九月五日、二百十日から四日遅れて嵐がやってきた。小一時間前には視界を閉ざすざんざ降りの雨。雨は小止みとなって、風が嵐の舞台の主役となっていた。夕暮れの闇が迫る頃、防潮堤に沿って車を走らせると、飛沫をあげて寄せる波が見える。海と空、二色の鈍色の間に波頭の白い線が引かれる。時折、風にまきあがる飛沫が防潮堤を越えて道路を濡らしている。嵐の中心は遙か九州の沖合。千キロを超えて続く雨雲の下を、千キロを越えて渡ってきた波が打ち寄せる。嵐の本体がこの波に追いつくのは二日後。二百十日を六日過ぎた頃だろう。
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