日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■日出没計算と、太陽の方位・高度・・・その2
昨日の説明の続き。本日は計算実例つきです。電卓片手に式を追ってみて下
さい。
さて昨日 10/30の東京(緯度 35.63度、東経139.62度)での日の出はこのメ
ールマガジンの計算によれば06時01分ですので、果たしてこのとおりになる
か試してみることにします。
計算に必要な5つの数値を拾い出してみれば
1. 東京の経緯度 (φ=35.63度 , λ=139.62度)
2. 日本時10/30 06時01分の東京での地方恒星時 (SG=8.86時→132.90度)
3. 日本時10/30 06時01分の太陽の視赤道座標 (α=214.05度,β=-13.62度)
となります。この値があればあとは単純に球面三角形の公式に放り込んでや
れば済みます。球面三角形の余弦定理の式を使えば太陽中心の地平高度を E
とすると次のような関係式が出来上がります。
cos(90-E) = cos(90-φ)*cos(90-β)+sin(90-φ)*sin(90-β)*cos(α-SG)
式を整理して数値を代入すると
sin(E) = sin(φ)*sin(β)+cos(φ)*cos(β)*cos(SG-α)
sin(E) = sin(35.63)*sin(-13.62)
+cos(35.63)*cos(-13.62)*cos(214.05-132.90)
sin(E) = -0.0156
E = arcsin(-0.0156) = -0.89度
計算例の数値が長くならないようにそれぞれの数値を小数点2位程度にとど
めたため結果は -0.899ではなく -0.89度と0.01度の差を生みましたが、式
に誤りが無いことは確認出来たと思います。
上記の通り無事に太陽中心の地平高度が出たところで、あとは太陽中心の方
位角ですが、これは上記の式の結果があればこれまた球面三角形の正弦定理
を使って簡単に求めることが出来ます。方位角を Aとして正弦定理の式に当
てはめると
sin(90-β)/sin(A) = sin(90-E)/sin(α-SG)
となります。式を Aについて整理すれば
sin(A) = cos(β)*sin(SG-α)/cos(E)
sin(A) = cos(-13.62)*sin(214.05-132.90)/cos(-0.89) = 0.9604
A = arcsin(0.9604) = 73.82度 (or 106.18度)
今回は、太陽の赤緯がマイナス(β=-13.62)であるから、A は90度より大
きな値となることから、答えは106.18度となる。
以上二つの計算から10/30 06時01分 の東京における太陽中心の位置は、
方位角 106.18度 高度角 -0.89度
と求めることが出来ました。今回は既に求めた日の出の時間からそのときの
太陽の地平座標を求めましたが、日出没計算は上記の計算を時間を変えて何
度も行うことで、日出没の定義である太陽の中心の高度角が-0.899度(こよ
みのページで用いている数値)となる時刻を求めれば良いだけです。
なお、観測地点の緯度経度は地図から読み取るとして、任意の時間の太陽の
視赤道座標(α,β)と地方視恒星時(SG)については、天体暦や理科年表
等に記載がありますので、その数値を補完して使えば良いです。ちなみにこ
よみのページではこの数値はプログラムの内部で計算してその値を使ってい
ます(毎回理科年表を開いて・・・と言うわけにはいかないので)。
最後に重要な関係式をもう一度書けば、
高度角:sin(E) = sin(φ)*sin(β)+cos(φ)*cos(β)*cos(α-SG)
方位角:sin(A) = cos(β)*sin(SG-α)/cos(E)
です。これで結果的には御質問の(1),(2) に答えたことになりますね?
本日は学生時代に数学の教科書を開いた時代に戻ったつもりの、こぼれ話で
した。ではまた次回をお楽しみに。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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