日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■芋名月と豆名月
本日は、中秋の名月。
夕方には薄(すすき)と団子、芋などを供えて月の出を待ちましょう。
さて、「名月」と呼ばれるものは今夜の中秋の名月と一月後の旧暦九月十三
夜の月の二つがあります。
この二つの月は、「芋名月」と「豆名月」として知られています。
◇芋名月と豆名月
芋名月とは中秋の名月の別名、豆名月は九月十三夜の月(後の月)の別名で
す。芋と豆との違いはおそらく収穫の時期の違いでしょう。月見が収穫祭で
あった時代からの名残でこの名前が出来たのでしょう。
芋も豆もどちらも丸い作物という意味では同じですが、出来る時期としては
芋の方が豆よりちょっと早いと言うことでしょうか。
内田正男先生のお書きになった「暦のはなし十二ヶ月」の中に、江戸時代末
(安政年間、1860〜1866年)に書かれた「浪花の風」という本からの引用が
あります。それによれば、
「・・・芋を賞玩す。故に十五夜の月を称して芋名月といふ。
十三夜には・・・うで豆一式を多く調べ置いて・・・これを食わしむ。
故に十三夜の月を市中にて豆名月といふ。」
とあります。私はこの「浪花の風」そのものを読んだことがありませんが、
この引用を見ると、芋名月、豆名月という呼び名は江戸時代も現在も変わっ
てはいないようです。
◇地域差有り?
さて、私は中秋の名月を芋名月、後の月を豆名月と呼ぶのは全国的に同じだ
ろうと思っていたのですが、どうやら違うようです。
そのことを、こよみのページをお読みのある方からのメールで知りました。
その方(Saruyamaさん)のメールを引用させてもらうと
(前略)
> 中秋の名月のお供え物についてアンケートに答えようとしたのですが、
> あれ、なんか記憶と暦のページの解説が違うなあ、と思い、
> 米沢観光文化検定のテキストであらためて確認してみました。
>
> するとやはり疑問を持つ人がいたのか、
> ウェブ上に公開されている正誤表で、
>
>> 豆名月・芋名月の日付は、地域によって異なり全国的には逆であるが、
>> 米沢地域では表記の通りとなっている。
>> 他に上山地方でも米沢地方と同じ日付となっている。
>> (米沢市郷土資料室調べ)
>
> ってうちのあたりまた例外かよ!
(後略)
インターネットでググッてみると、確かにその「ウェブ上に公開されている
正誤表が出てきました。なるほど。
作物の出来る時期だから時期がずれるのはわかりますが、逆転するというこ
とはまさかあるまいと思っておりました。こんな事ってあるのですね。
なぜこれが起こるかはわかりません(何せ昨日のメールで、始めてそうした
事実を知ったわけですから)。
興味深いです。なにか理由がわかったら、また書くネタになりそうです。
この理由がわかる方、うちの近所ではこんな呼び名がある、こっちでは・・。
お月見にまつわる面白い話があれば、またお便りください。
楽しみにしております。
本日は変わった地方もあるものだという話で終わるこぼれ話でした。
それでは佳いお月見を!
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
日刊☆こよみのページ スクラップブック