上弦の月と下弦の月はどう見える?
半月は別名、弓張り月あるいは、弓月と呼ばれます。月の形を弓に見立てたわけです。

そして、弓に見立てた場合にその「弦」にあたる欠け際が上を向く場合を上弦の月、下を向く場合を下弦の月と呼び区別します。

よく見かける、上弦の月下弦の月の説明ですね。ところが、このいかにももっともらしい説明を鵜呑みにするととんでもない誤解をする事があります。さてそれはどんなことでしょう。
◆次の文章を読んで設問に答えなさい。
足下の起伏がぼんやりと見え始めた。暗闇に目がなれたためか、それとも本当に明るくなったためだろうか。いずれにせよ、歩きやすくなった。おかげで思ったより早く丘の上にたどり着くことが出来た。

丘の上にたどり着くと視野は一気に広がり、遠くの山並から姿を現したばかりの下弦の月を見ることが出来きた。

思えば今日は二十三夜。もうその月が昇る時刻となったのか・・・

  (獺後幕暦 著  「暗夜徘徊」より)
 これは日本を舞台とした物語です。

どっちが下弦?設問1.月が見えた方角を選べ。
    A.東   B.西   C.北西

設問2.文中の人物が見たと思われる月に近いものは右の図の、A,B何れか。

設問3.「丘の上にたどり着いた」のは、いつ頃か
    A.夕方  B.真夜中 C.明方  D.真昼
回答は、この解説文の末尾にあります。

いきなりで面食らったかもしれませんが、この「問題」、今回の話題とは密接に関係するのです。では、ここからが本当の解説記事。

上弦の月の月出・正中・月没
解説・上弦の月
下弦の月の月出・正中・月没
解説・上弦の月

右に上弦の月と下弦の月の、「月出」「南中」「月没」ごろの様子を描いてみました。図中の左から月出・南中・月没となります。この図を見ながら設問をもう一度考えてください。

設問1は、「月が昇ってくる方角」ですから、まあ「東」と答えるのが妥当で、この辺は大きな問題はないと思います。
設問2は、下弦の月が昇るとき、弦はどっちを向いているかが解れば簡単です。下弦の月ですから、弦が下になった「B」・・は間違いで、本当は「」。
図をご覧にならば解るとおり、上弦・下弦といっても常に「上弦は弦が上」「下弦は弦が下」となるわけではありません。どうやらこの関係が成り立つのは月が沈む頃だけのようです。
と言うわけで、「下弦の月が昇る頃」は月の弦は上側にあるので、Aが正解となります。
設問3は、常識的な質問だったはずですが、最近は人工の明かりが明るすぎ、夜に月が出ていても気付かない程になったため、「問題」となり得るようになりました。
もう一度月出・正中・没の図をご覧ください。背景の色が濃紺の箇所は深夜を、青い部分が明け方(夕方)を、薄い水色は昼間を表しています。この図からすると下弦の月が昇る頃は、深夜。よって答えとしては真夜中を選ぶことになります。

このように、上弦の月、下弦の月と言っても「弦」がその名の通りになるのは、月が沈む頃だけ。くれぐれも誤解の無いように。
ついでながら、月のどちらが「凸」になるかを考える場合、太陽がどっちに有るかを考えましょう。太陽に近い側が凸になっていると考えれば間違い有りません。

問題の解答です。
設問1. A.東   設問2. A.(上の図)   設問3. B.真夜中

余 談
今昔
「今夜、月があるかどうか」がわからないというのは人事では無くなりました。私自身も、「あれ、今日は月が出てたかな?」と思うことが増えています。ちょっと寂しいですね。
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