日刊☆こよみのページ スクラップブック
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【朏】(みかづき)
音読み:ヒ (呉・漢)
訓読み:みかづき
{名詞}みかづき。陰暦の三日ごろの形の見え出した月。
「三月惟丙午朏(=三月惟れ丙午の朏)」『書経・召誥』
会意文字。「月+出」で、月が見えはじめることをあらわす。ヒということ
ばは、斐(ヒ)(ひらく)・排(左右におし開く)と同系で、はじめてとば
りを開いて姿を出すの意を含む。
《学研 漢和大字典》
明治の始めまで日本で長く使われてきた暦は太陰太陽暦でした。
現在でもいわゆる旧暦として、年中行事などにはこの暦が使われることがあ
ります。
日本で使われたこの太陰太陽暦は中国から伝えられたもので、日本に入って
きた時には既にその暦の「暦の上の月」は実際の天体の月の朔(新月)から
始まる暦となっておりそれが当たり前でした。
ところが考えてみれば簡単に分かるとおり、これはなかなか不思議なことで
す。なぜなら新月は実際に見ることの出来ない月だからです(例外は、日食
が起きる場合)。
暦は天体の運行を観測して組み立てられたシステムですから、最初からこの
見えない月、つまり観測出来ない月である新月から始まる「暦の月」を作る
ことは出来なかったはずで、これに代わって使われたのが、新月を過ぎた後
に最初に見えた月でした。そしてこの「最初に見えた月」を表す文字が、今
日紹介した
朏(みかづき)
でした。月が最初に出たと言うことを「月+出」で表している、滅多に見る
ことのない文字ですが、その意味からすると大変分かりやすい文字でもあり
ます。日本で使われた太陰太陽暦は長い年月の研究の結果、この朏から真の
新月の日付を遡って推測出来るようになってから出来た暦でした。
ちなみに、理論より実際の天体観測を優先する実測主義をとるイスラムの太
陰暦(ヒジュラ遷都暦など)では今でも新月後最初に視認された月、つまり
「朏」をもって暦の月の初めとしています。
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