日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■満ち潮の時刻
今回もありがとう!
話の種が見つからずに困っている(常時です)私に、恵みの雨となる質問メ
ールをいただきましたので、いただいた質問に沿って本日は暦のこぼれ話を
書いてみます。
◇歌の歌詞に登場した満ち潮の時刻
> 満ち潮は毎日あるものなんですよね?
> 好きな曲に「一人が寒い時は満ち潮の夜を待つ」とあって、
> 三日月とどっちが先なのか疑問に思ってました(その曲の後半に
> 「三日月の夜までは」というフレーズがあるので)
> 満ち潮の時間が夜になることが定期的に決まってるんでしょうか?
※ZABADAK 満ち潮の夜 (作詞 小峰公子 作曲 吉良知彦)
ZABADAK公式サイト → http://www.zabadak.net/
「満ち潮の夜」がどのような曲かは、皆さんそれぞれで確かめていただくと
して御質問の@満ち潮の時間が夜になることが定期的に決まっているのか」
を考えてみます。
◇そもそも満潮とは?
海には月と太陽(と地球)によって引き起こされる潮汐があります。
海の水(潮)の干満のことです。
満潮(まんちょう)、干潮(かんちょう)とか、満ち潮(みちしお)、引き
潮(ひきしお)というあれです。
この干満を引き起こす力を起潮力(きちょうりょく)と言います。地球上で
実際の潮汐を引き起こす起潮力の大きさは月が最大で、その次が太陽です。
木星や他の惑星の起潮力もあるのですが、これは月と太陽の起潮力に比べる
と、微々たるもので無いに等しいので、ここでは考えません。
月と太陽の起潮力の大きさは
起潮力の比較
月:太陽 ≒ 2:1
くらいです。
この起潮力によって引き起こされる海水の干満のうち、海水面が高まった状
態を満潮、逆に低くなった状態を干潮と言います。
太陽も、そこそこの起潮力を持っているので、海の満ち引きに影響を与える
のですが、月はその倍も大きな起潮力を持つので、大雑把に見ると海の干満
はほぼ月によって支配されていると考えることが出来ます。
◇満ち潮の時刻と月の関係
海の満ち引きの主要因が太陽であれば、太陽の見かけの動きと連動するはず
ですので、同じく見かけの太陽の動き連動した昼夜の変化と同じような変化
をすると考えられ、話は簡単なのですが、ご存じのように月はその見える時
間帯が日々変化することから、「満ち潮の夜」がいつなのかは、少々考えて
みる必要がありそうです。
手始めに明日10/24とその一週間後の10/31を例にとって満ち潮はいつ頃か見
てみます。
※計算地は東京芝浦(計算は1時間単位・・・手抜き)
2016/10/24
・満潮 12時(161cm) , 24時(148cm) 月出 24時36分 月没 13時26分
・干潮 6時( 73cm) , 19時(126cm)
2016/10/31
・満潮 6時(195cm) , 17時(205cm) 月出 6時 8分 月没 17時20分
・干潮 11時( 75cm) , 23時( 28cm)
今日なら、「満ち潮の夜」といえるかもしれませんね。干満の差は小さいの
で、あまりはっきりした満潮という感じじゃ無いですが。しかし、10/31 の
満潮時刻を見ると朝の 6時と夕方の17時。満潮の夜が無い?
既に書いたとおり、満潮や干潮は主として月によって引き起こされているの
で、この変化する満潮や干潮の時刻は月の動きと関係しているはずです。
ということで、お気づきですよね。満潮の時刻の後に、月の出没時刻を書い
ておいたことに。
太平洋に面した地域では、このように月の出没時刻と満潮の時刻は、ほぼ同
じになります。ですから、こうした地域では月の出没時刻を押さえておけば
「満潮の夜」となる時期の見当がつくことになります。
◇困った問題
しかしここに困った問題があります。
「満潮は月の出没の頃」という折角見つけた条件ですが、これは何処でもと
いう普遍的な法則ではないのです。実際の潮汐は面する海の面積や深さ、海
底地形等々の影響を大きく受けるため、芝浦のように素直(?)なものばか
りではないのです。
特に細長くて浅い海が続く瀬戸内海の潮汐は、かなり特殊。例えば、海の中
の大鳥居で知られる厳島神社の辺りの干満は次のような状況です。
※計算地は広島
2016/10/24
・満潮 4時(244cm) , 17時(297cm) 月出 0時10分 月没 13時54分
・干潮 6時( 73cm) , 19時(126cm)
2016/10/31
・満潮 10時(355cm) , 22時(338cm) 月出 6時37分 月没 17時52分
・干潮 4時( 38cm) , 16時( 86cm)
ご覧のとおり、満潮と月の出没の時刻は 4時間ほど違っています。ただ、こ
のずれの量は、同じ場所ではほぼ同じなので、お住まいの場所でずれの量を
一度チェックしておけば利用できますね。
◇幸いなこと?
一方幸いなことが一つあります。
それは・・・満潮も干潮も基本的には毎日2回あると言うこと。それもほぼ
半日毎に。
ということは、「日の出頃と日没頃で夜とはいえないなという」数日を除け
ば、ほとんど毎日「満ち潮の夜」はやって来ますね。
もっとも、こんな事じゃ
歌詞の世界観にはそぐわない
かも知れませんが。
◇ついでの話
「満潮も干潮も基本的には毎日2回」と書いたとおり、例外もあります。
地球上でも緯度の高い地域では一日1回の干満しか見られなくなります。
また小潮の時期や、元来干満の差が小さな日本海側などでも、1回しか見ら
れないということがあります。
これは、干満が1回しかないというより、干満の差が小さくて満潮や干潮と
いう状況が判別出来ないというべきですが。
さて、質問メールから発した満ち潮の時刻の話でしたが、質問には答えられ
たのだろうか?
違う方向に行ってしまったかも?
最後はちょっと不安なかわうそでした。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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