日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■「竹笋生ず」と竹の花
「竹笋生ず」は「ちくじゅんしょうず」あるいは「たけのこしょうず」と読
みます。「笋」は「筍」の異字体です。
「竹笋生ず」は二十四節気、立夏の末候。七十二候全体としては21番目の言
葉です。清々しい初夏の頃の言葉です。
ただ、「竹笋」という文字は滅多に使われるものではないので、これでは意
味が通じないと考え、この日刊☆こよみのページの七十二候では
「筍生ず」
と書いております。
2017年は5/16〜20が、この候の期間となります。
七十二候は二十四節気などと同様、その生まれは中国なのです。ですが伝来
してからもずっと変わることなく中国生まれのままの言葉が使われ続けてい
る二十四節気と違って、七十二候の方は、日本に伝わってから言葉そのもの
が違うものに変わったものや、言葉は同じでも表す時期が変わったものなど
が多数有り、そうした意味で、日本化したものとなっています。
本日採り上げた「竹笋生ず」も、日本に来てか新しく作られた七十二候の言
葉です。
ちなみに、日本に七十二候が伝来したばかりの頃は、
「王瓜生」(おうかしょうず)
が使われていました。「王瓜」といってもピンときませんが、これはどうや
らカラスウリのことのようです。
カラスウリも身近な植物ですね。さすがに都市部では「身近」とはいいかね
るかもしれませんが、田舎育ちの私にはなじみの植物の一つです。
◇タケノコの季節
七十二候の言葉には、身近な動植物の成育の様子などが取り入れられていま
す。動植物の成育の様子を表す言葉を聞けば、その季節の様子が思い浮かぶ
からでしょう。
タケノコ(筍、竹笋)もそうしたなじみの植物。
晩春〜初夏の食材としての「タケノコ」は季節を表す風物として、適役だと
思われます(南北に長い日本列島のことですから、地方によってタケノコで
思い浮かぶ季節に多少の前後はあるでしょうけれど)。
◇竹も海を渡ってきた?
今では、日本中どこでも目にする竹ですけれど、どうやらその多くは海を渡
ってやって来たもののようです。
よく知られた孟宗竹(モウソウチク)は江戸時代、淡竹(ハチク)は奈良・
平安時代頃に中国から伝えられたものいわれます。
真竹(マダケ)についても古い時代に持ち込まれて栽培されるようになった
といわれます(ただし、日本自生という説もあるようで)。
今では、竹林、竹藪のない時代の日本など想像も出来ないのですが、時代を
遡ればなかったのか・・・。
※笹(ササ)類については、日本に自生していたそうです。
◇竹の花
【竹に花咲けば凶年】
竹に花が咲く年は天候が不順で、凶作であるということ。
日本各地に伝わる俗信。
(類語)竹の実なれば凶年
《旺文社 成語林・初版》
竹は、基本的にはタケノコでその勢力を拡げて行きます。
タケノコは竹の地下茎から生えだし、瞬く間に育って竹となります。
普通の木のように、種が落ちてそれが芽を出し、成長して木に生るというの
とは大分違った生き方をしているようです。
竹林の竹は、地上に出ている部分を見ると、一つ一つが個別の「竹」ですけ
れど、地中では絡み合った地下茎で結びついた一つの生き物といえます。
さてさて、そんな竹ですが、この竹にも花が咲くことがあります。
種類や個体差はあるようですが、花の咲く周期は 120年ほどとか(笹などは
60年ほどとも)。
花を咲かせたあと、竹は枯れてしまいます。
既に書いたとおり、竹林の竹は地上に見える一本一本が独立したものではな
くて、地下茎で結びついた大きな生き物ですから、枯れるときには竹林全体
が枯れてしまうことになりますから、これは大変です。
静岡県にお住まいの、日刊☆こよみのページの読者の方(雷さん)から、先
日、メールをいただきました。
メールには 5月18日の静岡新聞の記事の紹介がありました。その記事は
120年に一度 ハチクの花次々
一斉枯れの予兆 県内生産者に不安
という見出で、静岡県内でハチク(淡竹)の開花が相次いでいることを報じ
たものでした。
竹の花が咲いたと云うことは、この後には竹林全体の枯死が待っていること
になります。竹林が枯死すると、それを再生する為には10年以上も時間がか
かるとのことですからタケノコの生産農家にとっては大変な問題ですね。
静岡新聞の記事には
120年周期とされる全国的な一斉開花の時期を迎えている可能性があり
ともありましたから、静岡以外でも竹の花が咲き始めるのでしょうか?
身近な植物でありながら、謎の多い竹。
来年の今頃もまた、「そろそろタケノコの季節」なんて暢気に書いていられ
るのかなと、少々不安な「竹笋生ず」の候のかわうそでした。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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