日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)

■秋の日は釣瓶落とし・・・その3
 さあ、今日こそは『秋の日は釣瓶落とし・・・その3』です。
 予定外に長くなったので、昨日に引き続きお暇な時間にじっくりとお読み下
 さい。ではスタート。

 秋の日は釣瓶落としという言葉を、

  1.日没時刻が早くなること
  2.地平線にかかる夕日地平線可にが沈むまでの時間が短いこと。
  3.日没から、あたりが暗くなるまでの時間(薄明時間)が短いこと。

 観点から考えてきました(1 は直ぐ却下しちゃいましたが)。昨日の長い
 番外編で2,3の起こる原因まで説明しました。目出度し。
 と言いたいところですが、まだ問題が残っています。今までの説明からは、
  
   秋(と春)の日は釣瓶落とし

 とは言えますが、(と春)がくっついてきてしまいます。でもだれも

   春の日は釣瓶落とし

 なんて言葉を聞いたことは無いはず。なぜ春はダメで、秋だけなの?

◇春と秋の気象条件の違いか?
 一昨日「薄明時間」の話をしましたが、薄明時間は元々が明るさを基準にし
 たものですから、実際の薄明時間は単に太陽の高度だけで決まる物ではなく、
 そのときの大気の状態にも左右されます。
 
 薄明は、上空の大気層に太陽光を散乱させる塵や水蒸気が多いとその明るさ
 の変化は、ゆっくりしたものになります。もしこの塵や水蒸気が春は多くて
 秋は少ないと言うのなら、秋だけ夕日が釣瓶落としと言われる説明がつきま
 す。理科年表から大気混濁度の月平均値を拾ってみる(例松本市)と、

  1月 3.1 3月 3.8 5月 4.7 7月 5.2 9月 4.4 11月 3.5

 濁度なので、塵等が多いほど数値が大きい。結果から見ると、春分と秋分の
 時期の数値を見ると大差ない(どころか、ちょっとだけ春の方がいい)。
 この予想は外れたか?

◇気象条件 + 天文学的効果、そして心理
 気象条件だけだと春と秋に有意な差は見られないが、これと昨日まで説明し
 た天文学的な効果の相乗効果を考えると

  冬(短+長:中)→ 春(中+短:短)→ 夏(長+長:長)
  夏(長+長:長)→ 秋(中+短:短)→ 冬(短+長:中)
    ※(気象+天文:相乗効果の結果)という意味
 
 気象条件(濁度)によってどれだけ薄明時間が変化するのか数値として出す
 ことが出来ないので、曖昧な表現になってしまいますが、相乗効果で現れる
 だろう薄明時間の長さを()内に、短・中・長と段階評価してみました。
 前の季節からの変化だけを抜き出して眺めると

  春: 中(冬)→ 短(春) ・・・ 変化小
  秋: 長(夏)→ 短(秋) ・・・ 変化大

 という結果になります。秋は春と同じ薄明時間かもしれませんが前の季節の
 薄明時間と比べると、『大変短くなった』となったわけです。
 室温20度の部屋に入った場合、外気温が30度と25度の場合ではどちら
 が寒い(涼しい)と感じるか。
 謎はこの心理効果にあるように思えます。

◇日没時刻の変化による錯覚?
 こちらも心理的な効果。春と秋のもう一つの違いとして日没時刻の変化を考
 えてみます。

  春: 日没時刻は早い → 日没時刻は遅い
  秋: 日没時刻は遅い → 日没時刻は早い

 と変化して行く途中です。我々の感じる日没の遅速はそれまでの経験から予
 測した日没の時間と実際の日没の時間の差に強く影響されます。この心理的
 効果からすると

  春: 日が沈むのが遅いと感じる
  秋: 日が沈むのが早いと感じる

 この心理的効果(錯覚)が春と秋とを分けるのでは。

◇◆◇◆ 結論 ◆◇◆◇
 
 『秋の日は釣瓶落とし』なのに『春の日は釣瓶落とし』とは言わないのか

 この点に関しては数値によってその差を明示することが出来ませんでした。
 ただ、様々考えてゆくと秋と春との差は心理的な要因におうところが多いよ
 うに思えました。
  100点満点の答えとは行きませんが、60点くらいの答えにはなったと思って
 います。あと40点分はこれから先も考え続ける楽しみとして取っておきます。
 (40点分の答えを教えてくれる方がいたら、拒みませんが)

 思いの外長い話になってしまいましたが、この話はひとまずこれにて完結。
 皆様お疲れ様でした。

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