日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■お月見の薄
今日は、旧暦八月十五日。
今年は、たまたま旧暦八月一日と新暦の 9/1が一致していたので、月遅れで
考えればすぐに旧暦の日付が解って便利。日付を間違えることもありません
ね。いよいよ中秋の名月の日、お月見の日ですね。
昨日の夜には、東京でもお月様がちょこっと顔をのぞかせてくれていました。
大分ふくよかなお月様でしたが、ほんの少しだけ、まだかけているのが判る
お月様でした。肝心の今日はどうでしょうか。お月様、お顔を見せてくれる
でしょうか?
◇薄を探しに
お月見といえば、秋の草花を生けて(芋や団子も供えて)お月様が昇るのを
待ちますが、秋の草花の中でもお月見といえば欠かせないと思うのが薄。
薄は、日の当たる広い、そしてあまり乾燥していない場所に密集して生える
植物です。20〜30年くらい前からは、強力な競争相手のセイタカアワダチソ
ウの出現により、多少、その生活範囲を狭めているようですが、それでもま
だ、結構がんばって生えている姿を目にします。
私の子供の頃は、住んでいたところがドンと田舎だったこともあり、それこ
そどこにでも薄が生えていて、お月見のために薄をとってくるように言われ
ても、ものの5分で
調達完了!
というくらいのものでした。
そんな身近な植物、薄でしたが、お月見に飾るとあの銀色の光る穂が、なん
だか神々しく見えたものでした。
◇お月見には、なぜ薄?
秋を代表する草花なら他にも沢山あるのに、なぜお月見と言えば薄なのでし
ょう。
一説には、垂れ下がる薄の穂が十分に実った稲穂を連想させるからだと言い
ます。薄の穂を稲の穂に見立てて、その実りに感謝(刈り入れ前であれば、
沢山の収穫があることを予め感謝する予祝)したものだと言います。
なるほどなるほど。
また、これとは違うもう一つのおもしろい理由(説?)もあります。
「植物と行事」(湯浅浩史著)という本に日本以外の稲作民族や日本の稲作
開始以前と同じく水田で芋(タロイモ)を栽培する地域の多くが薄を魔よけ
の力のある植物として呪術的に使用している例が沢山紹介されています。
薄はその葉の鋭さから「手切り草」という呼び名もあります。この鋭い葉は
人間だけでなく悪霊すらもおそれさせるようで、その力によって、収穫物の
象徴である芋や団子(米)を悪霊から守る呪術的な意味が込て備えられるの
だと考えられます。つまり団子(米)のボディーガードですね。
日本のお月見の薄も、こうした魔除けとしての薄が水田方式の芋や稲の栽培
方式とともに、日本に伝来したものかもしれません。
お月見は稲の収穫を間近に控えた時期の行事でしたから、魔除けの薄によっ
嵐やイナゴや野生動の食害など、様々な「魔」から稲を守ってほしいという
願いが込められていたのかもしれません。
◇後は「祈る」のみ
さてさて、団子の調達は無事に終わり、薄の調達先もほぼ目星をつけている
かわうそ(東京でも、注意してみるとあちこちに薄がありました)。
後はお天気次第。
今朝の天気はというと、またしてもどんよりとした曇り空ですが、何とか夕
方までには晴れ間が出来て、お月様の昇る姿を拝むことが出来たらいいなと
思っています。
あ、それと、急な仕事などで夜遅くまで帰れないなんてことも無いことも祈
っておきましょう。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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