暦と天文の雑学
http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0202.html
月齢と海の潮汐(潮の満ち干)
海の潮の干満(かんまん)は海で仕事をする人や、潮干狩りなどでは気になる現象です。
ご存じのように潮の干満を起こす主な力は、月と太陽が地球に及ぼす潮汐力(ちょうせきりょく)です。潮汐力は天体の引力と公転運動による遠心力との差によって生じる力なので、下図のとおり、対象となる天体に近い側とその反対の側の2箇所で潮汐力は強く働きます(ただしこれは、あくまでも単純化したイメージです)。
この図では地点A・Cが満潮、B・Dが干潮となります。つまり満潮や干潮は、それぞれ2つの地点で同時に起こります。
地球の海に潮汐を引き起こす元となる天体は月と太陽ですが、地球に及ぼす潮汐力の大きさでは月の方が太陽より大きく、月の潮汐力を1.0とすれば、太陽の潮汐力は0.5程ですので、多少乱暴に言えば「海の潮の干満は月の動きによって起こる」と言うことが出来ます。
月の半分ほどの潮汐力しか地球に与えない太陽は、潮汐の主役にはなりませんが、月との位置関係によって、潮汐力を強めたり弱めたりする働きをします。
前出のイメージ図で考えると、月が地点Aの側にある時に、太陽がAまたはCの側にあれば、月と太陽の潮汐力が合算され、「1.0+0.5=1.5」となって、月のみの潮汐力より50%程大きくなります。この状態を「大潮(おおしお)」といいます。これとは逆に、太陽がB,D側にある時には、月と太陽の力が相殺されてしまい、潮汐力が小さくなり、「小潮(こしお)」と呼ばれる状態となります。
なお、太陽がA側にあるとして、月が同じA側にある状態は新月、反対のC側にある状態は満月となり、BまたはD側にある状態は半月(上弦と下弦の)となります。
このように見てくると,月の満ち欠けと海の潮汐の大きさの変化(大潮、小潮などの変化)が密接に関係していることが分かります。こうした関係は古くから経験的に知られており、海辺に住む人達は、月の満ち欠けの状況から潮汐の状況を推定していました。
月の満ち欠けの状況ということで言うと、現在旧暦と呼ばれている太陰太陽暦は、月の朔望(「さくぼう」、月の満ち欠けのこと)に基づいて組み立てられたる暦でしたから、暦の日付と月の満ち欠けの状況とは対応していました。
暦の「一日(朔日)」は新月の日ですし、「十五日」は満月の日」と考えられました。既に述べたとおり、新月や満月の時期は大潮の時期にあたりますので、月と旧暦の日付の関係から
旧暦の一日、十五日あたりは大潮である
と考えて良さそうだとだと解ります。
このことから、旧暦を使って暮らしていた時代の海辺の人々もこの関係に気付いたでしょうから、いつしか暦の日付にあわせて、潮の状況を示す名前を付けたと考えられます。これが、各地に残る「潮名(しおな)」の元になったと考えられます。
現在使われている暦は月の満ち欠けとは直接関係がないので、日付から月の状況を知ることは出来ません。しかしその代わりになるものはあります。新聞などで見かける「月齢」がそれです。旧暦の月の日付は新月から順に数えます。月齢もまた同じく新月から数え始めます。違いがあるとしたらそれは、
旧暦の日付は 1から数え始め、月齢は 0から数え始める
ことくらいです。この違いにさえ気を付ければ、月齢は旧暦の日付けの代用として、海の潮汐の状況を示す指標に使うことが出来ます。月齢カレンダーにも月齢と潮名を並べて表示したのはそのためです。
※月齢とは何かについては、月齢はどうして決まるをお読みください。
さてここまでの説明はいいとして、実は一つ問題があります。それは
海の潮汐の様子は地域差が大きい
ということです。ある瞬間の新月や満月といった月の満ち欠けの状況は世界中共通なのですが、肝心の海の潮汐は地域によって大きく異なります。それは、それぞれの場所で面する海の広さや海底の状況など様々な要因で一様ではないためです。「世界で」なんていわなくても、日本国内だけを見てもその違いはビックリするほどです。例えば
瀬戸内海に面した広島では一日の干満の差が2mもある日に、
日本海に面した島根県では20cmの干満差しかない
といったことが、当たり前に起こるのです。
実際の潮汐がこんなに違いますから、この潮汐の状況を表す言葉や基準が日本全国同じであるはずは無く、地域によって少しずつ言葉に違いが生まれます。
ただ、そうは言っても目安として月齢から大体の潮汐の状況がわかれば便利でしょうから、そう言う観点から月齢と潮の状況を最大公約数的にまとめて定義してみました。そうして作った潮名と対応する月齢の一覧が下の表です。
表には月齢だけでなく、潮名の数値定義としてよく使われる太陽と月の黄経差による区分(MIRC方式と気象庁方式の2種類)も併せて記載しましたので、参考として下さい。
表の後には、2ヶ月分の潮高変化グラフ(2026年の三宅島の例)と、3つの方式で求めた大潮と小潮の時期と月の四相(新月・上弦半月・満月・下弦半月)の日付との対応を示した図を示しますので、潮高変化と、それぞれの対応も確認していただければ嬉しいです。
潮名と月齢、太陽と月の黄経差の対応(このHP内で使用したもの)
くどいようですが、潮名はあくまでも目安であって、地域ごとの正確な潮の状況を表しているものではないことをご了解下さい。
なお、月齢カレンダーの潮名表示方式には「月齢方式」「MICR方式」「気象庁方式」のいずれでも表示出来るよう切り替えオプションがありますので、ご覧になりたい方式を選んでチェックしてください。正確な各地の潮汐推算をしたいという場合は、各地の潮汐計算のページを用意しておりますので御利用下さい。
※記事更新履歴
初出 2001/01/28
修正 2008/07/04 潮名の黄経差定義の追加、画像追加
修正 2024/11/15 文章修正
修正 2025/01/02 大幅加筆修正・図追加
海の潮の干満(かんまん)は海で仕事をする人や、潮干狩りなどでは気になる現象です。
ご存じのように潮の干満を起こす主な力は、月と太陽が地球に及ぼす潮汐力(ちょうせきりょく)です。潮汐力は天体の引力と公転運動による遠心力との差によって生じる力なので、下図のとおり、対象となる天体に近い側とその反対の側の2箇所で潮汐力は強く働きます(ただしこれは、あくまでも単純化したイメージです)。
この図では地点A・Cが満潮、B・Dが干潮となります。つまり満潮や干潮は、それぞれ2つの地点で同時に起こります。地球の海に潮汐を引き起こす元となる天体は月と太陽ですが、地球に及ぼす潮汐力の大きさでは月の方が太陽より大きく、月の潮汐力を1.0とすれば、太陽の潮汐力は0.5程ですので、多少乱暴に言えば「海の潮の干満は月の動きによって起こる」と言うことが出来ます。
月の半分ほどの潮汐力しか地球に与えない太陽は、潮汐の主役にはなりませんが、月との位置関係によって、潮汐力を強めたり弱めたりする働きをします。
前出のイメージ図で考えると、月が地点Aの側にある時に、太陽がAまたはCの側にあれば、月と太陽の潮汐力が合算され、「1.0+0.5=1.5」となって、月のみの潮汐力より50%程大きくなります。この状態を「大潮(おおしお)」といいます。これとは逆に、太陽がB,D側にある時には、月と太陽の力が相殺されてしまい、潮汐力が小さくなり、「小潮(こしお)」と呼ばれる状態となります。
なお、太陽がA側にあるとして、月が同じA側にある状態は新月、反対のC側にある状態は満月となり、BまたはD側にある状態は半月(上弦と下弦の)となります。
※「大潮・小潮」と「満潮・干潮」は違います!
海の潮汐の話をしていると、大潮・小潮と満潮・干潮を混同していらっしゃる方と時折出合いますが、この二つはまったく別物ですのでご注意ください。
毎日起こる潮の満ち干が満潮・干潮です。日本付近では満潮と干潮が普通は1日に2回ずつ起こります。
次のグラフは、気象庁の潮位表データにもとづいて、三宅島における2026/3/21から3日間の潮高の変化を示したものです。ほぼ1日の間に、
満潮 → 干潮 → 満潮 → 干潮
と干満が2回ずつ繰り返されている様子が見てとれます。
これに対して、大潮・小潮は満潮と干潮の潮高の差の大きさを表す呼び名です。また、大潮と小潮の期間はおよそ1ヶ月の間に2度ずつ現れます。これは、1日で2度も変化を繰り返す満潮と干潮の変化より、ずっとゆっくりとした変化です(詳しくは後ほど本文で説明します)。
海の潮汐の話をしていると、大潮・小潮と満潮・干潮を混同していらっしゃる方と時折出合いますが、この二つはまったく別物ですのでご注意ください。
毎日起こる潮の満ち干が満潮・干潮です。日本付近では満潮と干潮が普通は1日に2回ずつ起こります。
次のグラフは、気象庁の潮位表データにもとづいて、三宅島における2026/3/21から3日間の潮高の変化を示したものです。ほぼ1日の間に、
満潮 → 干潮 → 満潮 → 干潮
と干満が2回ずつ繰り返されている様子が見てとれます。
これに対して、大潮・小潮は満潮と干潮の潮高の差の大きさを表す呼び名です。また、大潮と小潮の期間はおよそ1ヶ月の間に2度ずつ現れます。これは、1日で2度も変化を繰り返す満潮と干潮の変化より、ずっとゆっくりとした変化です(詳しくは後ほど本文で説明します)。このように見てくると,月の満ち欠けと海の潮汐の大きさの変化(大潮、小潮などの変化)が密接に関係していることが分かります。こうした関係は古くから経験的に知られており、海辺に住む人達は、月の満ち欠けの状況から潮汐の状況を推定していました。
月の満ち欠けの状況ということで言うと、現在旧暦と呼ばれている太陰太陽暦は、月の朔望(「さくぼう」、月の満ち欠けのこと)に基づいて組み立てられたる暦でしたから、暦の日付と月の満ち欠けの状況とは対応していました。
暦の「一日(朔日)」は新月の日ですし、「十五日」は満月の日」と考えられました。既に述べたとおり、新月や満月の時期は大潮の時期にあたりますので、月と旧暦の日付の関係から
旧暦の一日、十五日あたりは大潮である
と考えて良さそうだとだと解ります。
このことから、旧暦を使って暮らしていた時代の海辺の人々もこの関係に気付いたでしょうから、いつしか暦の日付にあわせて、潮の状況を示す名前を付けたと考えられます。これが、各地に残る「潮名(しおな)」の元になったと考えられます。
現在使われている暦は月の満ち欠けとは直接関係がないので、日付から月の状況を知ることは出来ません。しかしその代わりになるものはあります。新聞などで見かける「月齢」がそれです。旧暦の月の日付は新月から順に数えます。月齢もまた同じく新月から数え始めます。違いがあるとしたらそれは、
旧暦の日付は 1から数え始め、月齢は 0から数え始める
ことくらいです。この違いにさえ気を付ければ、月齢は旧暦の日付けの代用として、海の潮汐の状況を示す指標に使うことが出来ます。月齢カレンダーにも月齢と潮名を並べて表示したのはそのためです。
※月齢とは何かについては、月齢はどうして決まるをお読みください。
さてここまでの説明はいいとして、実は一つ問題があります。それは
海の潮汐の様子は地域差が大きい
ということです。ある瞬間の新月や満月といった月の満ち欠けの状況は世界中共通なのですが、肝心の海の潮汐は地域によって大きく異なります。それは、それぞれの場所で面する海の広さや海底の状況など様々な要因で一様ではないためです。「世界で」なんていわなくても、日本国内だけを見てもその違いはビックリするほどです。例えば
瀬戸内海に面した広島では一日の干満の差が2mもある日に、
日本海に面した島根県では20cmの干満差しかない
といったことが、当たり前に起こるのです。
実際の潮汐がこんなに違いますから、この潮汐の状況を表す言葉や基準が日本全国同じであるはずは無く、地域によって少しずつ言葉に違いが生まれます。
ただ、そうは言っても目安として月齢から大体の潮汐の状況がわかれば便利でしょうから、そう言う観点から月齢と潮の状況を最大公約数的にまとめて定義してみました。そうして作った潮名と対応する月齢の一覧が下の表です。
表には月齢だけでなく、潮名の数値定義としてよく使われる太陽と月の黄経差による区分(MIRC方式と気象庁方式の2種類)も併せて記載しましたので、参考として下さい。
表の後には、2ヶ月分の潮高変化グラフ(2026年の三宅島の例)と、3つの方式で求めた大潮と小潮の時期と月の四相(新月・上弦半月・満月・下弦半月)の日付との対応を示した図を示しますので、潮高変化と、それぞれの対応も確認していただければ嬉しいです。
潮名と月齢、太陽と月の黄経差の対応(このHP内で使用したもの)
| 潮名 | 月齢(こよみのページ方式) | 黄経差 (MIRC方式) | 黄経差 (気象庁) | 潮の状況 |
|---|---|---|---|---|
| 大潮 | 29~2, 14~17 | 343°~31°, 163°~211° | 348°~36°, 168°~216° | 干満の差が大きな時期 |
| 中潮 | 3~6, 12~13, 18~21, 27~28 | 31°~67°, 127°~163°, 211°~247°, 307°~343° | 36°~72°, 132°~168°, 216°~252°, 312°~348° | 〃 が中程度の時期 |
| 小潮 | 7~9, 22~24 | 67°~103°, 247°~283° | 72°~108°, 252°~288° | 〃 が小さな時期 |
| 長潮 | 10, 25 | 103°~115°, 283°~295° | 108°~120°, 288°~300° | 干満の間隔が長く、変化が緩やかな時期 |
| 若潮 | 11, 26 | 115°~127°, 295°~307° | 120°~132°, 300°~312° | 干満の差が大きくなり始める時期 |
くどいようですが、潮名はあくまでも目安であって、地域ごとの正確な潮の状況を表しているものではないことをご了解下さい。
なお、月齢カレンダーの潮名表示方式には「月齢方式」「MICR方式」「気象庁方式」のいずれでも表示出来るよう切り替えオプションがありますので、ご覧になりたい方式を選んでチェックしてください。正確な各地の潮汐推算をしたいという場合は、各地の潮汐計算のページを用意しておりますので御利用下さい。
後日追記・潮名と黄経差について (2008.7.4)
『潮名と月齢、太陽と月の黄経差の対応』の表には潮の状況を天文学的な数字で定義として月齢を掲載していましたが、新たに太陽と月の黄経差を用いた2つの数値を追加しました。ここに示した2つの定義は、MIRC(海洋情報研究センター)と気象庁が潮名を求める際に使っている定義です(それぞれの数値はMIRCのHPとWikipediaの「潮汐」 から得ました)。
ここに黄経差とあるのは
黄経差 = 月黄経 - 太陽黄経
という値で、単位は角度の「°(度)」です。
黄経という言葉は耳慣れないものかもしれませんが、太陽が1年かけて星々の間を動いて行く「黄道(こうどう)」を基準にして作られた天球の座標系、「黄道座標」の経度という意味です。黄道は、太陽の通り道ですが月もこの黄道に近い「白道(はくどう)」を巡っています。黄道と白道は一致しませんが大きくずれることもありませんので、今日の話題においては大体一致していると考えても差し支えありません。
『潮名と月齢、太陽と月の黄経差の対応』の表には潮の状況を天文学的な数字で定義として月齢を掲載していましたが、新たに太陽と月の黄経差を用いた2つの数値を追加しました。ここに示した2つの定義は、MIRC(海洋情報研究センター)と気象庁が潮名を求める際に使っている定義です(それぞれの数値はMIRCのHPとWikipediaの「潮汐」 から得ました)。
ここに黄経差とあるのは
黄経差 = 月黄経 - 太陽黄経
という値で、単位は角度の「°(度)」です。
黄経という言葉は耳慣れないものかもしれませんが、太陽が1年かけて星々の間を動いて行く「黄道(こうどう)」を基準にして作られた天球の座標系、「黄道座標」の経度という意味です。黄道は、太陽の通り道ですが月もこの黄道に近い「白道(はくどう)」を巡っています。黄道と白道は一致しませんが大きくずれることもありませんので、今日の話題においては大体一致していると考えても差し支えありません。
- 余 談
- 『潮名と月齢、太陽と月の黄経差の対応』の表に、MIRC方式、気象庁方式による太陽と月の黄経差による定義を追加したのは、そうした資料を使って作られた「潮位表」などをご覧の方から
「潮名が間違っています」
というご指摘を受けることが多かったからです。
間違っているわけではないのですという弁明のため?
お酌み取りください。
※記事更新履歴
初出 2001/01/28
修正 2008/07/04 潮名の黄経差定義の追加、画像追加
修正 2024/11/15 文章修正
修正 2025/01/02 大幅加筆修正・図追加
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※2010.6.1~の記事の評価 , 閲覧数
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