日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■閏秒
明けましておめでとうございます。
日本ではめでたく、2009/1/1を迎えました。
そして間もなく、閏秒(うるうびょう)が挿入される予定です。
◇閏秒
閏秒は地球自転の速度変動によって一日の長さが現在の定義上の一日の長さ
とずれてしまい、そのずれの累積が 1秒または、-1秒に近くなった場合に挿
入または除去される「秒」のことです。
一年の日数の調整のためにほぼ 4年ごとに入れられる臨時の日を「閏日」と
言いますが、同じように調整のために臨時に挿入(或いは削除)される秒も
同じように「閏」をつけて閏秒と呼ばれます。
閏日は挿入されるばかりですが、閏秒は削除されることもあるので、その点
でちょっと違います。ただし、現在の閏秒の規則が作られて以来挿入はあっ
ても、削除された例はありませんが。
おっと、忘れてしまうところでしたが閏日と閏秒の間にはもう一つ重要な違
いがありました。それは、閏日は既に暦法の中に組み込まれていて、いつ閏
日が挿入されるかはずっと先まで簡単に計算出来ますが、閏秒はそう言うわ
けには行かないと言うことです。閏秒をいつ挿入するか削除するかは「測っ
てみるまでわからない」ということです。
閏秒の挿入、削除については実際の観測から少し先(大体1〜2年)の変動を
予測して決定し、大体半年前に「何月何日に閏秒を入れますよ」というお知
らせがなされます。
◇閏秒挿入の履歴
測ってみるまでわからない閏秒ですが、ここ20年ほどの閏秒の挿入の履歴を
眺めてみると、次に示す年の直前に挿入されています。
1990,1991,1992,1993,1994,1996,1997,1999,2006,2009
20年間に10回の挿入がありますから、平均すれば 2年に一度の割合で閏秒が
挿入された勘定になりますが、例えば 1999,2006のように長い間挿入がない
場合もあります。今年も2006年からですから、 3年ぶり。やや間隔が開きま
した。
ちなみに閏秒は12月,6月の末か、3月,9月の末に挿入削除がなされる規則と
なっています。
(緊急の場合はその他の暦月の末でも行えます)。今回の場合、
2008/12/31 23:59:59
2008/12/31 23:59:60 ←閏秒
2009/01/01 00:00:00
(この日付、時間は全て世界時によるものです)
という具合に世界時の2008年の最後に 1秒が追加されました。
◇閏秒は誰が決める?
閏秒の挿入削除を決定するのは、IERS(International Earth Rotation Serv
ice/国際地球回転事業) という国際機関です。この機関は世界中の地球自転
に関係する観測の結果を集めて地球自転の様子を監視しており、近い将来閏
秒の挿入削除が必要になると予測されると、この機関が半年ごとに出す報告
書(Bulletin C)によって、世界各国の関係機関にこれを知らせます。
今回の閏秒挿入については2008/7/4の Bulletin C 36に以下のように書かれ
ていました。
UTC TIME STEP on the 1st of January 2009
A positive leap second will be introduced at the end
of December 2008.
The sequence of dates of the UTC second markers will be:
2008 December 31, 23h 59m 59s
2008 December 31, 23h 59m 60s
2009 January 1, 0h 0m 0s
訳:2009年1月1日の UTC(協定世界時)のステップ
正の閏秒が2008年12月の終わりに導入される。 UTCの秒の並びは以下の
とおり 2008/12/31, 23h59m59s ・・・
Bulletin C全本文→ ftp://hpiers.obspm.fr/iers/bul/bulc/bulletinc.dat
◇閏秒はなぜ必要
現在の私たちの生活の時間は、大変正確な時計によって管理されています。
ほんの 1世紀前までは最も正確な時計は、地球の自転や公転といった天体そ
のものでしたが、現在の時計は原子時計がこれに取って代わっています。
天体の動きより正確な時間を計ることの出来る原子時計を使うようになると
天体の動きが一定でないことが判ってきました。例えば、地球の自転は不規
則な小さな変動を繰り返しながら、長い目で見ると徐々に遅くなる傾向にあ
ることが判ってきました。遅くなるとは言ってもその変化はわずかですが。
1 日の長さの変化で言えば、これが1/1000秒長くなるのに要する時間はおよ
そ 100年と言われますから、 1日が24時間だとする 100年後の 1日は24時間
と0.001 秒の長さだというほどの変化です。ほんのちょっとですね。
ただし、こうして 1日の長さが 0.001秒だけ長くなったとすると、1年は365
日ですから、一年のズレの累積は
0.001秒 × 365日 = 0.365秒 ≒ 0.4秒
ほどズレます。この割合だと2〜3年に一度閏秒の挿入が必要になるわけです。
◇シーラカンスの一年は・・・
100 年で 0.001秒くらい一日の長さが伸びたって大したことはない気がしま
すが、長い時間で考えると馬鹿には出来ません。いろいろな証拠から、 9億
年前の 1日はおよそ18時間程だったことが判っています。だとすると、一年
の日数はざっと 487日。
生きた化石といわれるシーラカンスの出現は3億5千万年前といわれますから、
9 億年前の 487日の一年には及ばないもの、シーラカンスの一年も 400日く
らいはあったかもしれません。
「間もなく、閏秒が挿入される予定です。」
と書き始めた、閏秒の話ですが気が付けば「既に閏秒が入りました」という
時刻となってしまいました。あらら・・・。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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