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【青葦】(あおあし)
 夏の水辺に青々と茂っている蘆。夏の季語。
  《広辞苑・第五版》

 辞書の引用から始めると、書きやすい。それに辞書が詳しく書いてくれてい
 ると自分で文章を考えなくて済むので楽なのですが、本日の言葉はそんなに
 甘くありません。引用しようとしたら説明は何と一行。自力で頑張らねば。

 葦は水辺に生える植物で、分布は日本全国。皆さんにもなじみのある植物だ
 と思います。
 私の生まれ育った家は川のすぐ近くでしたので、葦はなじみの植物。端午の
 節供となればこの葉で巻かれた粽が我が家の定番の食べ物でした。

 葦は春先に生えだし、水面にその尖った姿を見せ始めます。この様子が動物
 の鋭い牙や角を連想させることから、「葦牙(あしかび)とか「葦の角(あ
 しのつの)」とか呼ばれ、こちらは春の季語とされています。
 こうして生まれた葦も初夏のこの時期になると大分背が高くなり、幅広のそ
 の葉も青々と茂り、ところによっては一面の緑の葦の原を形成します。
 この葦の青々と茂った様が本日の言葉、「青葦」です。

 現在私が住む家の周りには田んぼが広がっていますが、その間に幾つか休耕
 田があります。今の時代ですから、田んぼを続ける人がいなくなって荒れて
 しまったものでしょう。
 その休耕田ではかつての主役、稲に替わって葦が茂っています。近寄ってみ
 れば葦の背丈は既に私の背丈を超え、視界は青葦で覆われます。

 青葦の茂る休耕田と畦一つ隔てた場所には田植えが済んで程無い小さな稲が
 育ちつつある田んぼがあります。既に大きくなった葦が隣の田んぼの小さな
 稲の苗を見下ろしている様子は、大人が赤ん坊を眺めているかのよう。
 考えてみれば、葦も稲もともにイネ科の植物。葦が遠縁の稲の赤ちゃんを本
 当に見守っているのかも知れません。

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