こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■世界一早いボジョレー・ヌーヴォー解禁地は?
 ボジョレー・ヌーヴォーはそれぞれの国の現地時間で、11月の第 3木曜日の
 午前零時に一般への販売が解禁されるお約束とか。
 毎年この日になると、「日本は先進国の中で最も早くボジョレー・ヌーヴォ
 ーを味わうことの出来る国」というニュースが流れます。

 解禁のお約束からするとこのメールマガジンが読まれる頃には、すでに解禁
 となった後ですね。別に人より数時間早く飲めるからってそれがなんだとい
 うのか私にはさっぱり判りませんが、一部のイベント好きのものたちの騒ぐ
 様子がTVに流れたりします。

 さて、こよみのページ的に気になるのは、「日本は先進国の中で最も早く」
 の一文。先進国の中で最も早いなんてなんとも中途半端な表現ですね。
 では、「先進国」なんて言葉を外して「世界一早い国」はと言えばどこでし
 ょう? こうなると、日付変更線の話となってこよみのページらしい話題で
 す。

 世界地図を見ると、日本の東側、太平洋の真ん中当たりにちょっと折れ曲が
 った「日付変更線」が描かれています。日付変更線は基本的には東経 180°
 に位置します。地球は丸いので、東に行くほど日が昇るのが早い。と言うこ
 とは人間はお日様の動きに合わせて「一日」を数えてきましたから、東に行
 くほど一日の始まりは早い。

 世界時の基準となるイギリスから見てずっと東に有る日本は、イギリスより
  9時間も早く一日が始まります。では日本よりもっともっと東に進めばもっ
 ともっと早いはず、日本より東というと、ハワイがあって更に東にアメリカ
 本土が有って更に東には大西洋の彼方イギリスが。あれイギリスに戻った?

 地球は丸いので東に、東にと進めばやがて元の場所に戻ってしまいます。と
 いうことでどこかに「人工的な限界線」を設けないと、収拾がつかなくなる。
 と言うわけで日付変更線が生まれました。
 線を引く場所としてはどこが適当かと考えると、世界時の基準となる経度 0°
 から 180°離れた場所。こうして、太平洋上に日付変更線が設定されました。

 これなら、日付変更線はまっすぐになり、この部分での時差は世界時+12時
 間となりそうですが、実際はちょっとだけ折れ曲がっています。これはなぜ
 か。それは「国」という人間が作った境界線のためです。

 たとえば日本で北海道と九州でカレンダーの日付が1日違っていたら・・・
 大変ですよね。と言うことで、日付変更線は一つの国を分断することの無い
 ように配慮されて、一部分が折れ曲がっているのです。太平洋上に設定され
 た理由の一つは、この辺りに陸地が少ないこともありました。だって、陸地
 が無ければだれも住んでいないので国だって無いわけです。国境に遠慮する
 ことも無いのです。

 さて、元に戻って「全ての国の内で最も早くボージョレ・ヌーヴォーが解禁
 される国は」を考えるならこの日付変更線を越えない範囲で、一番東側にあ
 る国を探せばよいことになります。
 ではどこかいなと日付変更線をなぞってゆくと、一カ所東経 180°の線を大
 きく飛び出した「すごいデベソ」が有ることに気が付きます。

  「キリバス共和国」

 がその国。キリバスは太平洋上に位置するギルバート諸島、フェニックス諸
 島、そしてライン諸島の一部等を領土とする国家。赤道にほど近い場所に東
 西3800kmに渡って点在する島々で構成された国です。

 この国、首都タラワの世界時との時差は +12時間。この時差なら「ぎりぎり
 常識範囲」です。ところが、国土は更に東に3800kmも伸びています。この距
 離は経度にするとおよそ35°にもなります。時差を考えるなら国の東の端っ
 こは首都の時刻+2時間。世界時との時差で言えば +14時間と常識はずれの値
 となりまが、一つの国ですから、日付を変えるよりはこの常識はずれの世界
 時との時差を受け入れるのが妥当。

 と言うことでキリバス共和国の東端に位置するライン諸島に行けば、「先進
 国中では一番早くボージョレ・ヌーヴォーが解禁される日本」より 5時間も
 早く解禁日を迎えることになります。

 もしどうしても世界で一番早くボージョレ・ヌーヴォーを味わいたいという
 方はキリバス共和国の東端、ライン諸島に出かければよいのです。問題は、
 果たしてその解禁日にこのライン諸島までワインが届いているかと言うこと
 ですね。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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