寒い夜
(2005.1.13[木])
「おお、寒い」 一歩外に出た途端、その言葉が出た。 指先と鼻の先に、乾いた寒さを感じる。 寒の内か、成るほどと納得する寒い夜。
一頃よりは心なしか日は長くなったとはいえ、仕事を終えて職場を後にする頃には冬の日はすっかり暮れ果てて、空には冬の星座が瞬いている。
通りに出れば、鈴掛の木の葉の向こうに青白い街灯の光が透けていた。
通りは閑散として、カサカサと紙細工の葉のように乾いた葉擦れの音をたてる鈴掛の木だけが、歩道に影を落として寒い夜の中に立っていた。
▲ ▼
初詣
(2005.1.4[火])
初詣は元日にと思っていたが、一日遅れの二日となってしまった。 場所はここ十年来なじみとなった村社。 何の変哲もない、如何にも田舎の村社であるが、その村社然とした雰囲気が好きだ。 社殿を取り囲む木は照葉樹が多く、緑は多いがその割に境内はからりとして明るい。
元日に故郷の福島に電話をすると、大分雪が降ったとのこと。 子供の頃、家族で詣でた神社もまた村の社であったが、鬱蒼とした杉の木立の間ににあり、昼でも薄暗く近寄りがたい雰囲気だった。 あの神社はきっと今日も、雪を戴いた杉木立の影の中にひっそりと建っているのだろうと、電話をしながら想像していた。
子供の頃に初詣をした神社とはうってかわってカラリとした神社で、カラリと晴れた空の下で初詣を済ませ、帰りに子供たちのお守りを買う。 お守りや破魔矢の置かれた台には
「お守り・五百円」
と書かれた紙が貼られ、台の隅にお金を入れる缶が一つ置かれていた。地元の人しか訪れることのないこの神社ならでわの風景である。 鳥居をくぐって表の道路へ出てから、一度神社を振り返ってみると、神社の石垣の朱色の柵に購入したばかりのお守りらしいものが一つぶら下がっていた。 誰かが境内で落としたものを、また誰かが、結びつけておいたものだろうか。
落ちたお守りはきっと、一人を守るより広く大勢を守りたくて、ポケットから滑り出したに違いない(と思うことにしよう)。 柵に結びつけられて揺れていたお守りは、落としてしまった人にも、拾って結びつけた人にも、そしてこの写真を目にした全ての人にも、佳い一年が訪れるように、きっと見守ってくれているのだろう。
▲ ▼
|