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【雁風呂】(がんぶろ) 浜辺の木を薪として風呂をわかすこと。 雁が秋にくわえてきた木を、春にはくわえて帰ると考え、残った木は日本で 死んだ雁のものとする俗信から、青森県外ヶ浜で雁を供養した風習。 雁供養。春の季語。 《広辞苑・第五版》 2007/1/9号のコトノハに、 【葦を啣む雁】 (あしをふくむかり) http://koyomi8.com/doc/mlko/200701090.htm という話を書きました。今回の雁風呂はこの「葦を啣む雁」と一対を為す言 葉です。 「葦を啣む雁」は、中国の淮南子(えなんじ)という本に書かれた話から生 まれた故事で、準備がととのったこと、手抜かりが無いことを表す言葉とし て使われます(といいながら、私自身は使った事はありません)。 淮南子には渡り鳥の雁が、遠く海を渡る前に海上で翼を休めるための葦を用 意し、これをくわえて渡りの旅に出たという伝説が紹介されています。 秋に葦をくわえて大陸から日本に渡ってきた雁は、津軽の浜にたどり着くと、 くわえてきた葦や小枝をこの浜に落として、身軽になって更に南下を続けま す。そして春になり北帰行を始め、再び海を渡る段になると津軽の浜で秋に 落としていった葦や小枝を拾って飛び立っていくといわれました。 雁の北帰行が終わる頃、秋から春の間に命を失ってこの浜までたどり着くこ との出来なかった雁の数だけ、浜には小枝が残されます。 近隣の人々はこの小枝を拾って風呂をたて、旅の途中で命を失った雁を供養 したと言われ、この供養の行事が雁風呂と呼ばれました。 大変によくできた話ではあるのですが、実際にはこうした事実は無いとの事 で淮南子の内容を知っていた都人が、その話と津軽の浜の冬の漂着物とを結 びつけて生み出した物語のようです。 ちょっと残念な気にもなりますが、出来すぎた物語とは、案外こんなものな のかも知れませんね。
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