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出産は満月の時?
    「満月の日に出産が増える」

 会話の中で、時々聞くことがあります。これは本当でしょうか?
 こよみのページの人気コーナーの一つに月齢カレンダーがありますが、そのためか月齢と出産の関係を質問されたことも1度や2度ではありません。私自身は医学の方面に関しては全くの門外漢ですので、「○○です」と断言は出来ませんが、この辺の研究にはA.L.リーバー博士の書いた世界的なベストセラー、
 「HOW THE MOON AFFECTS YOU」・・邦題「月の魔力」
がありますので、この本を参考に、さらに天文現象などの簡単な説明を加えて書いてみます。参考にして下さい。

月と潮汐
 地球には月という、地球には大きすぎる衛星があります。月の質量(まあ、体重みたいなもの)は地球の1/80。木星や土星には月より大きな質量の衛星もありますが、それはその衛星の母惑星の質量と比べれば1/数万ですから、正に桁違い。母惑星の質量と衛星の質量比がこんなに大きな衛星は、地球の月と冥王星の衛星カロンだけです。
 この大きな月を持つため、地球はこの月からいろいろな影響を受けます。その最たるものが潮汐です。潮汐というと難しそうですが、要するに海の潮の満ち干を起こす現象だと言えば、なるほどと思っていただけるのでは無いでしょうか。
 地球と月はお互いを引きつけあう引力と、軌道を巡る速度によって生み出される遠心力が釣り合っているため、墜落することもなく離れてしまうわけでも無いことはご存じのとおりですが、この引力と遠心力のバランスは地球全体で見れば釣り合っているのですが、地球上の特定の部分についてみてみると引力が強かったり、遠心力が強かったりしてバランスがとれていません。
わかりやすく言うと、月に面している場所では
   月の引力  遠心力 (引力の方が強い)
となり、その反対の場所では
   月の引力  遠心力 (遠心力の方が強い)
と言うことになります。
左の図の
右向きの→は引力
左向きの←は遠心力です。
遠心力は同じですが、引力は月からの距離により変化します。
海は、月の方向とその反対方向に膨らみます(満潮)。
これがこの「引力 − 遠心力」が潮汐を起こす原因で、潮汐力あるいは、起潮力と呼ばれます。このことからわかるとおり、潮汐力はそれを引き起こす元となる天体の方向と、その正反対の2方向で最も強くなります。月が引き起こす潮汐は月を真上に見る位置と、その地点のちょうど地球の裏側の地点で最大となると言うわけです。
 潮汐は月だけが起こすわけでは無く、太陽が起こす部分もあるのですが、太陽の起こす潮汐は月の起こすそれに比べ1/2程度と小さめです。
 満月・新月の時期は月と太陽の潮汐力が強めあう位置関係にありますので、通常より大きな潮汐が起こります(大潮)。これに対して半月の頃は月と太陽の潮汐の方向が90°ずれるため、潮汐は小さく(小潮)なります。
 また、潮汐というと海の潮の満ち干ばかりだと思われがちですが、この力は地球上全てのものに及び、たとえば我々の生活する地面もおよそ30cm程高くなったり低くなったりしていると言われています(固体潮汐)。
 
バイオタイド理論(biological tides theory)
 前述したとおり、潮汐力は地球上の全てのものに加わる力ですから、生物もこの力の影響を受けているのではないかと言う仮説をバイオタイド理論と言います。提唱者は前述A.L.リーバー博士他多数。
 リーバー博士は元々精神科の医師ですが病院での臨床経験から、従来から言われていた月と人間の精神状態・肉体の状態などの関連が単なる迷信でないと確信するようになり、様々な事例を集め、統計的分析を行い、その確信のいくつかが現実に起こっていることを証明しています。
 
月と妊娠・出産の関係
 リーバー博士その他の研究によって、妊娠や出産と月の関係がいくつかわかってきています。
1.月経周期
 女性の月経周期の平均は、平均朔望月周期(新月から次の新月までの日数)と一致している(平均朔望周期 29.53日)。
2.平均妊娠期間
 人間の平均妊娠期間(265.8日)は、平均朔望周期の9倍である。
   [ 265.8 = 29.53 * 9 ]
 一般に、妊娠期間は「十月十日」といいますが、この月は数えですし、日数の数え方も受精してからの日数では無く、直前の月経の始まりからですので、この点は誤解の無いように。
3.出産時期と月齢
 新月時期及び、満月時期には、他の時期に比して出産が増加する(約1割程度らしい)。
 なお、この件に関しては「月の魔力」の日本語翻訳を行った数学者の藤原正彦博士が日本の事例を調査。日本でもこの傾向があることを確認している。ちなみに、新・満月当日はやや減少気味で、出産のピークは新・満月の1日前と3日後にあるそうです。
満月・新月からの日数と出産数
(48時間移動平均・藤原正彦氏による)
月齢と出産数の関係グラフ
 そこはそれ、この藤原博士の専門が数学と言うこともあり、きちんと統計的な有意性の検証もなさっておりました。それによると、この増加傾向が全くの偶然によって起こる確率は2.6%。偶然として考えるのは難しい(逆に言えば、何らかの関係が存在する確率が高いということ)という結果でした。
 
 
4.現象の地域性
 月齢と出産の関連は、低緯度地方でより顕著に見られ、高緯度地方ではその関連性が弱くなる。また、新・満月の時期と出産のピークの時期のずれは、高緯度へ行くほど大きくなる傾向がある(緯度効果と呼ばれる。この現象については「影響の蓄積効果」で説明されるが、この辺は省略)。
 
 緯度が高い国々(北極や南極に近い)では、新・満月と出産の関係は明確でなくなりますが、月と太陽による潮汐は緯度が高い地域では小さくなりますので、納得できる結果です。
 この他にも女性の場合、産まれたときの月や太陽の位置により、その後の生殖リズムが確定するという説もある。
(興味深いのでさらに調べてみたところ、平均妊娠期間は人間以外にも同様に平均朔望周期のちょうど整数倍になる動物が結構あることがわかりました。たとえば、ゾウなど。)
 
体内時計と月
 人間や動物には体内時計という、独自の時間周期を持っている。たとえば、外界と遮断した部屋で生活する実験をする(昼や夜の区別がつかないようにする)と、人間は睡眠・覚醒などの周期がやがて24時間50分前後で繰り返すようになると言われます。これが人間の体内時計における1日の長さです。月の出・月の入の時刻は毎日少しずつ遅れることは日常でも体験出来ることですが、この遅れが1日に約50分前後。どうやら、太陽の光と切り離して生活すると人間の1日は月の周期にあってしまうようです。


 大変断片的な事例の羅列になってしまいましたが、いかがだったでしょうか。妊娠の期間などから考えれば、「人間は受精した時の月齢とほぼ同じ月齢の時に産まれる」ということになりそうです。
 ただ、最近は出産時期を医学的にある程度コントロールすることが多くなったため、出産と月齢の関係などの正確な統計資料を得るのは難しくなりつつあるそうです。。

 また、「出産は、潮の満ちるときに・・・」というような話もありますが、この辺については定かな資料がありません。それに海の潮の満ち干は、地形の影響を強く受けるほか、海水の粘性などもあって潮汐力が最大となるときに満潮となるわけでは、無いのでますます調べにくいかな?

 ちなみに、今回の話で登場した「月の魔力」ですが、東京書籍から現在も出版されております消費税を含めて1600円程ですので、さらに詳しく知りたい方はこちらの本を読んでみることをおすすめします。
(最近、この本に類似した本がいくつか出版されていますが、中には明らかに間違った記述のある本もあり、変な本を購入してしまわないように・・・。老婆心でした。)

余 談
藤原正彦さん
 「月の魔力」の翻訳者、藤原さんてあの作家、新田次郎さんの息子さんってご存じ?。現在は、お茶の水大学の教授。エッセイ集も何冊か出ています。
身近な実例
 現時点で私には子供が1人おります。調べてみると彼の産まれた日は満月の翌日でした。偶然かな?
身近な実例・・・その2
 その後、6年の間隔をあけて2人目が生まれました。彼の産まれた日は満月の前日でした。偶然かな???
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