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月の距離とスーパームーン
   今日の話題は、一時話題となったスーパームーンについてです。

 2012年5月6日の満月は「スーパームーン」 

とひとしきり騒がれました。
騒がれた余波がこよみのページにも押し寄せて、

 「スーパームーン」てなんですか?

という質問らしきメールがこの日の半月ほど前辺りから何通か届きました。
2012/5/6の日の月は、地球にかなり近づいた時に満月をむかえていたので、見かけの大きさは平均的な満月より大分大きく明るく見えるはずでしたから、多分そうした満月をスーパームーンSupermoon)と呼ぶらしいことは容易に想像できたのですが、このときに話題となるまで、スーパームーンという呼び名を耳にしたことはありませんでした。

 昔はスーパームーンなんていう呼び名は無かったけど・・・昔からあったのかな?

と思いながら、スーパームーンとはなんぞやとネットで検索してみたところ、次の解説記事を見つけました。

【スーパームーン】(Supermoon)
 月が地球に最も近づいたときに、満月もしくは新月の形になった月の姿、またはその現象をスーパームーンという。
  (中略)
 もともと「スーパームーン」とは近年になって言われ始めた占星術の用語で、惑星直列などとともに、地震が起こるなどの災禍が訪れるという風説がある。
 しかし、そのような事実の裏付けはなく、力学的には潮位の干満の差がわずかに大きくなる程度に過ぎないと考えられている。

 『知恵蔵2011』の解説
   《kotobank(http://kotobank.jp) 「スーパームーン」より抜粋》

このkotobankの説明によれば、
  「スーパームーン」とは近年になって言われ始めた占星術の用語
だそうですから、「昔はなかった」という私の記憶は間違ってはいなかったようです。
しかも「占星術の用語」なら知らなくても仕方がないと妙な納得をしつつ、スーパームーンの話を進めて行きます。

  • スーパームーンは満月と新月のとき 
     ネットニュースの多くでは、満月の場合が取り上げられていましたが、kotobankの説明を読むと、満月だけでなく新月の場合もスーパームーンと呼ばれるようです。
     ウィキペディアの英語版の「Supermoon」項目にも満月と新月の両方がスーパームーンとなることが書かれていました。
     ⇒ http://en.wikipedia.org/wiki/Supermoon

     この辺の情報を手がかりとして、スーパームーンについて考えてみることにします。
  • 月の距離の変化・・・近地点と遠地点 
     月は地球の衛星で、月までの距離は384400kmといわれています。ただしこの距離は平均の距離で、いつも同じというわけではなく、地球と月はこの距離より近くなることも遠くなることもあります。
    月の楕円軌道地球と月の距離が変化するのは、地球を巡る月の公転軌道が円軌道ではなくて楕円軌道だからいうのがその最大の理由です。これを模式的に表したものが右の図です(かなり誇張してあります)。
     楕円には「焦点」と呼ばれるものが二つ存在しており、この図で地球のある場所がその焦点の一つとなっています。
     月の軌道が楕円であるため、月が軌道のどの位置にあるかによって地球と月の距離は変化します。この軌道上で月が最も地球に近づく点を「近地点」、反対に最も遠くなる点を「遠地点」と呼びます(地球に近い点、遠い点という意味です)。
     月はこの軌道上を公転し

    ・・・〜近地点〜遠地点〜近地点〜・・・

    とその位置を変えますから、地球と月の距離は月が地球の周りを公転する毎に、遠近の変化を繰り返すことになります。その距離の変化をグラフにしたものが次のグラフです(例として2012年の1年間の地球と月の距離をプロットしたもの)。
    2012年の月の距離変化 
     確かに周期的に近い・遠いを繰り返しているのがわかります。しかし、近い時の距離だけをみても、37万kmの時もあれば36万kmを切るときもあり、毎回同じではありません。上のグラフの中のマークは、特に地球に近く、「スーパー」と呼ばれそうな距離となる箇所( 5月と12月)を表しています。
  • 満月、新月の時に月は地球に近づく 
     月の近地点、遠地点の距離が毎回変化するのは、月の公転運動には地球以外の天体の引力も作用するためです。こうした副次的な作用のうち、最大のものは、太陽によって引き起こされるもので、「太陽摂動(たいようせつどう)」と呼ばれます。

    月軌道への太陽摂動  太陽摂動によって月の軌道の形状がどのような影響を受けるかを示したものが次の図です。
     赤い線で示した円軌道が太陽の影響がなかった場合の軌道だと考えてください。そして太陽の影響を受けて変形した軌道が青い線で示したものです。
     太陽摂動によって、月の軌道は、太陽に最も近づく位置(新月の位置)と、その反対の太陽から最も遠い位置(満月の位置)で地球に近づく形に変形されます。
     月が地球に最も近づく近地点付近で新月か満月を迎えると太陽摂動の効果が加わって、月は普段の近地点通過時よりさらに地球に近づき、「スーパームーン(Supermoon)」と呼ばれる状態になるわけです。
  • 月の満ち欠けと距離の関係 
     次のグラフは月の満ち欠けと、地球と月の距離の関係を表したものです(2012年 1年分の例)。
     グラフの横軸は太陽と月の黄経(太陽の通り道である黄道座標の経度方向の角度)差です。この差が0°(=360°)の時が新月、180°の時が満月となります。
     グラフの中の赤・青・緑の曲線が黄経差毎の月の距離を表し、その中で青と緑の線は、スーパームーンとなる場合の曲線を表しています(青は新月の時に、緑線は満月の時にスーパームーンとなる)。
    2012年の月の満ち欠けと距離変化
     月までの距離が最も短くなるのは太陽と月の黄経差が0°(新月の位置)と180°(満月の位置)であることがわかります。
  • スーパームーンはどれくらい近い? 
     「2012年5月6日の満月はスーパームーンだ」と話題となりました(今回の記事を書こうと思ったきっかけがこれ)。
     では、このとき、月はどれくらい地球に近づいたのか?
    「スーパームーン」の時の月の軌道  地球と月の距離をこの満月の直前の新月〜直後の新月までの一ヶ月間の距離を計算して図化してみました。その結果が左の図です。
     こうして得られた月の軌道の形状が緑の楕円。比較のため、同じ縮尺で地球と月の平均距離である384400kmの半径の円を赤線で描いてみました。この状態での地球と月の距離は平均距離より約7%(約27400km)も短い距離となります。
    とはいいながら、図にしてみるとそんなに「近い」という印象は受けませんね。
     ほんのちょっとといった感じです。
  • スーパームーンは、本当にスーパー? 
     既に書いたとおり「スーパームーン」は比較的最近になって占星術から生まれた言葉のようですが、天文学ではこの状態をなんと呼ぶのかというと・・・これといって特別な呼び名はなさそうです。
     天文学的には「スーパームーン」の状態も、普段の月と変わることのないただの満月、ただの新月なのです。
  • スーパームーンの見かけの大きさは? 
     スーパームーンと呼ばれる状態の月は、距離が平均より約7%近く、見かけの月の大きさも平均より直径で約7%、面積なら約15%大きいことになります。
     7%大きいといわれてもなかなかイメージしにくいと思いますので、見かけの大きさ比較図を作ってみました。図の左から、
    (左)太陽の大きさ → 最遠距離の月 → 平均距離の月 → 最近距離の月(右)
    月の見かけの大きさ比較 としました(いずれも見かけの大きさ比較)。
     このうちの「最近」と書かれた場所の月がスーパームーン(Supermoon)。反対に「最遠」の月は、平均より約5%小さい。最遠の状態だと比較に描いた太陽より月は明らかに小さい。こんな状態の時に日食が起こると、皆既日食にならずに金環日食となります(2012年5月21日に日本の広い範囲で見られた金環日食は、ほぼこんな状態の月による日食でした)。

    PoormoonとSupermoon  ちなみに、左の写真は最遠と最近の距離での月の大きさを比較したものです(一枚の満月の写真を加工したもの)。
     右側が最近の状態の月、いわゆるSupermoon。右側は最遠の状態の小さく見える月です。片やSupermoonならこちらはPoormoon とでも云うのでしょうか? (Poormoon は、かわうその勝手な造語です)
    こうして比べてみると結構違うものですね。
  • 最近(?)のスーパームーンの日付 
    1990〜2050年のスーパームーンの日付
    (近地点通過の瞬間± 6時間以内に新月・満月となるもの)
    (B) ○ 1990/12/02 (A) ○ 1992/01/20 (B) ○ 1993/03/08 (B) ○ 1994/04/26
    (B) ○ 1995/06/13 (B) ○ 1996/07/30 (B) ○ 1997/09/17 (B) ● 1998/03/28
    (B) ○ 1998/11/04 (B) ● 1999/05/16 (B) ● 2000/07/02 (B) ● 2001/08/19
    (B) ● 2002/10/06 (A) ● 2003/11/24 (B) ○ 2008/12/13 (B) ○ 2010/01/30
    (B) ○ 2011/03/20 (A) ○ 2012/05/06 (A) ○ 2013/06/23 (A) ○ 2014/08/11
    (B) ○ 2015/09/28 (B) ○ 2016/11/14 (B) ○ 2018/01/02 (B) ● 2020/10/17
    (B) ● 2021/12/04 (A) ● 2023/01/22 (B) ○ 2028/02/11 (B) ○ 2029/03/30
    (B) ○ 2030/05/17 (B) ○ 2031/07/05 (B) ○ 2032/08/21 (B) ○ 2033/10/08
    (A) ○ 2034/11/26 (B) ○ 2036/01/13 (B) ○ 2037/03/02 (B) ● 2039/12/16
    (B) ● 2041/02/01 (A) ● 2042/03/22 (A) ● 2043/05/09 (A) ● 2044/06/25
    (B) ○ 2048/05/28 (B) ○ 2049/07/15 (B) ○ 2050/09/01  
     スーパームーンがいつ起こるのか、1990〜2050の間でスーパームーンと呼ばれそうなものを計算したものが右の表です。
     表は月が近地点を通過する瞬間の±6時間以内に満月または新月となるものを抜き出し、近地点通過の日付を表示したものです。
    (A),(B)は近地点通過と満月または新月の瞬間の差の区別で、(A)は±1時間以内、(B)はそれ以外です。また、○は満月を●は新月を示しています。日付は日本時によるものです。
    ±6時間という条件で探すと、大体一年に一度程度の割合でスーパームーンと呼んでよさそうな条件の月が現れるようです。

    ※注意・・・±6時間とした理由 
    近地点通過の瞬間と満月または新月の瞬間の差が何時間までならスーパームーンかといった定義がはっきりしませんので、計算結果が多すぎも少なすぎもしない程度ということで±6時間としてみました(±12時間としてみたら数が多すぎました・・・)。それ以上の深い意味はありません。

◆説明で省略したこと・・・「月は地球の周りを回っている」は嘘?
 これまでの説明では、月は地球の周りを公転しているという説明をしてきましたが、これは実は正しくありません。正しくいうなら、

  月と地球は、その共通重心の周りをお互いに公転している

というべきでしょう。月の質量は地球の質量の約1/81。かなり小さいことは確かですが、それでも無視できるほど小さくはありません。このため、地球と月は互いの共通重心を中心として、180°の角度を保ったまま、それぞれに公転運動をしているのです。共通重心という支点を持った棒の端にゾウ(地球)が乗り、その反対の端に子供(月)が乗ってクルクル回っているようなものです。
 共通重心から月重心までの距離Aと地球重心までの距離Bの関係は
  A:B = 地球質量:月質量
  A+B = 地球重心と月重心の距離
共通重心と月と地球の距離となります。その関係関係を示したのが右の図(模式図ですので月と地球の大きさとその距離の関係はいい加減です)。
月と地球の距離として平均距離の384400kmを使うと、共通重心と地球重心の距離Bは約4700kmとなります。地球の半径は約6400kmですから、地球と月の共通重心は地球の内部にあることになりますので、月の運動の概略を話すような場合は「月は地球の周りを回っている」とこの辺の事情を省略して説明することが多く、今回のスーパームーンの話でも省略させていただきました。
余 談
Supermoon の半月後の金環日食
 スーパームーンの話を書くきっかけとなったのは2012/5/6の満月。その満月の半月後の5/21の新月の日には金環日食が起こりました。

 このときの金環日食は、日本の広い範囲で見ることのできた大変条件のよいものでした。 5/6に近地点で大きな満月となった月が、その半月後の新月の日に遠地点近傍で日食を起こしました。このときの月は遠地点を通過して間もなくでしたので、見かけの大きさは小さくて、私の勝手な造語でいえば、頼りないPoormoonの状態。

 見かけの月の大きさが小さかったので、このPoormoonの新月は太陽全部を隠しきれず、金環日食になりました。

  ああ、これがスーパームーンの時に起こった日食だったら
  皆既日食になったのに。
  惜しいことしたな・・・

とぼやいたかわうそでした。
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