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三伏の候・・・暑中見舞いの頃
   暑中見舞い拝啓、三伏の候 

という時候の挨拶で始まるのが昔の暑中見舞いの定番だったそうな。
暑中見舞いはおろか、年賀状さえ出さないずぼらな私が言うのもなんだが、近頃の暑中見舞いといえば、

暑中お見舞い申し上げます 

と判で押した(最近は判で押したじゃなくてプリンタで印刷したようなかな)ような書き出しで始まるものばかりでいささかつまらない。

ここは一つ、「三伏の候」なんてちょっとレトロな響きの言葉を使って、他の暑中見舞いとの差別化を図ってみるなんて言うのはどうだろう。

さて、このちょっとレトロな響きの「三伏」だが、そもそも三伏とはなんぞや?
と、ようやくここから「暦のはなし」である。
  1. 三伏の候とは? 
    三伏(さんぷく)とは、暦注(れきちゅう)の一種で日本最古の具注暦(ぐちゅうれき)にも記載されている。
    新暦でいえば三伏は7月中旬〜8月上旬にあたり、夏の勢いが大変盛んで秋の気を伏する(降伏するの「伏」ですね)ところから三伏。

    一年で一番暑い時期に当たりますから、夏の季語となりまた、酷暑の同義語としても使われるようになった。
    そういうわけで、「三伏の候」と書けば「酷暑の候」という意味で、暑中見舞いにはぴったりの言葉というわけだ。
     
  2. 三伏の期間はいつからいつ? 
    三伏とは初伏(しょふく)・中伏(ちゅうふく)・末伏(まっぷく)に該当する日(三伏日と総称する)を指します。暦注としては日本の最古の具注暦(暦注を記載した暦)にも書き込まれていたという大変に由緒正しい暦注である。

    三伏日の撰日法(せんじつほう:どうやって計算するかという決まり)はどんなものかというと、いくつか「流派」があるので、本によっては日付が違うこともある。こよみのページでは
    • 初伏 ・・・ 夏至以後、三度目の庚(かのえ)の日
    • 中伏 ・・・ 夏至以後、四度目の庚の日
    • 末伏 ・・・ 立秋以後、最初の庚の日
    という方式で計算している(これが一番普及しているようだから)。
    ちなみに、この方式で近年の三伏日を計算してみると次の表のようになる。

    2013-2022年の三伏日
    西暦年初伏日中伏日末伏日
    20137/137/238/12
    20147/187/288/07
    20157/137/238/12
    20167/177/278/16
    20177/127/228/11
    20187/177/278/16
    20197/127/228/11
    20207/167/268/15
    20217/117/218/10
    20227/167/268/15

    既に書いたとおり三伏日の計算基準は夏至と立秋。両者の日付はここしばらくは
    夏至 6/21 or 22 , 立秋 8/07 or 08
    また、日の十干は十日毎に繰り返すからこれを組み合わせて考えれば

    三伏の始まり(初伏日)は 7/11 〜 7/21 
    三伏の終わり(末伏日)は 8/07 〜 8/17 

    の間にあることになる。

    ちなみに、これを書いているのは2006/7/19。今年は初伏が遅い年に当たっていたので、かろうじて三伏に入る前に記事がアップ出来た。助かった(2006年の初候は7/20)。
     
  3. 三伏の意味するもの 
    撰日法に 「○×以後の、△度目の庚の日」 とあるのでピントきた人もいるはず。三伏日は陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)から生まれた暦注の一つである。

    五行説は何でもかでも「木・火・土・金・水」の五つに分類し、この5つ(五行)の性質からそれぞれの関係を説明しようとする説である。この説で季節に割り振られた五行と日の十干に割り振られた五行との関係から、「三伏日」が決められる。参考までに季節と十干を五行で分類すると次の表のようになる。

    五行による季節と十干の分類
    五行
    季節
    (兄)
    (弟)
    ※・・・土性は土用(どよう)に配当
    左の表で判るとおり

     夏は「火」の季節

    理由は・・・言わなくてもわかりますね。暑い(熱い)ってこと。
    また日には十干(甲乙丙丁・・・)が順に割り振られているが、この十干のうち「庚」は金の兄(かのえ)と書く。最初の「金」が五行説の示す性質を、後の「兄」は陰陽説の「陽」で性質の強弱を表します(概ね陽は「強」、陰は「弱」を意味する)。とすなわち陰陽五行説では

     庚の日は「金」の気が盛んな日

    という意味になります。

    陰陽五行説は古代の素朴な科学仮説で
     木は燃えて火を生み出す ・・・ 木生火 ・・・ 相生説(そうじょうせつ)
    という組み合わせで相性の良さを
     火は金を溶かす ・・・ 火剋金 ・・・ 相剋説(そうこくせつ)
    という組み合わせで相性の悪さを表します。

    三伏の頃は「火の性」である夏が最も盛んな時期(暑い時期)で、この「火の性」は「金の性」にとっては最も苦手な相性の悪い性と考えられますから、

     火の性の気が激しい季節(夏)の
     金の性の気が激しい日(庚の日)は
     季節と日の相性が悪い佳くない日

    と考えられます。
    また、金性は季節では「秋」を示す気ですので金性の日である庚の日を夏の性が押さえ込むという図式は、

     夏の気が秋の気を押さえ込む

    という意味にもとらえられます。夏が秋を押さえ込む(夏に秋が伏する)日ということで、「三伏日」というわけです。
    暦注としての三伏日は、

     「旅行、種まき、婚姻を忌む日」

    とされています。もちろんこの辺りの意味も陰陽五行説で考えられたもの。陰陽五行説は大昔は科学的仮説の一つであったわけですが、今は単なる迷信。迷信の陰陽五行説から来る三伏の暦注的意味ももちろん迷信以外の何者でもありません。あまり真剣に捉えて悩まないように。
     
  4. 季節の言葉としての三伏 
    暦注として見れば三伏はただの迷信ですが、迷信とはいえ長らく暦に書き続けてこられたので今では「三伏」といえば真夏の暑さを彷彿とさせる言葉として夏の季語ともなっています。
    暑中見舞いにさり気なく「三伏の候」なんて言葉を織り込んでみるのなんて、ちょっとしゃれた感じがしませんか?。
     
余談
兄弟と書いてえとと読む
十干は、「甲→木の兄(きのえ)」「乙→木の弟(きのと)」のように読む。
このように陰陽五行説での意味で「兄弟」と書いた場合はこれを「えと」読む。
十干は十二支と組み合わせて六十干支を作り、「丙午(ひのえうま)」「壬寅(みずのとのとら)」などと使うことが多く、このためか本来は「兄弟」と書いて「えと」と読んでいたのがいつの間にか「干支(えと)」として使われるようになってしまった。
更に、「干支(えと)」といえば十二支を指すように変化してきて、

 質問:あなたの「えと」は?
 答え:「寅」です。

なんて風に変わってきてしまいました。「えと」の兄弟から十二支への変遷でした。
 
今年の三伏
夏の気が盛んな三伏の季節となりましたが、今年はまだ「梅雨」の中。
まだ「暑中見舞い」は書けませんね。
(梅雨が明けても書かないけどね)
※記事更新履歴
初出 2006/07/19
修正 2014/07/02 (三伏の日付表の更新 2006〜2015 → 2013〜2022)
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