「よし」と転じて読むこと
 もあります。

 子供の頃、川のすぐ近くに家がありました。
 その河原には沢山の葭が生えており、私のよい遊び場でした。

 この遊び場でこの時期に目立つのは、川の水が運んで来た黒々とした土の間
 や川面から顔をのぞかす葭の新芽。
 細身の筍のような先の尖った葭の新芽が沢山姿を見せるようになると、冷た
 かった川の水がいくらか温んだことに気がつくようになりました。

 この子供の頃に見慣れた葭の新芽を指す「葦牙(あしかび)」という言葉が
 あります。軟らかい土を、水面を突き破るように伸びる葭の新芽の姿を牙に
 見立てた言葉で、春の季語にもなっています。

 日本は「葦原の国」とも呼ばれた国ですから、きっとそこかしこに私が見て
 いた、葦牙が土を、水面を突き破る風景が拡がっていたのでしょう。鋭い葦
 の牙は、春の尖兵として冬の寒気を切り裂き、突き破ってゆくようです。
 葦牙を目にするところ、春の軍勢在り。
 日一日と、春はその勢力を伸ばし、北へ北へと進軍して行きます。

 本日は、春の進軍の様子を思い起こさせてくれる、「葭始めて生ず」の時候
 の始まりの日でした。

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