日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■今日(3/25)は新年の始まりの日?
「新年の始まりの日付はいつですか?」
と尋ねたら、十中八九「1/1 です」という答えが返ってくるでしょうね。
十中八九じゃなくて、十中十かな?
それ以前に、こんな当たり前の質問をした私の頭の具合を心配されそうです
けれど。
しかし、中には違った回答をして下さる方もいらっしゃるかも(十中八九の
残り一二?)。例えば、
「立春」とか「旧正月」
といった具合。
もしかしたら、
「4/1」
という方もいるかも知れませんね。
一年という長さは、季節が一周する長さという人間の生活に無くてはならな
い周期によって決まりますから、地球の上で暮らす人間の社会では、その長
さはほぼ普遍的です。
しかし、その一年の始まりはいつかという話になると、
これで無くてはならない
という決定的なものが無いため、古い時代の暦は、その生まれた場所(とい
うか、文化圏?)によって年の初めの時期は結構まちまちです。
◇ヨーロッパの伝統的年初の日付は3/25
中国や日本の伝統的な暦年(現在のいわゆる旧暦の一年)の始まりは立春の
時期とされていました。
これに対してヨーロッパでは伝統的にもう少し暖かくなった頃、春分の頃を
年の始めとする考え方がありました。
ヨーロッパではグレゴリオ暦、あるいはその前身となったユリウス暦が広く
使われており、この暦での年の始まりはユリウス暦がローマ帝国で採用され
た紀元前 1世紀から、 1/1とされました。
しかしこの年初の日付は、もっぱら為政者側の都合が反映されたもの、秋の
収穫が終わり、それに基づいた税の徴収も一段落。次の年の作業もまだ始ま
らない時期なので区切りやすい、といった理由がありそうです。もちろん目
印となる「冬至」の時期に近いということもあるでしょうけれど。
それ以前はヨーロッパの多くの地域では春分の頃を年初と考えていました。
厳しい冬が去り、草木や作物が成長を始める春の初めを一年の初めと考えて
いたのでしょう。御上(おかみ)の都合で勝手に年初の位置を変えられても
昔から慣れ親しんだ慣習はそうそう簡単には無くなりません。
なかなか無くならないどころか、ユリウス暦が採用されてから千年以上経っ
ても、この春分の時期を年の始まりと考える国がありました。そうした国の
一つがイギリスで、なんと18世紀まで年の始まりの日は春分の頃である3/25
とされていました。
イギリスはユリウス暦の改良版であるグレゴリオ暦への改暦が遅かった国の
一つでもあり、グレゴリオ暦への改暦は1752年。そしてこのグレゴリオ暦へ
の改暦に合わせてそれまでの、3/25の年初を 1/1に変更したのです。
3/25なんていう半端な日付(?)を年初と考えるなんてなんだか不合理だと
いう気もするのですが、慣れてしまえばどうってことは無いのかも。
暦にまつわる話の中には時々こんな、不合理と思えるものが混じっているの
です。こうした不合理さは暦の不合理というより、暦を使う人間の不合理さ
を示すものなのでしょうね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
日刊☆こよみのページ スクラップブック