月齢と海の潮汐(潮の満ち干)
 海の潮の干満(かんまん)は海で仕事をする人や、潮干狩りの計画の際には気になるものです。
 ご存じのように潮の干満を起こす主な力は、月と太陽が地球に及ぼす潮汐力(ちょうせきりょく)です。このうちでも月が及ぼす影響は太陽の約2倍ありますので多少乱暴に言えば「海の潮は月によって起きる」といえます。そのため、昔から月の満ち欠けの状況から潮の状況を推定するということがなされていました。

 月の満ち欠けの状況ということで言うと、現在旧暦と呼ばれる明治以前に使われていた暦は太陰太陽暦という月の朔望(「さくぼう」・・・満ち欠けのこと)と密接に関係する暦でしたから、

  月の状況 ≒ その月の日付

と言う関係がありました。暦の「一日(朔日)」は新月の日ですし、「十五日」は満月の日と考えてもほぼ正解です。新月や満月の頃は海の潮汐の変化は大きくなるので、これを「大潮」と呼びます。先程の月と暦の日付の関係を思い出して頂ければこれは、

  旧暦の一日、十五日あたりは大潮である

と言えそうだとお気づきになりますね。
昔の海辺の人々もこの関係に気が付いて、暦の日付から潮の状況を考えたのでした。
現在使われている暦は月の満ち欠けとは直接関係が無いので、日付から月の状況を判断することは出来ませんが、代わりになるものがあります。新聞などで見かける「月齢」がそれです。旧暦の月の日付は新月から数え始めますし、月齢もまた新月から数え始めます。違いがあるとしたら

  日付は 1から数え始め、月齢は 0から数え始める

ことくらいです。まあ代用としては充分。月齢は海の潮汐の状況を表す指標として使えます。

※月齢とは何かについては、月齢はどうして決まるをお読みください。

月齢カレンダー内にも月齢と潮名を並べて表示したのはそのためです。
さてここまでの説明はいいとして、実は一つ問題があります。それは、

 海の潮汐の様子は地域差が大きい 

ということです。ある瞬間の新月や満月といった月の朔望の状況については世界中共通なのですが、肝心の海の潮汐は地域によって、面する海の広さや海底の状況など様々な要因で一様では無いのです。「世界」なんて言わなくても、日本国内で見てもその違いはビックリするほど。

例えば、瀬戸内海に面した広島では一日の干満の差が2mもある日に、日本海に面した島根県では20cmの干満しかない何て言うことが当たり前に起こっています。
実際の潮汐がこんなに違いますから、この潮汐の状況を表す言葉や基準が日本全国同じはずが無く、地域によって少しずつ言葉に違いがあるのです。

 ただ、そうは言っても目安として月齢から大体の潮汐の状況がわかれば便利でしょうから、そう言う観点から月齢と潮の状況を最大公約数的にまとめて定義してみました。
どの月齢で、何という潮名にしたかについては、表をご覧下さい。

潮名と月齢の対応(このHP内で使用したもの)
潮名月 齢
(こよみのページ)
黄経差
(MIRC方式)
黄経差
(気象庁)
潮の状況
大潮29〜2,
14〜17
343°〜31°,
163°〜211°
348°〜36°,
168°〜216°
干満の差が大きな時期
中潮3〜6,
12〜13,
18〜21,
27〜28
31°〜67°,
127°〜163°,
211°〜247°,
307°〜343°
36°〜72°,
132°〜168°,
216°〜252°,
312°〜348°
  〃  が中程度の時期
小潮7〜9,
22〜24
67°〜103°,
247°〜283°
72°〜108°,
252°〜288°
  〃  が小さな時期
長潮10,
25
103°〜115°,
283°〜295°
108°〜120°,
288°〜300°
干満の間隔が長く、変化が緩やかな時期
若潮11,
26
115°〜127°,
295°〜307°
120°〜132°,
300°〜312°
干満の差が大きくなり始める時期

後日追記 (2008.7.4)
表には同じように、潮の状況を天文学的な数字で定義したものを二つ並べて掲載することにしました。
この二つの定義は、MIRC(海洋情報研究センター)と気象庁が潮名を求める際に使っている定義です。
(それぞれの数値は、MIRCのHPWikipediaの「潮汐」 から得ました。)

ここに黄経差とあるのは、
 黄経差 = 月黄経 - 太陽黄経 
という値で、単位は角度の「°(度)」です。
黄経という言葉は耳慣れないものかもしれませんが、太陽が一年かけて星々の間を動いて行く「黄道(こうどう)」を基準にして作られた天球の座標系、「黄道座標」の経度という意味です。
黄道は、太陽の通り道ですが月もこの黄道に近い「白道(はくどう)」を巡っています。黄道と白道は一致しませんが、大きくずれることも無いので、大体一致していると考えても、今日の話題においては差し支えありません。

太陽と月の黄経差

なお、MIRCや気象庁の定義を書いてみたのは、そうした資料を使って作られた「潮位表」などをご覧の方から、「潮名が間違っています」というご指摘を受けることが多かったから、間違っているわけではないのですという意味で書いてみました。

ついでに、月齢カレンダーの潮名表示方式には、この「MICR方式」「気象庁方式」への切り替えオプションもつけています。

 最後にもう一度くどいようですが、この値はあくまでも目安で地域ごとの正確な潮の状況を表している物ではないことをご了解の上、ご覧下さい。
後日追記 (2008.7.4)
正確な各地の潮汐推算をしたいという場合は、各地の潮汐計算のページを作りました(2007.12に)のでご利用下さい。
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