かわうそ日記 ( 2009年02月 ) こよみのページ こよみのページ
椎 茸男とその生涯  (2009.2.14[土])

私の名前は椎 茸男(しい たけお)です。
誕生日ははっきりしませんが、顔を出してからということなら、2009/2/10頃でしょうか。生後、 4日ほどです。

名前はとりあえず椎 茸男としましたが、もしかすると椎 茸子(しい たけこ)かもしれません。まあ、そんなことはどうでもいい取るに足りないことです。

もとは、椎茸栽培用のホダギに植え付けられた菌株だったかもしれませんが、今は捨てられていた雑木の切り株から生えています。
栽培されているわけではないので、飼い椎茸ではなくて、野生化した野良の椎茸です。
人に育てられているのではない、自分で育ってきたのだいう誇りと胞子を持っています。

そんな誇りと胞子を持って生きてきた私ですが、この思い出深い切り株を去る日が間近に迫っています。それはある人間によってこのキノコの楽園が発見されてしまったからです。

きっと皆さんが私のこの姿をごらんになる頃には私はこの世から消えてしまっていることでしょう。ひょっとするとあの人間の家の鍋の中で私はバラバラになって浮かんでいるかもしれません。

その名は、椎茸男それでも、今日味わう水は甘く、笠に感じる日差しのぬくもりは優しい。

切り株から顔を出してわずか 4日ばかりの私の一生でしたが、私は幸せでした。
最後の瞬間がどんなものであったとしても、私は幸せに生きた記憶を持ってあの世へ旅立ってゆくでしょう。

ですからどうか皆さん、私の幸せだった時代のこの姿をいつまでも忘れないでいてください。そしてもし思い出すことがあるのなら、椎茸男は本当に幸せなキノコだったのだと、そのことだけを思い出してください。

  「椎 茸男とその生涯」より。


御弓行事(御弓祭)  (2009.2.11[水])

馬子にも衣装とはよく言ったものだと思いました。

初詣には歩いて参詣している村社、下里神社では毎年二月十一日に御弓祭が行われます。 

裏に「鬼」と書かれた十間先の的をめがけて六人の射手が替わる替わる矢を射るという行事で、邪気を祓い無病息災と五穀豊穣を願う行事です。
的の中心に矢が当たれば、厄落としが完了するのだとか。


とどこかから借りてきたような説明をしましたが、実はこの行事を見たのは今年が初めて。各地に残るお祭り弓の行事ですが、いつ頃からこの神社でも行われているのはも知りません。
下里神社の主祭神は武神の建御名方神なのでそれと関係があるのかも(きちんと調べてなくてすみません)。

下里神社・御弓行事1さて、馬子にも衣装に戻りましょう。
射手となるのはみな地元の中学一年生。
普段近所で見かける子たちですが、その子供たちも御弓行事の装束を纏って弓を引く姿となるとまるで別人です。いつの時代から抜け出てきたものやらという錯覚さえ起こしてしまいそう。

 格好いいね

と周囲の見物人からもそんな言葉が漏れるところを見ると、変われば変わるものだなと思ったのは私だけではないようでした。

ただ肝心の厄落としの実力の方はというと、こればかりは装束が変わっただけでは如何ともしがたいようで、なかなか「的中」とはなりませんでした。
射手が一巡し二巡しても的中はありません。

 的の真ん中に当たるまで終わらないらしいよ 

本当にずっと続いたらどうしようと見物の大人たちが不安を抱き始めた頃、

 的中! 

下里神社・御弓行事2と世話人の声。しぶとかった今年の厄もようやく落ちてくれました。
厄が落ちて、御弓行事が終わると的は細かく砕かれて縁起物として集まった人たちに配られました。

私も一つもらってきました。
見ると受け取ったその的の破片には矢が刺さった穴がありました。
「穴が通じているとは、願いは通じるかな」
いい一年になりそうです。


下里神社 (http://www.7kamado.net/simosato.html)


何処かで見たような・・・  (2009.2.2[月])

何処かで見た覚えがあるけど、何処だったかな

と自分の映した写真を眺めて首を捻りました。
カメラの小さな液晶画面に映し出されているのは蒔絵の文様。
何処かで見たような、そんなおぼろな記憶はありますが
蒔絵のような私の日常と蒔絵とにはまるで接点がありません。

散々首を捻った後にやっと気が付きました。
蒔絵ではなくて、実物だと。
何のことはない、綿毛をすっかり失った薄の穂の写真です。
仕事帰りにふと目にとまった坊主頭の薄の穂を、
何の気無しに写しただけの写真でした。

写っていたのは金の蒔絵ではなく坊主頭の薄、
背景は黒々とした漆の色ではなく、
漆のような漆黒の闇の色。
それがカメラの液晶に映し出された模様の正体でした。

何処かで見た器の模様ではなくて、
いつも見かけた身の回りの風景。
それが、何処かで見たようなものの正体でした。


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